ダリというアーティストをご存知でしょうか。スペインのヒゲの画家、といえばピンとくる方も多いでしょう。シュールレアリズムのアーティストとして名を馳せました。
シュールレアリズムとは、現実を超越した無意識を表現する芸術運動のことです。理論的に説明できない夢の中にいるかのような不思議な絵画や物語をどこかで見たり読んだりしたことがあるでしょう。
1924年のシュールレアリズム宣言から発祥したとされていますが、それ以前にもそのような表現はあったようです。思想的にはフロイトの精神分析に強い影響を受けているようです。
そのシュールレアリズムのアーティストの中でも、ダリはいろいろな意味で別格です。奇行でも知られるダリですが、妻であるガラを生涯愛しました。強い絆で結ばれたダリとガラについて調べてみました。

すでにエキセントリックな片鱗のあった子供時代

ダリは1904年スペインのカタルーニャ地方で生まれました。父親は公証人をしていて裕福な家庭だったようです。ダリには同じ名前のダリという兄がいましたが、弟であるダリがまだ9ヶ月のころに2歳で亡くなりました。そのため、両親は生まれた弟を死んだ兄の生まれ変わりだと信じ、兄と同じ名前を名付けました。
このことで、ダリは自分のことをキリストのように復活した偉大な人間だと思うようになったとされています。長じて、自分のことを天才だと言ってはばからなかったダリの性格の発端でしょう。また、ダリの得意のモチーフである、ひとつの絵にふたつの意味を持たせる隠し絵の表現も、「兄の写し」である「自分」という意識があったとされています。
幼いころからエキセントリックな性格の片鱗がのぞき、厳格な父親とそりが合わなかったようです。理解者であった母親はダリが16歳のときに亡くなりました。しかしそれからすぐに父親は母親の妹と再婚します。このことがダリの女性恐怖症と関係があるとされています。
絵の才能はごく幼いころから発揮され、18歳のときにマドリードのサンフェルナンド美術学校に入学します。そこでのちに一緒に映画を作るルイス・ブニュエルと友達になりました。
古典的な絵画に興味があったダリは、アカデミックな授業を期待していましたが、当時流行りの印象派やキュビズム的な絵画ばかりを大学では教えており、ダリは落胆しました。ご覧になればわかるように、ダリの絵画はモチーフそれぞれが非常に写実的です。卓越した自分の技術を伸ばすことができないというジレンマがあったことでしょう。
もちろん大学とは合わず退学し、パリに旅行を頻繁にするなどし、そのうちにシュールレアリズム運動に出会い、自分の真の表現を見つけます。

ガラとの出会い

1929年、カダケスにいたダリをシュールレアリズムの詩人ポール・エリュアールとその妻ガラが訪問します。ダリは11歳年上のガラに一目惚れをし、ガラはエリュアールを捨ててダリと駆け落ちをしました。
このガラという女性は非常に恋多き女性で、エリュアールという夫がいながら、マックス・エルンストというアーティストと三角関係になり、一時は三人が同居するということもありました。若いアーティストが大好きな百戦錬磨のガラに、うぶなダリはいとも簡単に恋に落ちました。
ガラはマネージメント能力に非常に長けており、金銭感覚ゼロのダリを画壇に売り込み、その経済を支えました。また、ダリの創作意欲の源でもあり、多くの絵画のインスピレーションの源となりました。ありとあらゆるガラの肖像画が存在しています。
しかし、ガラは悪妻でもあったようです。ダリをうまく働かせ、ダリに買わせた城に若い愛人たちを囲い贅沢三昧をしていました。
その事実を知っていたのかどうなのか、ダリは生涯ガラを愛し抜きました。
ダリが偉大なアーティストになれたのは、ガラの美貌と卓越したマネージメント力あってこそでしょう。ふたりには常人の理解できない愛の絆があったようです。
ダリよりも11歳年上であったガラは1982年、87歳でこの世を去ります。ガラが亡くなるとダリはすっかり制作意欲を失い、「人生の舵を失った」と、ガラが住んでいた城に引きこもりました。1989年に傷心のまま、85歳でダリもこの世を去ります。
今、ふたりはスペインにあるダリ劇場美術館に仲良く埋葬されています。

ルビーは愛のしるし

この世にはいろいろな愛の形があるようです。悪妻といわれながらも、ガラはダリの才能を信じ、またダリはそのガラに力を得て膨大な創作をしました。正直、絵を描くしか能のない男だったダリには、ガラというビッグマザーが必要だったのです。
事実ガラ亡きあと、画廊にほとんどの財産を奪われるなどダリは不運に見舞われました。
人に理解されなくとも、ふたりさえ愛し合っていれば、たいていのことはうまくいくようにこの世はできているのかもしれません。時にはわがままなくらい、ふたりの愛を信じることがあってもいいでしょう。
一時、ジュエリーのデザインにも関わっていたダリ。ルビーも多く使われました。情熱的な赤いルビーはダリとガラの愛の象徴なのでしょうか。
永遠を信じて、ルビーを愛する人に贈りましょう。
K18WG ルビー&ダイヤモンド ネックレス

本稿は無断転載禁止です。ヴィサージュジャパン 株式会社