トパーズのイメージを変えた放射線技術

トパーズといえば、鮮やかな青色をしたブルー・トパーズが宝石市場にあふれています。そのブルー・トパーズは比較的手頃な価格と存在感のある青色で人気があります。
トパーズの日本名(和名)には、「黄玉(おうぎょく)」という字があてられています。このように1970年頃より以前は、トパーズといえば黄色が主力でした。
ところが、1970年代前半に無色のトパーズを青色のトパーズに改変する技術が開発され、トパーズの色のイメージが大きく変わってしまいました。
この改変技術は、無色透明なトパーズに放射線を照射し、その後加熱処理することで青色にするものです。放射線の種類(例えば、電子線、中性子線など)と照射時間、設定温度と保持時間によって、ブルー・トパーズの青色の濃さ、色相(明るい青色、藍色味を帯びた青色など)をコントロール(制御)できます。
未処理(放射線照射なし、加熱処理なし)の天然ブルー・トパーズも産出します。しかし、かなり薄い青色ですから、存在感がなく、魅力的ではありません。
ですから、改変技術によって濃い色のブルー・トパーズが生み出され、市場に流通しています。一般にブルー・トパーズは色の濃さ、色相によって次の3種類に分けられています。
  (1)スカイブルー :明るい淡い空色。
  (2)スイスブルー :明るい濃い青色。
  (3)ロンドンブルー:藍色味を帯びた濃い青色。

アクアマリンとブルー・トパーズは濃淡で見分ける

ブルー・トパーズの鑑別について、多くの人はアクアマリンとブルー・トパーズをどのようにして見分けるのですか、という思いを持っています。
アクアマリンとブルー・トパーズの区別は、ひとつの目安があります。単純な目安です。
電車の中で対面に座っている女性の首元に明るい濃い青色のペンダント・トップが見られたら、その石はほぼ間違いなく、ブルー・トパーズです。明るい濃い青色の石は、アクアマリンでなく、ブルー・トパーズです。
アクアマリンの青色は薄いです。市場に出回っているアクアマリンのほとんどは薄いです。ですから、明るい濃い青色はブルー・トパーズの可能性が極めて高いです。
このようにアクアマリンとブルー・トパーズの区別は、青色の濃淡を目安にして判断できます。
アクアマリンの青色は、一般にスカイブルー・トパーズよりも薄いです。一方、ブルー・トパーズの青色は、自由にコントロールできるなら、アクアマリンのような薄い青色を市場に出して来ることも考えられます。すると、青色の濃淡だけでは区別できなくなります。現実的には、薄いブルー・トパーズを市場に投入して来ることはないと思われます。薄いブルー・トパーズではビジネスとして成立しにくいです。薄いブルー・トパーズは魅力的でないです。ブルー・トパーズを造り出す企業は、市場性に劣る薄い青色をわざわざ生産することはないと思われます。

サンタマリア・アクアマリンには要注意

アクアマリンとブルー・トパーズの区別は、青色の濃淡で判断できます。しかし、例外のアクアマリンがあります。それは、サンタマリア・アクアマリンです。薄い青色のアクアマリンの中で、サンタマリア・アクアマリンはかなり濃い青色をしています。下の写真はサンタマリア・アクアマリンを示しています。

サンタマリア・アクアマリンは、ブラジルで初めて発見されました。その後、アフリカのモザンビークでも同じ色相のアクアマリンが発見されました。アフリカ産のこのアクアマリンはサンタマリア・アフリカーナ・アクアマリンと呼ばれていました。現在、ブラジル産もアフリカ産も同じくサンタマリア・アクアマリンと呼ばれています。

色の濃淡に関係なく、一般にブルー・トパーズの青色は明るい感じの青色ですが、アクアマリンの青色は冷たい感じの青色です。ロンドンブルー・トパーズは例外で、藍色味を帯びた青色です。サンタマリア・アクアマリンも藍色味を帯びた青色に見えます。
色の濃淡や色相でアクアマリンとブルー・トパーズを区別するには、難しい場合もあり、限界もあります。正確に両者を鑑別するには屈折計が必要です。屈折計を使用すれば、両者を容易に鑑別できます。

屈折計の外観は右の写真の通りです。写真中の手前の小さな茶色のガラスびんには屈折液が入っています。(屈折計サイズ:長さ13.5cm×幅4cm×高さ7.5cm)
屈折計の使用方法は難しくありません。メーカーの手順書通りに行えば、比較的簡単に宝石の屈折率を得ることができます。アクアマリンとブルー・トパーズの屈折率は下の通りです。
   アクアマリンの屈折率  :1.57~1.58
   ブルー・トパーズの屈折率:1.61~1.62
両石の屈折率はかなりの違いがあるので、明確に鑑別できます。

トパーズは屈折率で見分ける

ブルー・トパーズに外観が似ている模造石としてブルー・ガラスが挙げられます。ブルー・ガラスは大量生産が可能で安価です。鑑別のポイントは泡(気泡)と脈理です。多くのブルー・ガラスは、10倍のルーペで観察すると、小さな泡や脈理が見られます。脈理とは、グラスの中の水に蜂蜜を入れて、かき混ぜたときに見られるモヤモヤした感じを言います。
トパーズは青色の他にシェリー酒の色をしたインペリアル・トパーズが知られています。このトパーズはピンク色や赤色とともに価格がより高いです。
これらのトパーズに外観が似ている石として合成石が挙げられます。トパーズの色に似せた合成サファイアです。インペリアル・トパーズやピンク・トパーズ、レッド・トパーズと合成サファイアの鑑別は、屈折計を使用すると容易です。両石の屈折率の数値は下の通りです。
     インペリアル・トパーズ等:1.63~1.64
     合成サファイア     :1.76~1.77
ブルー・トパーズとインペリアル・トパーズ等では、屈折率に少し違いがあります。
流通しているトパーズのほとんどはブルー・トパーズです。確かに明るい鮮やかな青色は魅力的です。存在感があります。一方、青色の宝石としてアクアマリンは多くの人に知られています。
両石を識別するには、先ずは色の濃淡を目安にします。ほとんどのブルー・トパーズは明るい濃い青色です。ほとんどのアクアマリンは冷たい薄い青色です。
両石を確実に識別するには、屈折計を使用して屈折率の数値を得ることです。両石の間には明確な数値の違いがあります。

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