キャッツ・アイが生まれる条件

猫の目のように見える宝石はキャッツ・アイ・ストーンと呼ばれています。宝石が特殊な条件を満たすときにキャッツ・アイが現れます。次の2つの条件を満たすときに現れます。
  (1)宝石の中にインクルージョン(内包物、異物)がひとつの方向に平行にたくさん分布していること。
  (2)宝石がカボッション(丸い山形形状)にカット(切断・研磨)されていること。

宝石そのものに必要な条件

第1番目の条件[上の(1)項]を多くの宝石が持っているわけではありません。持っている宝石は希といえます。

インクルージョンが細くて、ひとつの方向に平行にたくさん存在していることが必要です。このようなインクルージョンの形態(形)を右図(上段図)が示しています。
この石をカボッション・カットすると、右図(下段図)に示したような白い光の帯が現れます。キャッツ・アイが発現します。白い光の帯は光条(こうじょう)と呼ばれています。光条はインクルージョンに対して直角に現れます。

無数に存在するインクルージョンの一本一本で光が反射し、すべてが集合すると光の帯になります。ですから、直線状のインクルージョンの密集状態、直径の太さによって光条は変わってきます。
インクルージョン自体の形態(形)によって光条は影響されます。密集度合いが粗いと鋭い明瞭な光条(猫の目)が現れません。極端な例を考えると、例えば直線状のインクルージョンが1本だけ存在していても光条は現れません。

右図(上段図)のように粗い分布のインクルージョンの場合はぼんやりした光条になると推測されます。また、右図(下段図)のようにインクルージョンの直径が太い(大きい)場合もぼんやりした光条になると推測されます。太くても密集度が上がると光条はより明確に現れると思われます。

鋭い明瞭な光条が発現するには、直線状のインクルージョンの形態(形)が細くて密集していることが必要です。
インクルージョン同士の間隔が粗いと、インクルージョンが存在しない個所では光が反射しません。結果として光条はぼんやりしたものになります。
さらにインクルージョンが直線でなく少し蛇行していると、光条も少しゆがんで現れます。虎目石(タイガー・アイ、タイガーズ・アイ)ではしばしばゆがんだ光条が見られます。虎目石もキャッツ・アイ・ストーンの一種です。本体の色が虎の色に似ていることから、虎目石と呼ばれています。

キャッツ・アイを引き出すカットの技

第2番目の条件[(2)項]は人為的に形作ることができます。キャッツ・アイ効果を出すには、カボッション・カットが必須です。カボッション・カットは山形の形状をしています。右図はカボッション・カットの形状を示しています。
最上段図は正面図(上から見た図)で、楕円の形をしています。
第2番目の図は側面図(横から見た図)で、丸い山形の形状です。通常、ガードル(最大直径部)の下にも低い山形が付けられています。
適切な光条(猫の目)を造り出すには、山形の形状も経験を織り交ぜて適切な勾配が必要です。
第3番目の図のように急峻な勾配にすると、光条の幅が狭くなります。極端に尖らせると、細い光の線になってしまいます。
逆に第4番目の図のように平板に近い形状にすると、光条の幅は広くなります。
さらに球面ではなく、完全にテーブル面(中央部の平らなファセット)に仕上げると猫の目が現れないで、白っぽい面が広がるだけになります。


キャッツ・アイといえば、クリソベリル。でもそれだけじゃありません

通常、キャッツ・アイと言えば、宝石業界ではクリソベリル・キャッツ・アイを指します。本体はクリソベリルと呼ばれる宝石です。この本体に非常に細くて長いインクルージョンが無数に存在するとき明瞭なキャッツ・アイが現れます。
ある物理学者が極細のインクルージョンの数を測定したところ、1ミリ平方の断面に数千本ほど存在していたとのことです。ですから、肉眼では極細のインクルージョンを見ることはできません。
10倍のルーペを用いて、クリソベリル・キャッツ・アイの後側からペンライトを当てると、極細のインクルージョンの存在を確認することはできます。
キャッツ・アイを示す宝石は、代表的なクリソベリルの他にクォーツ、トルマリン、アクアマリン、アパタイトなどがあります。これらの石がキャッツ・アイを示す場合は本体の石の名前を頭に付けて表示することが慣例です。例えば、クォーツ・キャッツ・アイなどと表示されます。

石そのものの形だけでなく、見る環境に左右される美しさをもつ

キャッツ・アイの鮮明度合いは、本体のインクルージョンの形態(形)と観察する環境(光)に影響されます。インクルージョンの形態とは1本1本のインクルージョンの太さ(直径)、分布密度(密集度合い)、同一方向性などです。環境は太陽光の下では、日向と日陰、部屋の中では弱い照明、強い照明、多数の蛍光灯あるいはペンライトによる単一光源などです。
宝石は美しい色で私達を魅了します。ルビーは鮮赤色、ブルー・サファイアは鮮青色に発色して私達を惹き付けます。
一方、キャッツ・アイなどの光の特殊効果に魅力を感じる人もいます。キャッツ・アイはある種類の宝石に見られる特殊な現象です。大自然の中で数万年、数十万年で成長したと思われる極細のインクルージョン(内包物、異物)がひとつの方向に平行に分布しているときに見られる特殊な現象です。