イラストレーターといった仕事柄、美術展には普通の方よりも行く機会が多いのは事実。現代アートから、印象派、浮世絵まで幅広く行くようにしています。
美術展に足を運ぶと、まわりのお客さんたちがどんなコーディネートをしているのか、じつのところ気になりますよね。あまり美術展に行かない方の場合、どんな服装がふさわしいのか、悩むこともあるでしょう。
美術展にはどんなコーディネートで行けばいいのか、マナーなど、少しだけご提案いたします。

美術展でタブーな服装

まず、美術展でタブーな服装から。それは、大きな帽子です。夏など、つばの広い麦わら帽子などをかぶることもあると思いますが、美術展では会場のロッカーなどに入れた方が無難。
というのも、特に絵画が中心となった美術展の場合、大きな帽子だと後ろの鑑賞者の邪魔になってしまうからです。帽子をかぶりたいのであれば、つばのないベレー帽などがいいでしょう。美術展では、皆、場所を譲り合って美術を鑑賞しています。自分だけコーディーネートを優先するような態度は控えましょう。
雨の日は傘を傘立てに立て、いらない荷物、冬のかさばるジャケットはロッカーに入れる。展覧会の会場では身軽を心がけましょう。自分が楽なだけでなく、他の鑑賞者の邪魔にならずに済みます。
また、美術展というのは意外に歩くものなのです。高いヒールなどは避けた方がいいでしょう。コツコツ歩く音も他の鑑賞者の集中のさまたげになるので、履きなれた低い靴にしてください。
服装のタブーというのではありませんが、美術展の室内温度は作品の保存を優先にしています。ですから、夏は寒かったり冬は逆に暑すぎたりすることもあります。カーディガンやストールなどで温度調節できるようにすることをお勧めします。

美術展でタブーな行動

美術展でのタブーは、常識ですが、一緒にいった方との大きな声でのおしゃべです。話したいことがある場合は小さな声でひそひそとお願いします。
また最も避けて欲しいことは、ひとつの作品のど真ん中、しかも前の方で凝視し続けることです。
美術展に行くと、これ!という絵画やオブジェに出会うこともあるでしょう。しかし、他にも鑑賞者がいるのですから、間近で凝視したい場合は作品の横に移動してください。大きな作品であれば、すこし下がって鑑賞した方が作品全体がよくわかりますし、他の鑑賞者の邪魔にもならないので、距離をとって鑑賞するようにしましょう。大きな作品なのに近くで鑑賞していると、ビギナーということがバレバレですよ。
人気のある展覧会では同じ作品にたくさんの人が集中します。あまり長くおなじ作品の前にいることも避けた方がいいでしょう。
ですが、美術展では海外から来たなど、今後鑑賞する機会がないかもしれない作品もあります。そんな作品であれば、じっくり鑑賞したいと思うのは当然のことです。そこで、最初からじっくり鑑賞するつもりなら、閉館時間間近に行くことをお勧めします。
週末であれば9時ごろまで開館している美術館もありますから、早めの夕飯をとって、7時ごろに入館するといいでしょう。人気の美術展でも思いがけず空いている場合もあります。
また、どうなんだろうと迷うかもしれませんが、人の流れに逆行して、再びおなじ作品を観ることはOKです。
もちろん、作品を鑑賞している人たちをかき分けて進んではいけません。もう一度観たい作品の場所を覚えておいて、鑑賞者たちの後ろを通ってさっと戻るのです。
それから、列を作り、律儀にその順番を守って鑑賞する必要もありません。観たい作品だけ飛ばし飛ばし鑑賞してもいいのです。人気があって混んでいる美術展はそうした方がストレスも少なくていいでしょう。

美術展でお勧めのコーディネート

美術展に行くと決めた瞬間から、思い切りおしゃれをしようとあれこれコーディネートを考えるでしょう。クローゼットの奥にしまってあるとっておきの服を着たいと思うかもしれません。
しかし、前述したように美術展の会場は意外に広く、大規模な美術展ともなれば、かなり歩くことにもなります。となると、ヒールの低い靴がお勧めです。また温度調節がきく着脱しやすい服装の方がいいので、アンサンブルなどだと便利でしょう。
でもそれだけじゃ、なんだか味気ないですよね。
たとえば浮世絵の展覧会にはブルーを取り入れたコーディネートがお勧め。広重ブルー、北斎ブルーと呼ばれる深い青は浮世絵になくてはならない色です。コーディネートの差し色にブルーを持ってくると、一緒に行った方との話のきっかけになりますし、気持ちも盛り上がるでしょう。
フランスのアーティストの美術展であればトリコロールカラーのコーディネート。赤青白の三色はおしゃれがまとまりやすく、気軽に取り入れやすいのでお勧めです。
上級者のコーディネートとしては、印象派やアールデコ、アールヌーボーの展覧会にあえて着物を着るというのがおしゃれです。印象派やアールデコ、アールヌーボーは日本の美術に影響されているので、わかる人には、通だなと思わせることができます。

美術展の趣旨をあらかじめ調べると楽しい

せっかくの美術展ですから、服装にこだわるのであれば、その展覧会の趣旨に合わせたコーディネートを考えると楽しいです。となると、前もって美術展のことを知らなければならないので、すこし調べることになるでしょう。そのちょっとした手間で、作品の情報も知ることができ、美術展がより楽しめるはずです。
ちょっとした一手間でおしゃれも美術展も楽しめ、一石二鳥でお勧めです。

本稿は無断転載禁止です。ヴィサージュジャパン 株式会社