メタミクト

ジルコンに見られる特別な現象がメタミクトです。多くのジルコンについて比重や屈折率を調査したところ、2種類に分類されることが判明しました。比重や屈折率がより高い数値を示すジルコンとより低い数値を示すジルコンの2種類が存在したのです。前者はハイタイプ・ジルコン、後者はロータイプ・ジルコンと呼ばれています。

ジルコンはなぜ2種類存在するのか? この謎は長い間、宝石学者を悩ませて来ました。その後、この謎はジルコンの中に含まれるウラニウムとトリウムに原因することが判りました。
この放射性物質であるウラニウムとトリウムがジルコンの中に存在していると、数千万年あるいは数億年という長い年月の間にジルコンの結晶が破壊されて、非結晶になる現象が起きます。この現象はメタミクトと呼ばれています。

結晶とは、原子が規則正しく並んでいる状態です。
右の左図は結晶を模式的に表しています。丸印は原子を示しています。原子が整列しています。
右の右図は原子が不規則に分布している状態を表しています。この状態は非結晶です。

ジルコンにおいて、ハイタイプは結晶で、ロータイプは非結晶です。ハイタイプからロータイプへの変化は、ジルコンの中に含まれているウラニウムとトリウムに原因しています。

ダブリング

ダブリングとは、ルーペ(10倍)を使ってある宝石のテーブル(正面の平らな広い面)を通してバック・ファセット(後ろ側のファセット)を観察したとき、そのファセットの線が二重に見える現象です。
ジルコンはダブリングが比較的容易に見られる代表的な宝石です。ですから、ダブリングを観察することで、ジルコンとほぼ判定できます。
ダブリングの強弱はおよそ三種類に分けられます。強烈、明瞭、微弱、あるいは大、中、小に分けられます。ジルコンは強烈、大に分類されます。
宝石のダブリングは、宝石自身が持っている屈折率に原因しています。一般に宝石は最大の屈折率と最小の屈折率を持っています。そして最大の屈折率と最小の屈折率の差は複屈折量と呼ばれています。
この複屈折量の大きさがダブリングの強弱になって現れます。

右の表は複屈折量について、比較的大きな複屈折量を持つ宝石、そして中程度、小さい複屈折量を持つ宝石を示しています。
この表の中では、ジルコンは第3位に位置しています。第1位はカルサイトです。この石の日本名は方解石と呼ばれています。中学や高校の理科の授業の時に習ったかもしれません。この石を新聞紙の上に載せると、文字が二重に見える経験をされたかもしれません。
方解石は極端に大きな複屈折量を持っていますので、肉眼でも文字が二重に見えます。二重に見えること、いわゆるダブリングです。
スフェーンは市場で人気のある宝石です。この石も大きな複屈折量を持ち、ダブリングが明瞭です。
今、世界で人気のタンザナイトについて、複屈折量は小さいです。ですから、かなり大きなサイズのタンザナイトでない限りダブリングを見ることは難しいです。
この表において、ジルコンの複屈折量は宝石の中で上位に位置しています。この複屈折量で生じるダブリングを観察することで、今見ている未知の宝石はジルコンである、と判定できる可能性が高いです。
ダブリングの見え易さは、ジルコンの大きさ(サイズ)にも影響されます。0.5カラットの石よりも1カラット、2カラットの石の方が見え易くなります。

ジルコン・ウォーン

ジルコンの硬さ(硬度)は数値で表示すると7.5です。硬度が7以上であれば、日常の使用に耐える宝石です。ですから、ジルコンは耐久性があると判断される宝石です。
しかし、ジルコンはジルコン・ウォーンと言われて、独特の擦(す)り減り易い性質を持っています。ウォーンとは擦り減った、という意味です。
このジルコン・ウォーンという性質は古くから知られていました。1700年代にスリランカで発見されたジルコンをヨーロッパに送ったところ、ジルコン同士が互いに擦り合って摩耗していたのです。
ジルコン自体は一定の硬度を持っているのですが、小さな衝撃に対して摩耗する性質を持っているのです。ですから、ジルコンはジルコン・ウォーンという性質を持っていることを考慮して、ジルコンを使ったリング(指輪)の宝飾品を制作しようとしているデザイナーの方には、ジルコンを保護する工夫が求められます。
一方、ペンダント・トップやイアリング、ピアスにジルコンを使用する場合は、ジルコン・ウォーンを考慮する必要はない、と思われます。
リングに使われる宝石とリング以外に使われる宝石を比較すると、宝石が受ける衝撃には大きな差があると思われます。リングの宝石は、日常の使用の中で思いがけない強い衝撃にさらされる機会が格段に高いと推測されます。
ですから、ジルコンをリングに使用する場合は、デザイナーはジルコンの性質を把握して、ジルコンを衝撃から保護するデザイン処理をすべきです。