鑑定士を悩ませる不透明で粒子の集合体である宝石

宝石のビジネスに関わる人でも鑑別がなかなか難しい、と言われている宝石が2種類あります。その宝石はターコイズ(トルコ石)とヒスイです。鑑別を困難にさせている要因として、ターコイズは不透明であり、ヒスイは半透明から不透明です。光が透過しにくいために内部を詳しく観察できないことが挙げられます。
また、ターコイズは非常に微細な粒の集合体であり、ヒスイは粗い粒の集合体であるという特徴があります。それゆえ、粒子間に染色剤を含浸させることが可能です。染色されたターコイズやヒスイが流通しています。
ターコイズは不透明、ヒスイは半透明から不透明であるため、ガラスや陶磁器、プラスチックなどで模造石を造り易いといえます。あるいは他の天然石を青色や緑色に染色する処理石も容易に作れます。このことが鑑別をより困難にさせています。

ターコイズは白い斑点で鑑別する

例外もありますが、ターコイズの鑑別の基本は次の2点にあります。
 (1)本体が青色であること。
 (2)細かい白色斑点が不規則に分布していること。
ターコイズは潜晶質の集合体です。潜晶質とは光学顕微鏡でも見えないほどの微細な結晶粒が集まった状態のことです。そして銅元素がターコイズを構成して青色に発色しています。ですから、本体は不透明で青色をしています。
不透明で青色の本体ですが、ほとんどの場合、その本体の中に細かい白い斑点を伴っています。そして重要な点は、その白い斑点が不規則に分布していることです。

右図はターコイズの天然石(上図)と模造石(下図)を模式的に示したものです。現物の写真撮りでは差異が判りにくいので、模式図を採用しています。
右上図が青色の背景に白い斑点が分布している状態を示しています。白い斑点の大きさも不揃いです。分布も均質でなく、不規則に分布しています。天然ターコイズでは白い斑点が不揃いで不均質に分布しています。
一方、右下図の模造石(模造ターコイズ)では、青色背景であっても、白い斑点の大きさが揃っており、全体に均質に分布しています。

天然ターコイズにおいて、ひとつの石の中で白い斑点が右下図のような分布をしている個所もあります。この場合は他の個所も注意して観察し、不規則分布が見られたら、総合的に判断して天然石であると鑑別します。

多数流通しているターコイズの模造石

ターコイズは不透明であるため、内部の情報が得られません。表面から得られる情報のみに限られます。このことがターコイズの鑑別を難しくさせています。ターコイズの模造石が市場にたくさん流通しています。以下のような種類があります。

  1. プラスチック製模造石
    濃青色から淡青色などが市場で見られ、発色は自由に変えることが可能です。
    ルース(裸石、貴金属等に取り付けられる前のカボッション・カットに仕上げられた状態)の場合であれば、手に取ったとき、比較的軽い感覚を受けます。
    表面状態を10倍のルーペで観察すると、全面が均質で小さな白い斑点はありません。
  2. 陶磁器製模造石
    長石や石英などを粉末にして焼成(焼き固めること)し、仕上げに青色の釉薬(うわぐすり、ゆうやく)で表面を被覆したものです。全面が均質な青色です。10倍のルーペで表面を観察すると、白い斑点がありません。
    しかし、時に釉薬に白い粒を混ぜていることがあります。この場合は、白い斑点が観察されますが、分布が非常に均質です。
  3. ガラス製模造石
    ガラス原料(硅砂:石英粒、ソーダ灰、石灰石など)に青色の着色剤を混ぜて溶融するので、本体全体が均質な青色となります。10倍のルーペで表面直下を観察すると、しばしば小さな泡(気泡)が見られます。
  4. 練りターコイズ(再生ターコイズ)
    ターコイズをルースに仕上げる過程で発生した切り屑や色の薄いターコイズ、過度の多孔質で強度が弱いターコイズなどを砕いて粉末にします。そして、その粉末を青色の接着剤(または水ガラスと青色の染色剤)と混合してプレス(圧縮)、固化させます。全面が均質な仕上がりとなります。
  5. 染色カルセドニー
    無色、白色、淡い褐色のカルセドニーに青色の染色剤を含浸させます。均質な青色となります。裏側からペンライトを当てて、内部を観察すると、縞状模様が見られるので識別できます。
  6. 染色マグネサイト
    天然石のマグネサイトに青色の染色剤を含浸させると、スパイダー・ウェブ・ターコイズのような外観が得られます。元々、マグネサイトはスパイダー・ウェブの模様を持っている白色の不透明な石です。ターコイズとの違いは青色の染色剤の溜まり、染色剤の密集個所が見られることです。
  7. アマゾナイト
    青色が優位なアマゾナイトは外観がターコイズに似ています。白い斑点も見られます。しかし、繊維状に伸びており、粒状ではありません。

ヒスイと共にターコイズの鑑別は難しいと言われています。外観をターコイズに似せた模造石や天然のターコイズを粉末にした後に固化したもの、異種の天然石を青色に染色させたものなどが市場に広く出回っています。一見しただけでは、ターコイズと思ってしまいます。ターコイズと判定するには、専門的な知識が必要となります。
しかし、専門的と言ってもターコイズの判定には、比較的単純な基本があります。それは、(1)本体が青色であること、(2)細かい白色斑点が不規則に分布していること、という基本です。例外もありますが、ほとんどの天然ターコイズはこの2項目に該当しています。