人生で一度と思いたい、婚約、結婚という一大イベント。
昨今は結婚式を挙げず、紙面上だけの簡易な手続きに収まり、簡単な結婚指輪の交換だけで済ませるカップルも少なくありません。

交換する結婚指輪、当たり前のように互いの左手薬指に収まりますが、そこでふと思う。「何で結婚指輪は左手薬指なんだろう?」。今回は、そんな気になる疑問を世界の指輪事情を比較しながら紐解いていきたいと思います。

日本は左手薬指!その理由はアメリカ、イギリスの宝飾文化流入だった!?

華やかな日本の宝飾文化、指輪にピアス、ネックレス。当たり前の毎日のコーディネートに和装に合わせる帯留めにかんざし、今でこそ日本のモードにジュエリーはなくてはならない存在になってきました。
しかし奈良時代以降日本の宝飾文化は廃れ、結婚指輪ですら明治時代にようやく海の向こうから流入するようになったのです。(キリスト教徒を中心に)
日本の鎖国体制が、日本宝飾史を暗黒時代は追いやったと言えますが、気づくと私たちは自然に左手薬指の結婚指輪をしていますよね?
前置きが長くなりましたが、ここではなぜに左手薬指なのか?という永遠のクエスチョンに迫ってみたいと思います。

日本の結婚指輪文化は元を辿ればイギリスにたどり着く!?

身の回りを見てみても、結婚指輪を左手薬指以外の指に着けている方あまりいません。しかし海外にその視野を向けてみると、実は結婚指輪=左手薬指神話が崩れ去る現実にハッと驚く方が多いこと、多いこと。
日本に左手薬指信仰がもたらされたのは、前述の明治以降の文明開化がもたらした恩恵であり、そしてイギリス、イギリスの植民地であったアメリカの影響だと考えられています。
国家間で結婚指輪をはめる位置はいくつかの傾向に分けることができますが、大きく分けて北ヨーロッパは右手薬指、ラテン系国家は左手薬指と大別可能です。

その傾向に沿うとイギリスは右手になります。しかしもともとイギリス王室のプランタジネット朝、ランカスター朝がフランス人の家柄ということで、中世のイギリスではフランスのモードが流行したと判断すれば、フランスの左手信仰がイギリスに浸透したことも頷けるはず。

つまり日本の結婚指輪の左手薬指信仰は、文明開化の証であり、そしてイギリス、イギリスの元植民地アメリカがもたらした、ジュエリーモードが元となったと考えられるのです。
左手薬指物語は、実は欧州各地に根付いたモード、そして各国がしのぎを削って築いた植民地へと分波し、世界に流布していった、そう考えると非常に興味深いですよね!

因みにスペインは欧州随一のラテン国家でありますが、地域によって結婚指輪をつける指が異なり、カタルーニャやバレンシアなどは左手薬指、その他の州は右手薬指に結婚指輪をはめます。
またドイツでは婚約時には左手薬指、結婚後に右手薬指に装着し直したり、ユダヤ教では新婦のみ右手人差し指という珍しいパターンも報告されています。

なぜ左手薬指に愛の証を装着するのか?

世界的にみても、結婚指輪は左右どちらかの薬指にはめるパターンがほとんど。そして日本がそうするように、左手薬指に何かしら神秘的な愛を結びつける説が多く語られています。
ここではいくつかの俗説を紹介しながら、結婚指輪左手薬指伝説の知的好奇心の扉を開いていきましょう!

本当に?左手薬指はハートと繋がってるの?

元々左手の薬指は左胸部にある心臓とダイレクトに血管でつながっており、ハートと互いの愛の証を繋ぐ場所として最も適していると認識されてきた、という通説を聞いたことがある方も多いでしょう。
この説はもはや古代ギリシャ時代から語られる愛の伝説として知られていますが、実際左手薬指のみ心臓に直結する静脈が流れているわけはなく、全ての手指から心臓に血液を運んでいます。
医学的に片付けるとほとんど全ての宝飾史の面白みがなくなってしまいますが、左手薬指=心臓直結説の説得力は非常に強力で、21世紀を迎え、平成も終わりを告げようとしている今でも、十分な説得力を持って伝えられているのです。

薬指という名前の元に

薬指、そのネーミングからわかる通り日本においても、薬や軟膏を塗るために使う指として薬指は認知されてきました。
特に薬師如来との関連の深さも指摘されており、動きがあまりよくないはずの左手薬指が、薬を塗布するのに適している=利用頻度が多くなく、他の指と比べて汚れが少ないということから、結婚指輪を身に着けるという説もあるようです。

なぜ左薬指なのか!という起源を考えると、心臓につながる血管説、薬師如来との関連性や、魅惑的な女性のマジカルパワーを封印するためには左手薬指が好ましいなど、様々な俗説が伝わっています。
いずれにせよ、根拠というものでは読破できない先人の考え、価値観が現代に伝わり、左手薬指が結婚指輪に適した指と認識されているのですね。

左手薬指が主流になったのはカトリックの訓えによる

ここまで、なぜに左手薬指なのか?について解説してきましたが、時代、地域によって結婚指輪をつける位置はもちろん異なります。
ルネサンスの時代には人差し指に結婚指輪をはめるパターンも非常に多く、当時の有力者の肖像画を見れば一目瞭然!(最も肖像画に描かれるようなモデルは、豪奢なリングをあちらこちらにしているので、どれが結婚指輪なのかわからないパターンも少なくありません。)

また王族が自身の権威を象徴するためにはめた親指のリングになぞらえ、親指に結婚指輪をする者もいました。
中指に結婚指輪をするパターンこそあまり見られませんが、歴史的にみても親指、人差し指、薬指に小指、様々な指に結婚指輪が身に着けられ、そしてマリッジリングの歴史が形成されていったのです。
結婚指輪とキリスト教の関連性はかなり深いところまで議論する必要がありますが、16世紀まではあまりその影響は強くありませんでした。しかし1600年代に入るとカトリック教会が「結婚指輪は左手薬指がベター」という声明を出したため、急速にその伝統が築かれていきました。

つまりローマカトリック教会が、そのような宣伝を交付しなかったら、現代に伝わるような結婚指輪=左手薬指信仰は強くなかったのかもしれませんね。
宝飾文化とキリスト教、モードとしてジュエリーを楽しんだり、愛の指輪を身に着ける上では全く意識する必要はありませんが、こうして指輪の歴史、疑問を辿ると、大概キリスト教に少なからずの影響がみられる点は非常に興味深いことです。

まとめ

今回は結婚指輪の歴史、人はなぜ左手薬指に結婚指輪をつけるのか?という疑問に迫ってみました。

ただかが左手薬指、されど左手薬指、なかなか興味深い結果が導き出されましたね!他国に旅行に行ったり、古い時代の肖像画を見る機会があれば、ぜひぜひ今回のお話しを思い出しじっくり観察してみてくださいね!
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