多色性

タンザナイトのテーブル面の色は、鮮やかな青色と共に紫色がチラチラ見える特長があります。この面の色は青色が優勢です。タンザナイトを側面(ガードル部)から観察すると、方向によって紫色が優勢になります。このようにある面では青色が優勢であり、ある面では紫色が優勢になる現象を二色性といいます。
ほぼすべてのタンザナイトは加熱処理されています。原石自身は魅力的な色ではありません。魅力的な青色を強く出すために加熱処理されます。
原石を詳しく観察すると、方向によって色が変わります。一般に青色、紫色、茶色です。この現象を三色性といいます。二色性と三色性を合わせて多色性といいます。
原石全体の色は茶色が支配的です。茶色は宝石の色として魅力的ではありませんので、加熱によって茶色を除去します。

タンザナイトを産出する草原の火事の後に青色の原石が発見されたことから、魅力的でないタンザナイトの原石を加熱処理すると、魅力ある青色に変化するのではないか、と予測した人が居たと思われます。その後、多くの人によって最適な加熱条件[加熱温度、加熱時間、雰囲気(還元状態か酸化状態)]を求めて、繰り返しの試験が行われたものと思われます。

タンザナイトは結晶です。多くの結晶は方向によって光の吸収の程度が異なります。タンザナイト中に微量に含まれるバナジウムで青色に発色しても、方向によって光の吸収が異なり、紫色も見られます。
多色性という特性で見られる二色または三色を観察することで、宝石を鑑別できます。例えば、外観が青色の天然ブルー・サファイアとタンザナイトの識別は、前者では青色と緑青色(または黄青色)の二色性、後者では青色と紫色の二色性です。方向を変えて観察すると、現れる色が異なります。この違いによって識別が可能です。多色性という特性は鑑別に極めて有効な情報を提供してくれます。

劈開(へきかい)

劈開とは、結晶に一定の力を加えると、ある特定の方向に割れる性質です。タンザナイトを含めて多くの宝石は結晶です。結晶は程度の差はありますが、劈開を持っています。劈開の程度は、一般に顕著、明瞭、軽微、不在の4段階に分けられます。
タンザナイトの劈開の程度は顕著です。ですから、タンザナイトは外部から衝撃を受けると、割れ易い性質を持っています。

タンザナイトの原石は長柱状の形をしており、この伸長方向に平行に割れる性質を持っています。劈開の方向は伸長方向に平行ということになります。
タンザナイトの販売に当って、タンザナイトは劈開を持っているので取り扱いに注意して下さい、と顧客に説明することは必要かもしれません。しかし、タンザナイトの性質に熟知している宝飾品メーカーが、あらかじめ破損を回避する工夫をしておくべきだと思います。
リング(指輪)の石は、ペンダント・トップやイアリング、ピアスの石よりもはるかに衝撃を受ける力が大きく、衝撃を受ける機会も多いと推測されます。ですから、劈開が顕著なタンザナイトなどの石をリングに使用することは避けることが無難です。
もし、タンザナイトをリングに使用するなら、デザイナーはタンザナイトの性質を充分に把握した上で、不意に起こる衝撃からタンザナイトを保護するデザイン処理を講じる必要があります。

タンザナイトに使われる貴金属、例えばK18WGなどの貴金属でタンザナイトを保護する工夫が求められます。
タンザナイトの宝飾品メーカーは、オーナーも企画部門もタンザナイトの性質を把握して、商品開発を進めることが大切です。

低硬度

タンザナイトの硬度は6.5です。宝石業界で使用する硬度はモース硬度です。ドイツの鉱物学者・モースによって提唱された硬度表示のひとつです。10段階あります。
最も軟らかい硬度を1と表示し、標準石として滑石が選ばれています。最も硬い硬度を10と表示し、標準石としてダイヤモンドが選択されています。
すべての宝石の硬度は、硬度1から硬度10のいずれかに該当します。例えば、ルビーやブルー・サファイアは硬度9です。エメラルドは硬度7.5~8、アレキサンドライトは硬度8.5です。

タンザナイトの硬度について、書籍などの資料によっては硬度6と表示している場合もありますが、多くは硬度6.5と記載しています。
タンザナイトの硬度6.5は主要宝石(ダイヤモンド、ルビー、サファイアなど)と比べると低いです。つまり、スリ傷が発生しやすく、耐久性がやや落ちます。
タンザナイトの低硬度を考慮すると、リングに使うよりペンダント・トップやイアリング、ピアスが無難です。
リングに使う場合は、貴金属でスリ傷の発生を抑えるデザイン処理を施す必要があります。

希少性

宝石の三大条件として美しさ、硬さ、希少性が挙げられています。タンザナイトの希少性は、ダイヤモンドの希少性と少し異なる側面を持っています。確かにダイヤモンドはあらゆる国々で採れるわけではありません。しかし、比較的いろいろな国で産出しています。南アフリカ、ガーナ、オーストラリア、カナダ、ロシアなど各国で産出します。
ところが、タンザナイトはアフリカ大陸のタンザニアのみで産出する宝石です。ひとつの国に偏って産出します。この点においては、タンザナイトはダイヤモンドよりも希少性が高いと言えます。
タンザナイトは、広い地球のひとつの地域のみで起こった特異な地質変動(温度、圧力、時間、異種鉱物の接触など)によって、生まれたものと推測されます。
タンザナイトはひとつの国のみで産出されるという希少性が、鮮やかな青色の魅力と共に人気を高めていると思われます。