赤いルビーと青いサファイアが同じ石?!

鮮烈な赤色を放つルビーとは、どのようなもので造られているのでしょうか? あの赤色の発色原因は何によるのでしょうか? そしてルビーとブルー・サファイアは同じものです、ということを聞いて一般の多くの人達は驚かれます。赤色のルビーと青色のブルー・サファイアが基本的に同じものであることを知って、驚きの目をします。
1783年、フランスの鉱物学者・ロメ・ド・リールはルビーとブルー・サファイアは成分が同じであることを発表しました。この頃にルビーの本質が突き止められたものと推測されます。ルビーの本質は次の2項目にあります。
   (1)成分:コランダム(酸化アルミニウム)
   (2)発色:クロム(クロミウム)
ルビーの成分(宝石を構成している元素の割合)は比較的単純です。アルミニウムと酸素の二つの元素のみで構成されています。ルビーの基本的な構成成分である酸化アルミニウムは、通常、宝石業界、鉱物業界ではコランダムと呼ばれています。工業界ではアルミナと呼ばれています。
ルビーの赤色の発色は、コランダムの中に微量に含まれているクロム(クロミウム)に原因しています。ブルー・サファイアの青色の発色は、コランダムの中に微量に含まれている鉄とチタンに原因しています。ルビーとブルー・サファイアは色が違っても本体は同じです。両者とも本体はコランダムで構成されています。
ですから、ルビーとブルー・サファイアの親はコランダム、ルビーとサファイアは兄弟姉妹の関係といえます。ルビーは姉、ブルー・サファイアは弟といった関係です。

赤いルビーの本質特性

ルビーの本質は、成分がコランダムで、発色がクロムということになります。この二つの項目を便宜上、本質特性と呼ぶことにします。
ですから、ある宝石がルビーであることを証明するには、この本質特性を捕まえれば良いということになります。本体がコランダムであることを確かめ、不純物としてクロムが含まれていることを確認できれば、ルビーと証明されます。
いつでも宝石の本質特性を解き明かせば、確実に宝石の名称にたどり着くことができます。しかし、本質特性に迫ることは容易でありません。宝石の鑑別機関が所有している蛍光X線装置が必要です。アルミニウム元素とクロム元素を検出する必要があります。
宝石に強い関心がある人でも、個人的に蛍光X線装置を保有している人は誰も居ません。ですから、一般にある宝石がルビーであることを証明するには、別な特性を調べることになります。
その特性は固有特性です。固有特性とは、本質特性から生まれる高屈折率などの特性を言います。ルビーの固有特性を挙げますと、この高屈折率の他に複屈折性、高硬度、吸収分光(吸収ライン及び吸収バンド)、高密度などです。
これらの固有特性は、比較的安い器具を使って検査することができます。例えば、ルビーの屈折率は、市販されている屈折計を使えば、正確な数値が得られます。ルビーの屈折率はダイヤモンドと比較すると低い数値ですが、他の宝石と比べると高屈折率と言えます。

見た目の美しさはどこからくるのか

宝石を購入される多くの人は、宝石を目で見て、色が美しいとか、輝きがあるとかの判断をします。ルビーを目で見て、私達はどのような特性をとらえているのでしょうか?
私達が目でとらえられる特性を表面特性と言います。ルビーの鮮烈な赤色、ルビーの良好な「テリ」、ルビーを側面から観察すると、紫赤色と橙赤色の二色が見られる二色性と呼ばれる特性など、これらは表面特性です。
さらにルビーのリングなどを日常的に使用していても表面に簡単にスリ傷がつくわけではありません。ルビーは強い耐久性があります。見て直ぐに気付くことではありませんが、耐久性は長い期間で気付く特性です。これも表面特性です。

右図は本質特性と固有特性と表面特性が三層関係になっていることを図示化したものです。ルビーの本質は、コランダムで構成されており、発色はクロムに原因しています。この本質特性から固有特性が生まれます。この固有特性から表面特性が生まれます。
図中の表面特性の中に「良好なテリ」という特性があります。これはルビーを見たときの輝きを意味しています。
テリとは宝石業界の特有な用語です。宝石の美しさを表す重要な用語のひとつです。テリとは宝石の表面からの光の反射と宝石の内部から現れる光の合計による輝きを言います。このテリは宝石自身の屈折率と透明性、カット・スタイルなどに影響されます。宝石業界では、「この石はテリがいいですね」と言った会話が交わされます。
そして図中の表面特性の中に「二色性」という特性があります。これはルビーの方向を変えると、紫赤色と橙赤色が見られる現象を言います。ルビーは赤色と表現されますが、詳しく観察すると、紫赤色と橙赤色が混在していることに気付きます。この二色性は肉眼または10倍のルーペでルビーのガードル部(側面部)から観察すると、クラウン部またはパビリオン部に現れます。紫赤色と橙赤色の二色が見られたら、ルビーと判定できます。この二色の色相は、他の赤色の宝石には見られないものです。

ルビーは熱に強い!!

上図の中には記載されていませんが、ルビーが溶ける温度(以下、溶融点と表示)も特筆すべき特性です。この溶融点も固有特性になります。ルビーの溶融点は極端に高温度です。その溶融点は2050℃(度)です。ルビーは火事にあってもビクともしません。
宝石質でないコランダムは耐火煉瓦の材料になるほどです。
ルビーの最大の魅力はその鮮赤色にあります。その鮮赤色を生み出す元はクロムです。
コランダムの中にクロムが1%~2%含まれる場合、もっとも美しく発色すると言われています。クロムの含有率が少ない場合はピンク・サファイアになってしまいます。
クロムの含有率が多い場合は不透明な暗赤色になって、宝石としての価値はなくなります。
今から数千万年前、数億年前の地球の激動期(火山活動期、造山活動期)にコランダム(アルミニウムと酸素で構成される成分)とクロムが偶然に出会い、美しい鮮赤色のルビーが生まれました。