最近レッドエメラルドという言葉をよく耳にします。ここではそんなエキゾチックなレッドエメラルドの正体、そして皆さんが気になるルビーとの違いについても検証していきたいと思います。

レッドエメラルドは存在しない!その理由を解説

エメラルドは古来から大変人気がある宝石として認知されています。しかしクレオパトラがスリで潰して美容に使ったエメラルドは勿論緑、そして皇帝ネロのメガネとしてくり抜かれたのも緑色のエメラルド。

そうエメラルドは、黄緑から緑色を呈する宝石であり、メディアで流れる赤いエメラルドは本来存在しえないカラー。ここではレッドエメラルドの真実、そしてよく聞かれるルビーとの違いについても解説していきたいと思います。

レッドベリルが正しい

まずレッドエメラルドという宝石はこの世に存在しません。つまりレッドエメラルドというネーミングはいわゆる商業上使われるコマーシャルネームであり、それは鉱物学的な正しい宝石名ではないからです。

正確な名前はレッドベリルであり、エメラルドと同じベリリウムとアルミニウムから成るベリル属の一つ。(またはビクスバイトとも言います。)わかりやすく例えると緑のエメラルドの親戚関係に当たる赤いベリルがレッドベリルであることから、レッドエメラルドというコマーシャルネームが生まれたわけです。

ベリルはエメラルド以外にも薄青色のアクアマリン、黄色のヘリオドール、薄桃色のモルガナイトに無色のゴシェナイトなど様々な宝石がありますが、レッドベリルはその中でもエメラルド同等またはそれ以上に価値のある宝石として知られます。

商業ネームはしばし消費者の購買意欲をそそり、低価値の宝石に魅力的なネーミングを付ける傾向があります。例を挙げるとイブニングエメラルドはペリドット、カリフォルニアルビーはパイロープガーネットなどです。つまり消費者が誤解をしてしまいそうなややこしい、しかも「価値がある」かのように思わせる名前が付けられますが、レッドエメラルドの場合は商業ネームに関係なくその希少価値は非常に高くなっています。

ルビーとの違いは?

赤色系列の宝石はそれこそルビー、ガーネット、ルベライト、スピネルにピンクトパーズなど様々ですが、レッドベリルはその美しさとカラーからルビーと比較されがちです。

鉱物学的な違い両者は全く異なりルビーはサファイアと同様にコランダム属であり、硬度はベリルより高い9で結晶系は三方晶系。一方のベリルは硬度が若干低い7.5~8で結晶系は六方晶系であり、基本的に全く異なる宝石でありレッドベリルとエメラルドのような親戚関係すらない別個の宝石です。なおレッドベリルはエメラルド同様に多くのインクルージョンを含み脆い宝石なので、大粒の原石は殆ど存在しません。

同じような色をしているルビーとレッドベリルですが、前者はクロムが発色要因であり、後者はマンガンによる赤色発色という点も異なります。レッドベリルは非常に濃い赤色を呈し、しばしラズベリーカラーとも形容されますが、どちらかというとピンク味がルビーよりも強い傾向があります。

ルビーはスリランカ、ミャンマー、モザンビーク、タイなど比較的多くの産地でピンキリではありますが産出しますが、レッドベリルはアメリカのユタ州とニューメキシコ州でしか採掘されない為、ルビーと比べても非常に希少価値のある宝石なのです。

インクルージョンやカラットによっても値段は異なりますが、0.1カラットの非常に小さな重量のものでも、10万以上するものがザラという高額で取引されています。

レッドエメラルド同様にレアな赤、ピンクのベリルとは?

ベリル属にはレッドベリルほど珍しくはありませんが、モルガナイトと呼ばれるピンク色の美しい宝石があると前項で触れました。

しかしレッドエメラルド、つまりはレッドベリル並みに珍しく、尚且つあまり知られていない赤~ピンク色のベリルがあります。ここではそのミステリアスな宝石について触れていきたいので好奇心の扉を全開にしてお読み頂ければ幸いです。

ペッツォタイトと呼ばれるベリルに似た宝石

鉱物学の宝石にはベリルと似た化学組成を持ちますが、アルミニウムの代わりにセシウムが置換しており、厳密にはベリルとは異なる固有の鉱物です。いわゆるベリルの変種といったらいいでしょうか。

以前はそのラズベリーのような色合いがゆえにラズベリルと呼ばれたこともありましたが、現在はその発見者の名前に因みペッツォタイトと呼ばれています。色合いを分かりやすく例えるとレッドベリルよりは色が薄いけれど、モルダバイトよりは断然色の濃い、ピンクスピネルやピンクサファイアに似たカラーの物が多いようです。

因みに発色要因はレッドベリルと同じくマンガンが含まれることによって、特徴的な美しい赤~ピンク色を呈するようになります。

比較的新しい宝石で2003年にマダガスカルで発見されて以来、他の産地での採掘は非常に限局的であり、レッドベリルと肩を並べる非常に希少な赤~ピンクのベリルとして知られているのです。ベリル属の運命ともいえるインクルージョンの多さはペッツォタイトも継承しており、エメラルド同様に豊富な内包物を含んでいます。その為ルースとして見かけるものは、ほぼ軽度の含浸処理がなされていると考えていいでしょう。

まとめ

レッドエメラルド、そんなエメラルドがあるのなら私もほしい!と思った消費者の方は決して少なくないはず。しかしレッドエメラルドは単なるコマーシャルネームなので、鉱物学的に分類したらレッドエメラルド=レッドベリルである、このことはしっかり覚えておきましょう。

エメラルド以上に価値のある宝石で、ミネラルショーやコレクターの還流品が回る程度であり、赤色宝石の女王様と呼ばれるルビーよりも高額に取引されることも少なくありません。

レッドエメラルド、この固有名詞から学ぶことは多く、宝飾業界で当たり前の用に使われる商業ネームの存在、そしてベリル属の宝石の多様さなどなど。もしいつかレッドエメラルドのお話を耳にすることがあったら、ぜひ今回のコラムの内容を思い出してくださいね!

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