ルビーを鑑別する!

宝石の鑑別とは、ある石(宝石)が何であるか、本物か偽物か、天然か合成かなどを判定することを言います。多くの人は、ある石に出会うと、この石は何? この石の名前は何? この石は本物? さらに天然? そしてこの石はいくらするの? というように頭の中で次々と考えます。最後の価格を除いて、ここでは鑑別のみを深堀します。
ルビーの鑑別について、一番の課題は天然ルビーと合成ルビーを識別することにあります。合成ルビーとは、天然ルビーと組成(ある石を形造っている元素の割合)が同じで、人の手によって造られたものです。
次の課題としては、ルベライトとの識別、さらに赤色ガラスとの識別が挙げられます。
ルベライトとは赤色のトルマリンのことです。レッド・トルマリンのことをルベライトと言います。カット(切断、研磨)された赤色ガラスは、一見するとルビーの外観に似ていますので、誤認する恐れがあります。

特徴的なふたつの赤い色

ルビーの鑑別に当たって、先ず天然ルビーの特徴を押さえておく必要があります。比較的容易に入手できる10倍のルーペ(家電量販店の望遠鏡コーナーなどで入手可能)と肉眼のみで天然ルビーの特徴に迫ります。
肉眼で見てルビーと思われる赤色の石を左手の親指と人差し指でつまみます。そしてその石のガードル部を右手に持った10倍のルーペで観察します。ガードルとはカットされた石の側面部、最大径の個所をいいます。
10倍のルーペで観察したとき、紫赤色と橙赤色が見えたら、この赤色の石はルビーです。ルビーと判定できます。紫赤色と橙赤色はクラウン部(ガードルから上の個所)やパビリオン部(ガードルから下の個所)のファセット(平らな研磨された面)に現れます。同じファセット面に同時に現れることはありません。
紫赤色と橙赤色は、クラウン部とパビリオン部のそれぞれのファセットのどこかに別々に現れます。
この紫赤色と橙赤色をルビーの二色性と言います。この色の二色性を示す石(宝石)はルビーしかありません。ですから、ある赤色の石を観察して、紫赤色と橙赤色が見えたら、ルビーと判定できます。
しかし、この二色性の観察だけでは天然ルビーと合成ルビーを識別できません。天然ルビーも合成ルビーも同じように紫赤色と橙赤色を示します。紫赤色と橙赤色の二色性はルビーであるとの判定はできますが、天然と合成の識別はできません。

美しすぎる合成ルビー

天然と合成の識別には別な観察が必要です。10倍のルーペで石の内部を観察する必要があります。石の内部に存在するインクルージョンを観察する必要があります。インクルージョンとは、石の本体の組成と違う異物のことです。日本語では内包物と呼ばれています。天然ルビーのインクルージョンの状態と形状はさまざまです。状態は固体、液体、気体といろいろです。形状も円盤状、丸みを帯びた立方体、不定形の小さな割れ状といろいろです。
天然ルビーには、10倍のルーペで観察すると、どこかにインクルージョンが見られます。インクルージョンが極めて少ない天然ルビーもありますが、ほとんどの場合、天然ルビーでは普通にインクルージョンが見られます。
ところが、合成ルビーではインクルージョンが見られません。極めて希に小さなインクルージョンが存在することはあります。一般に合成ルビーではインクルージョンが見られませんので透明性が高く、そして色も調整され、結果として石は非常に美しいです。

ベルヌーイ法による合成ルビー

市場に流通しているほとんどの合成ルビーは、ベルヌーイ法と呼ばれている方法で製造されています。ベルヌーイ法とは、フランスの科学者・ベルヌーイが1903年に開発に成功した合成ルビーの製造方法です。ベルヌーイはこの方法の特許を独占しないで、誰でも使用できるように公開しました。
現在では中国を中心にいくつかの国で合成ルビーが製造され、日本などに輸出されています。
ベルヌーイ法で造られた合成ルビー(以下、合成ルビーの表記はベルヌーイ法で製造されたものを指します。)は、透明性があり、きれいです。魅力的な石です。そして安価です。この方法で造られた合成ルビーには特徴的な痕跡が見られます。それはカーブ・ラインと呼ばれている曲線状の線が見られることです。

右図の中央部に見られる4本のカーブした線がカーブ・ラインです。
このカーブ・ラインは、カットされた合成ルビーを上から眺めるだけでは見ることができません。指にはめられた合成ルビーを少し詳しく観察しても、肉眼でカーブ・ラインを見つけることはできません。10倍のルーペが必要です。
合成ルビーを光にかざして、正面の反対側、すなわち裏側から観察します。またはガードル(側面)から観察します。
そして10倍ルーペの焦点を石の内部に合わせます。すると、わずかに丸みを帯びた線あるいは筋がいくつも見られます。この線をカーブ・ラインといいます。カーブ・ラインの存在は、合成ルビーであることの決定的な証拠です。天然ルビーでしばしば見られる成長線はすべて直線です。
そして天然ルビーと合成ルビーの違いはインクルージョン(内包物、異物)にも現れます。天然ルビーのほとんどにはインクルージョンが見られます。合成ルビーではインクルージョンが見られません。希に小さなインクルージョンが含まれることもあります。
ですから10倍のルーペで観察してインクルージョンが見られない上質のルビーであれば、合成の可能性が極めて高いと言えます。合成ルビーであれば、カーブ・ラインが存在しますので、このラインを確認することで合成の決定的な証拠をつかむことになります。

ルベライトと赤色ガラス

次にルベライトと赤色ガラスに話を進めます。肉眼と10倍のルーペでルビーとの識別を行う場合、二色性に注目します。ルビーは紫赤色と橙赤色の二色性を示します。ルベライトは濃いピンク色と淡いピンク色の二色性を示します。
赤色ガラスには二色性がありません。ですから、カットされた赤色ガラスをガードル部(側面部)から観察しても赤色のみが見られはずです。しかし実際にはガードル部から観察した赤色ガラスの色は、赤色に見えなくて、オレンジ色の一色のみが見られます。
この理由は市販されている赤色ガラスの多くは、セレンという元素を混ぜて発色させています。一見すると赤色ガラスに見えますが、詳しく観察するとオレンジ色を帯びた赤色です。カットされた赤色ガラスをガードル部から観察すると、このオレンジ色がよりはっきり見られます。
ルベライトと赤色ガラスのインクルージョンについて、10倍のルーペでそれぞれの石の内部を観察すると、ルベライトではしばしばトリカイト(微細な割れ)・インクルージョンが見られます。赤色ガラスでは小さな球状の泡(気泡)が見られます。