合成石が多いスター・ストーン

スター効果を示す宝石は限られています。キャッツ・アイ効果を示す宝石の数よりもスター効果を示す宝石の数は少ないです。スター・ストーンの代表的な宝石は、スター・ルビーとスター・サファイアです。
スター・ルビーとスター・サファイアは6本のスターが見られます。両石とも3方向に白い光条(白い光の帯)が見られます。
スター・ストーンは共通して外観形状に特徴があります。すべてカボッション・カット(山形)になっています。このカットにしないと、光条が現れません。
スター・ストーンの鑑別において、課題は合成石です。市場に合成スター・ルビーと合成スター・サファイアが大量に出回っています。両合成石とも外観形状はカボッション・カットです。大量に流通している両合成石はベルヌーイ法で造られています。
ベルヌーイ法とは、フランスの科学者・ベルヌーイが考案した合成石を造るひとつの方法です。最初にルビーの合成に成功しました。日本語では火炎溶融法と呼ばれています。
イメージとしてはバーナーを逆さまにして丸い筒状の耐火煉瓦の中で燃焼させる感じです。燃焼している炎の中に粉末のルビー原料を落下させ、溶融させて結晶化させます。
製造装置は比較的単純です。製造コストも押さえられます。ですから、ベルヌーイ法で造られたスター・ルビーとスター・サファイアがより多く流通しています。

スター・ルビーの合成石を看破する

天然スター・ルビーと天然スター・サファイアについて、外観の色は赤色と赤色以外の色という区分はありますが、鑑別を行う場合の視点は同じですので、天然スター・ルビーに絞って話を進めます。
天然スター・ルビーの鑑別を行う場合、課題は合成スター・ルビーをどのようにして看破するか、ということになります。先ず、カボッション・カットの側面形状を観察します。大きな違いがあります。天然スター・ルビーはダブル・カボッションです。合成スター・ルビーはシングル・カボッションです。

両石の違いは右図の通りです。最上段図は上から見た図です。一般的に楕円の形状です。中段図はダブル・カボッションを表しています。横から見た図です。天然スター・ルビーはガードルから下側も山形になっています。
一方、合成スター・ルビーはガードルから下側は平らな面になっています。合成スター・ルビーは1ピース(石)がいくらかのビジネスですから、強いて下側に山形を付けて重さを増す必要はありません。

天然スター・ルビーと合成スター・ルビーの鑑別において、外観の違いはひとつの判断材料になります。さらに10倍のルーペを使って内部を観察すると、両者の結晶成長の違いを見つけることができます。
天然ルビーの原石は一般に六角柱状の形をしています。断面が六角形で柱状に伸びた結晶です。

右図は六角柱を表しています。スターが発現するには針状のルチル結晶が必要です。ルビーが生成するときにチタン元素を少し多めに取り込んでおく必要があります。すると、このチタン元素が、ルビーの成長と共にルチルとなって針状のインクルージョンを形成します。

ルチルの針状インクルージョンは六角柱の柱に対して直角に伸びます。六角の面に平行に伸びます。六角の対辺方向に伸びます。対辺は3方向あるので、ルチルの結晶は3方向に分布することになります。

右図はルチル結晶が3方向に分布している様子を表しています。六角形の周囲に見られる白い線はルチル結晶を表しています。上下に1本、右上がりの1本、右下がりに1本はルチル結晶です。中心部には60度で交差した白い線が描かれています。
3方向に平行に分布しながら、無数に発生した微細なルチル結晶がスターを生み出す基になります。ルチル結晶がより密になると、スターがシャープ(明瞭)になります。

ルチル結晶について、肉眼や10倍のルーペでは検出できません。特に合成スター・ルビーではルチル結晶が極めて微細です。天然スター・ルビーでは時に細い針状のルチル結晶を見つけることができます。

数百年、数千年の時を刻んだ証をみつける

天然スター・ルビーと合成スター・ルビーを鑑別する場合、結晶成長の状態を観察することは有力な手掛かりとなります。天然スター・ルビーを正面または裏側から肉眼や10倍のルーペで観察すると、120度で交差した成長線が見られます。六角形状の一部が見られます。

右図は成長線を模式的に表した図です。白い線が成長線です。下からペンライトを当てると、成長線がより見え易くなります。
成長線が見えることは、わずかに濃淡があることを意味しています。1本1本の成長線の成長には数百年、数千年を要したと推測されます。この間に周りの環境が変化したことで色の濃淡が生まれたものと推測されます。

一方、合成スター・ルビーは合成ルビーの原石(ブルあるいはボールと呼ばれる丸い棒状形状)を製造した後に、再加熱を行ってルチルを結晶化させます。微細なルチル結晶を無数に発生させます。ルビー自体の結晶に支配されながら、ルチル結晶は自然に3方向に平行に分布して行きます。
ベルヌーイ法で造られた合成スター・ルビーには六角形状の成長線がありません。ですから、六角または六角の一部の成長線が見られたら、天然スター・ルビーと判定できます。成長線の観察と同時にスターの鮮明さを観察することも大切です。合成スター・ルビーのスターは極めてはっきりしています。天然スター・ルビーのスターは、合成スター・ルビーのスターと比較した場合、ぼんやりしています。
天然スター・ルビーは宝石の中でも稀少です。それゆえ、人は合成スター・ルビーを造り出します。しかし、両者には違いがあります。比較的容易に両者を識別することができます。

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