ある種類の宝石はキャッツ・アイを示します。キャッツは猫、アイは目という意味ですから、猫の目のような外観を持つ宝石はすべてキャッツ・アイ・ストーンに分類されます。はっきりした猫の目を持つ宝石からぼんやりした猫の目を持つ宝石までいろいろなタイプがあります。

キャッツ・アイは「天使の輪」と同じ原理で生まれる

ある種類の宝石はなぜキャッツ・アイを示すのでしょうか? キャッツ・アイを示す宝石は何か特別な理由を持っている、と考えられます。キャッツ・アイ現象を理解する際に使われる身近な例として次の二つが挙げられます。
ひとつの例は「糸巻き駒」です。糸巻き駒とは糸を巻く円柱状のものです。

この駒に細い糸が規則正しく平行に巻かれていると、右の写真に示したように白い光の帯が現れます。
この白い光の帯は専門語で光条(こうじょう)と呼ばれています。
右の写真の光条は背景の色(濃青色)を反映して白青色に光っています。
右の写真の糸巻き駒を観察すると、光条は水平方向の糸に対して直角に現れています。

キャッツ・アイは宝石に見られる光条のことです。宝石にキャッツ・アイが見られる現象は、糸巻き駒に見られる光条と同じ原理です。
身近で見られるもうひとつの例は「天使の輪」です。天使の輪とは、頭頂部の髪の毛に見られる白い輪(リング)のことです。よく整えられた髪の毛に見られる現象のことです。

右の写真はモデルの頭頂部を撮影したものです。髪の毛に白い輪が現れています。
右の写真の頭頂部を観察すると、髪の毛が垂直方向にたくさん密集しています。この髪の毛に直角に白い光条が水平方向に現れています。

ふたつの実例から次のようなことが導かれます。
  (1)長く細い線(糸、毛髪)がひとつの方向に平行にたくさん存在していること。
  (2)丸みを持っていること。
キャッツ・アイが現れることもふたつの実例と同じような理由があると推測されます。キャッツ・アイを示す石は次のような条件を備えています。
  (1)長く細いインクルージョン(内包物、異物)がひとつの方向に平行にたくさん存在していること。
  (2)カボッション・カット(丸みを持つ山形)にされていること。
ふたつの条件を満たすと、キャッツ・アイが現れます。白い光条が現れます。キャッツ・アイ・ストーンは、上から見ると楕円形であり、側面から見ると山形をしています。ですから、糸巻き駒の光条と少し異なり、両端で細くなって猫の目に近くなります。

キャッツ・アイの本質を探る

宝石業界では、キャッツ・アイと言えば一般にクリソベリル・キャッツ・アイを意味しています。キャッツ・アイを示す宝石は他にいくつかあります。例えば、クォーツ・キャッツ・アイ、ネフライト・キャッツ・アイ、アクアマリン・キャッツ・アイ、トルマリン・キャッツ・アイ、スカポライト・キャッツ・アイ、シリマナイト・キャッツ・アイなどです。

キャッツ・アイ・ストーンを代表してクリソベリル・キャッツ・アイを採り上げ、この宝石の本質を探ってみます。宝石の本質を探るには三層特性図が有効です。

下の図は三層特性図を示しています。
本質特性はクリソベリルの成分を示しています。クリソベリルはベリリウム(Be)元素を含む比較的珍しい宝石です。
固有特性において、一方向平行内包物無数の項目があります。この項目がキャッツ・アイを生み出す原因になっています。1ミリ平方の断面に数千本もの針状インクルージョン(内包物)が存在するためにクリソベリル・キャッツ・アイは明瞭なキャッツ・アイを示します。

同じく固有特性において、鉄分含有の項目があります。この鉄分によってクリソベリル・キャッツ・アイは独特な蜂蜜色から黄緑色に発色しています。この色の発色は本質特性である成分に影響されていると思われます。
高硬度という項目について、クリソベリルの硬度はモース硬度で表示すると、8.5ですから、かなり高い硬度で耐久性があります。

表面特性について、キャッツ・アイの発現は一方向に平行な内包物に原因しています。また独特の蜂蜜色、黄緑色は鉄分に原因しています。さらに半透明な状態の原因は無数に存在する内包物による光の散乱、遮蔽と思われます。
クリソベリル・キャッツ・アイの中には希にカラー・チェンジする宝石があります。太陽光の下、または豆球ペンライトの下では色が変わる現象を示すアレキサンドライトを併せ持つことがあります。この宝石はアレキサンドライト・キャッツ・アイと呼ばれています。非常に高価となります。
キャッツ・アイ・ストーンの本質は、宝石自身が持っている一方向に平行に分布する無数のインクルージョン(内包物、異物)にあります。この宝石の原石を人為的にカボッション・カットにすると、白い光条が現れ、キャッツ・アイとなります。
しばしば、「宝石になる原石も磨かなければ、ただの石」と言われています。ダイヤモンドの原石も磨かなければ、ガラスの塊のように見えます。人為的にラウンド・ブリリアント・カットを施したとき、初めて光り輝きます。
同じくキャッツ・アイ・ストーンも人為的にカボッション・カットを施したとき、白い光条が現れ、キャッツ・アイとなります。