ダイヤモンドを最も美しく見せるカット

ほとんどのダイヤモンドは上から見ると、丸い形をしています。
この形を宝石業界ではラウンド・ブリリアント・カットと呼んでいます。

ラウンドは丸いという意味で、ブリリアントは輝きという意味です。
このカットを横から見ると、上側は円錐を途中から切った形と下側は円錐の形をしています。このカットを側面から見た形は右図の通りです。

ダイヤモンドに使われるこのラウンド・ブリリアント・カットは、ダイヤモンドを最も美しく見せるカットと言われています。
白く光り、まぶしさを感じさせるほどの輝きを放ちます。

ダイヤモンドを美しく見せるには、ラウンド・ブリリアント・カットが必要です。このカット無しでは美しく輝きません。
例えば、ダイヤモンドを窓ガラスのように平らな面だけにしますと、あの美しい輝きはまったく見られなくなります。
上から入った光は平らなダイヤモンドを通り抜け、下から逃げていきます。平らなダイヤモンドを上から見ても、黒っぽく見えるだけです。
白く光り輝くダイヤモンド特有の美しさは得られません。

理想のラウンド・ブリリアント・カット

ダイヤモンドを最も美しく見せるラウンド・ブリリアント・カットの形について、1919年、トルコフスキー(アメリカ)は数学的、理論的に理想形を導き出し、発表しました。寸法(長さ)や角度を数値で示しました。
このカットはアイデアル・カットと呼ばれています。右図に示した通りです。
その後、このカットを基に改良が加えられ、現在に至っています。今、流通しているダイヤモンドは、例えばテーブル面の寸法は右図の53%から60%前後により大きく拡げる傾向にあります。

ダイヤモンドをより美しく輝かせるための形について、古くからダイヤモンド・カッター(ダイヤモンド研磨工)が試行錯誤してきました。
トルコフスキーがアイデアル・カットを発表する以前に、長い歴史を経て修正しながら、このアイデアル・カットに近い形ができあがっていました。
トルコフスキーは、長い歴史を経て得られたダイヤモンドの古い形を基にして、理論的に美しく輝くダイヤモンドのアイデアル・カットを導いたものと思われます。

ダイヤモンドを美しく見せている最大の要因は、白く光り輝いていることにあります。この現象をブライトネス(光輝)といいます。
ダイヤモンドはこのブライトネスを引き出す形にする必要があります。このブライトネスを最大に引き出す形がアイデアル・カットです。
アイデアル・カットにおいて、ガードル(最大直径部)とクラウン(ガードル上部)の間の角度は34.5度です。ガードルとパビリオン(ガードル下部)との間の角度は40.75度です。
ダイヤモンドは厳密な角度を持った形に仕上げなければなりません。

ダイヤモンドはなぜ厳密な角度を持った形にしているのでしょうか?
それは白く光り輝く現象、ブライトネスを引き出すためです。
このブライトネスを引き出すには、上からの光がダイヤモンドの中に入り、パビリオンの面(下の面)で反射して帰って来ることが必要です。上からの光がダイヤモンドの中に入り、最大限に上に戻って来るように計算した結果が、34.5度と40.75度という数値です。

他の石ではどうなるの?

それでは、この厳密な角度を持ったアイデアル・カットを他の宝石や模造石に適用した場合、どのような輝きになるのでしょうか?
例えば、カラーレス・トパーズ(無色透明トパーズ)やカラーレス・ガラス(無色透明ガラス)にアイデアル・カットを施したら、ダイヤモンドのような形に仕上げたら、どのような輝きを示すのでしょうか?

結論は、カラーレス・トパーズもカラーレス・ガラスも白く光り輝くことはありません。
両石とも上から入った光はパビリオンの面を抜けて、外に出て行きます。多くの光は上に帰って来ません。その結果、両石とも光が抜けるために黒っぽくなります。ダイヤモンド特有の白く光り輝く現象は見られません。

ダイヤモンドと両石(カラーレス・トパーズ、カラーレス・ガラス)をアイデアル・カットの形にしたとき、輝きに大きな差異が見られます。この差異はなぜ生じるのでしょうか?
この大きな差異は屈折率という特性によって生じます。屈折率とは宝石(その他の物質)が光を曲げる程度を数値で表したものです。ダイヤモンドの屈折率は2.42(正確には2.4175)です。トパーズの屈折率は1.62~1.63、ガラスは1.51~1.52(窓ガラス)です。

屈折率の数値を基に数学的にダイヤモンドの形が導かれています。ダイヤモンドの屈折率は他の宝石と比較して相当に大きな数値です。この大きな数値からアイデアル・カットの形が決まり、白く光り輝くダイヤモンドの美しさが生まれています。

小さい数値の屈折率を持つ宝石や模造石では、アイデアル・カットの形にしても白く光り輝く現象は得られません。

キュービック・ジルコニアではどうなるか

今、宝石やアクセサリー市場にキュービック・ジルコニア(略称:CZ)がたくさん流通しています。このCZは、外観が最もダイヤモンドに似ている類似石として多用されています。遠くから見ても近くから見ても、ダイヤモンドに見えます。ダイヤモンドとの識別は難しいです。CZを強いてアイデアル・カットの形にする必要はありませんが、ほとんどのダイヤモンドと同じくラウンド・ブリリアント・カットにされて流通しています。

なぜCZはダイヤモンドのように白く光り輝くのでしょうか?
それは屈折率が大きいからです。
CZの屈折率は少し幅がありますが、2.15~2.18です。ダイヤモンドの屈折率までには届きませんが、ダイヤモンド以外の他の宝石と比べると、かなり大きな屈折率と言えます。ですから、CZをダイヤモンドのような形にすると、ダイヤモンドと同じような美しさが得られます。

地球の中の高い温度と高い圧力の下で生まれたダイヤモンドの原石は、八面体の形をしています。ピラミッドを二つ合わせた形をしています。この原石は美しく光るわけではありません。ラウンド・ブリリアント・カットの形にして、初めて白く光り輝く美しいダイヤモンドに生まれ変わります。
人類は地球から八面体の形をしたダイヤモンドの贈り物を受け取りました。そして長い時間と絶え間ない努力によって、私達はダイヤモンドを最高に美しく輝かせるラウンド・ブリリアント・カットの形に到達しました。