ガーネットがお好きの女性は少なくありません。深紅の味わい深い赤色宝石ですが、今回はその合成石について解説。

あまりガーネットの合成石は見かけないという方も多いと思いますが、実はこんなところで合成ガーネットが利用されていたのです。

天然とは異なるが結晶構造が同一の合成ガーネット!?

合成宝石とはつまるところ人為的に製造された天然と同じ性質を持つ宝石ことです。鉱物の歴史を勉強すればいかに多くの先人、偉人が天然宝石と同じ宝石をパラケルススの如く人為開発しようとしたのか、そんな知と興味の歴史に触れられるはず。

ここではまず合成ガーネットの基礎情報について触れていきたいと思うので、ぜひ最後までお読みください。

合成宝石の中で特異な存在の合成ガーネット

合成宝石は合成宝石の、天然は天然が持つ唯一無二の魅力があります。全ての天然宝石に人為的に作られた合成宝石があるわけではありませんが、ガーネットについてはYES。しかし合成ガーネットに関しては、他の合成宝石にはない興味深い事象があります。

通常合成宝石は天然と同じ化学組成、結晶系、化学・物理的性質を持ち(若干数値が上下する場合はありますが)、つまるところ合成はただ人為的に作られたその点だけが異なるのです。しかし合成ガーネットに関しては、ガーネットと同じ結晶構造を持つものの、その組成自体は全く異なるという点です。X3Y2(SiO4)3 がガーネットの鉱物グループですが、Siの代わりにアルミニウムなどが置換し、X部位に希土類などが置換されたものをいいます。

厳密に言えば組成が異なるので合成ガーネットではないのかもしれませんが、同一の構造がある為合成ガーネットとして扱われているのです。なお合成ガーネットも天然同様に赤色だけでは収まらない、緑、黄色、ピンクなど様々な色合いを呈するようになります。

要チェック!合成ガーネットの種類まとめ

合成ガーネットの例として最も有名なのはGGG、YAGです。皆さんも「ん?」と思った方もいると思います。GGGはガドリウム・ガリウム・ガーネット、YAGはイットリウム・アルミニウム・ガーネットで、主に電子素材やレーザー用素子などに利用されます。

しばし脱毛などに利用されるレーザー機器でYAGレーザーというものがありますが、このレーザーは合成ガーネットの一つであるYAGが使用されています。

これらは自然界にない物質ではありますが、前項でお話しした通り組成自体が全く本家ガーネット属とは異なります。アメリカ合衆国などでも研究、製造されてきましたが、特に多くの合成ガーネットを製造した国はロシアであり、現在もロシア産と思われるYAG、GGGなどをよく見かけます。

合成ガーネットは基本的に電子材料、光学用としての用途が非常に高く、上記の2種類以外にも微量元素を調整することで様々な色、特徴を持つ合成ガーネットが誕生します。

基本的に天然ガーネットとの区別は容易につき、モース硬度、屈折率、比重などの違いから鑑別が可能です。

合成ガーネットはダイヤモンド類似石としても利用

ガーネットはデマントイドガーネットやカラーチェンジガーネットなどの希少種を除けば、産出量が多い為、そもそも合成ガーネットを作る必要性はあまりありません。しかし前述のように電子、光学用途として優秀なため、YAG、GGGは多く流通していましたが、それと同様にダイヤモンド類似石としての需要も認められました。

ダイヤモンド様の輝きを持つ、またはそれに似た宝石は、例えばスピネル(合成含め)、モアッサナイト、キュービックジルコニア、ジルコン、トパーズなどは高額なダイヤモンドの代用として知られます。

特にキュービックジルコニアが市場に出る前の時代、1960~70年代半ばにはYAG、GGGは多くのリングやネックレスなど煌びやかな輝きに憧れる女性のモードを支えていきました。

YAG、GGGは前述の通り高い屈折率、分散を持つ為、安価であるにも関わらず、ダイヤモンド同様の審美性を楽しめたのですね。
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なぜ?今合成ガーネットが人気を博している理由を考察

最近宝石マーケット市場でも合成ガーネットが密かに人気を集め始めています。合成宝石としての特色も面白いですが、なによりヴァリエーションがあるカラーそしてギランギランの輝きが現代の宝石ラバーに支持されているようです。

ここではなぜ今合成ガーネットが再度注目を浴びているのかを考察していきたいと思います。

現在生産されていない希少性

合成ガーネットの中でもGGGはYAGの製造後に開発され、尚且つ流通時期が長くなかった為、合成宝石でありながら希少価値があります。決して国内外の大きなジェムショーでレアストーンとして大々的に注目を集めるわけではありませんが、過去にロシアや日本あたりで作られたGGGなどは短期に流行したダイヤモンド類似石として需要があるようです。

勿論現在も工業用のGGGは製造されていますが、その分散の高さを引き出すようなカットを施したルース状のものは過去の還流品でしか見られないのが現状です。

またYAGに関しても同様ですが製造された期間が長く、尚且つ現在もロシアで製造されている為、GGGよりは入手しやすくなっていますが、それでも60、70年代と比べるとかなり高額で取引されています。

希少宝石の代価品としての価値

デッドストックの合成ガーネットでも魅力的なカラーのルースをみかけますが、最近は特に人気の希少石のカラーに似せたYAGなども登場しています。例えばブルーならコバルト、エメラルド色ならクロムにバナジウムなど様々な元素を付加し、需要の高い微妙なカラーのYAGが作られています。

例えばパライバカラーにタンザナイトカラー、レッドベリルを思わすものまで、狙っているのかは分かりかねますが、流行に合わせ購買意識をそそる合成ガーネットが希少宝石の類似石として流通しているのは面白い話しですね。
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まとめ

合成ガーネットは合成ダイヤモンド、エメラルドなどと異なり、結晶構造は同一でも置換する元素が異なる為、化学組成は全く異なる点が特徴的です。

大変マニア受けする合成宝石の一つですが、もしかしたらお母さま、おばあ様が60、70年代に購入したジュエリーにはこれらのYAG、GGGなどが使われている可能性は十分あるでしょう。

現在ジュエリーとしてこれらが利用されることはほぼありませんが、ルースなら若干コスパは低いものの、ちょこちょこと見かけるので気になる方はぜひ手に取りその美に酔ってみてはいかがでしょうか?

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