多彩な色をもつトルマリン

トルマリンは多彩な色で産出することが知られています。鮮烈な美しい青色のパライバ・トルマリンは多くの人にとって憧れの宝石です。
また、濃い赤色のトルマリンはルベライトとして販売されています。この他に藍色のトルマリンはインディゴライトと呼ばれ、魅力のある石です。
さらにピンク色のピンク・トルマリン、その他、深い緑色、褐色、黒色と多彩です。そして緑色と赤色が共存しているバイ・カラー・トルマリンなどもあります。

向きを変えると色が変わる!

トルマリンを鑑別(ある石が何であるか、天然か合成か模造石かなどを判定すること)するには、トルマリンが持っている特性を利用する必要があります。その有効な特性は二色性とダブリングです。
二色性とは、石の方向を変えて観察すると、色が変わって見える現象をいいます。トルマリンはこの二色性が顕著です。特に濃い緑色や濃い褐色のトルマリンでは二色性が強烈です。

ある石を長手方向から観察し、次に短手方向から観察すると、その色の変わり度合いが明確です。右図に示したように二方向の矢印から観察すると、トルマリンの色はかなり変わります。
例えば、濃い緑色のトルマリンが右図のようなステップ・カットにされていた場合、水平方向の矢印側から観察すると緑色に見え、垂直方向の矢印側から観察すると、真っ黒に見え、光りを透過しません。
トルマリンの原石は、断面が三角形で柱状に長く伸びている形状で産出します。この柱状に平行な方向では光がより強く吸収されます。
トルマリンの原石をカット(切断、研磨)する場合、サイズをより大きくするには、原石が伸びている方向をより長くしてカットします。その結果、右上図のようなステップ・カットの形状になります。そして、図中の矢印のように垂直方向から観察すると、濃い目のトルマリンでは真っ黒く見えます。

二色性を観察する「二色鏡」

トルマリンは二色性の強い石ですが、パライバ・トルマリン(鮮青色)やルベライト(赤色)、その他の薄い色のトルマリンでは、ある方向で真っ黒くなるほど変化することはありません。これらのトルマリンにおいても、注意深く観察すると、劇的ではありませんが、方向によって色が変わる現象は見られます。

二色性の色の変化が少ないトルマリンに対して、二色性を明確に観察する方法として「二色鏡」と呼ばれる器具を使用することが挙げられます。この器具は比較的小型で、ポケットに入れて携帯できるサイズです。この「二色鏡」の外観は右の写真の通りです。
この器具の直径は約15ミリ、長さは約 50ミリです。丁度、大人の小指のサイズです。重さは約16グラムです。

この器具の片方から中をのぞくと、二つの窓が見えます。この器具の前にトルマリンなどの宝石を置いて、この器具をゆっくりと回します。すると、二つの窓、左右の窓の色が相当に変わる位置があります。左右の窓の色の違いからトルマリンと判定したり、他の宝石の名前を導き出します。
例えば、パライバ・トルマリンを二色鏡で観察すると、左右の窓に青色と淡青色が見られます。外観が似ているブルー・トパーズを二色鏡で観察すると、青色と無色(あるいは淡黄色)が見られます。
さらにルベライトを二色鏡で観察すると、赤色とピンク色が見られます。外観が似ているルビーを二色鏡で観察すると、紫赤色と橙赤色が見られます。
「二色鏡」はトルマリンと同系色のガラスを識別するときにも有効です。例えば、青色のガラスを二色鏡で観察すると、左右の窓は変わりません。左右の窓は同じ青色に見えるだけです。同様に赤色のガラスを二色鏡で観察すると、左右の窓は同じ赤色に見えるだけです。

もう一つの特性え「ダブリング」

ある石(宝石)がトルマリンであることを判定する有力な特性は、二色性の他にダブリングです。ダブリングとは、10倍のルーペを用いてある石のテーブル面(真中の広いファセット面)から後側(パビリオン側)のファセット・ラインを観察したとき、そのファセット・ラインが二重(ダブリング)に見える現象です。ファセット・ラインとは、ファセットとファセットが接する線をいいます。

右図はダブリングを模式的に表したものです。ある部分のファセット・ラインが二重に見えている様子を表示しています。
ダブリングは次のような理由で生じます。多くの石(宝石)は、その石に光が入射すると、光は石の中で二つに分かれます。この分かれる程度は石によって違いがあります。
分かれる程度が比較的大きいと、10倍のルーペでダブリングを観察することができます。
ダブリングを観察する場合、すべてのファセット・ラインが同時に二重に見えるわけではありません。図中のように一部のファセット・ラインが二重に見えるのみです。図の例では二ヵ所が二重になっています。
ダブリング現象はファセット・ラインのピンボケではありません。10倍ルーペの焦点をしっかり合わせたとき、ピンボケであった場合は二重線の一本は消えてなくなります。
ダブリングの場合は二重線が消えることはありません。

ダブリングを容易に観察できない場合は、石の方向を変えて観察することが必要です。またテーブル横のファセットから石の長手方向に平行に観察して、後側のファセット・ラインを見るとダブリングを見易いこともあります。
ダブリングを初めて観察される方は、強い(大きい)ダブリングを持つスフェーンという石を観察すると判り易いです。
ガラスはダブリングがありません。ですから、例えばグリーン・ガラスとグリーン・トルマリンを鑑別する場合、ダブリングの有無で識別可能です。ダブリングがなければガラス、ダブリングが有ればトルマリンと判定できます。