鮮烈な赤色を活かす「ステップ・カット」

ルビーの魅力は鮮烈な赤色にあります。無色透明なダイヤモンドでは、輝きが最重要です。しかし赤色のルビーでは、自身の赤色をより美しく見せることが最重要です。

ルビーにおけるカット(切断、研磨)の長い歴史を経て、創意工夫を経て、現在、一般にルビーはステップ・カットと呼ばれる形に仕上げられます。そのカットは右図の模試図の通りです。
右上図はステップ・カットを上から見た図です。右下図は側面から見た図です。階段状のファセット(平らな研磨面のこと)で構成されています。比較的単純な形です。

鮮烈な赤色を持っているルビーなら単純な形でも充分に美しく見えます。このことは赤色ガラスで確かめることができます。赤色ガラスなら低価格でいろいろな形を作成して、美しさの程度を確認することが可能です。
先ず初めに直方体(縦15ミリ×横7ミリ×高さ5ミリ程度)の赤色ガラスを作成しました。研磨された赤色の直方体は、単純な形ですが充分に美しく感じられます。存在感もあります。
次にこの直方体では、日常の使用を想定した場合、角(隅)が欠け易いために少し削る必要があります。さらに少しだけ反射による光の輝きを得るために底面の4方向にファセットを付けました。美しい赤色のイミテーション(模造石)が出来上がりました。
鮮烈な赤色で透明性が高いなら、単純な形、例えば直方体の形でも充分に美しさを引き出すことは可能です。このことは赤色ガラスの作成を通して確認できます。
この直方体を日常使用に耐えるように、さらに少しの光の反射が得られるように考えますと、右上図のようなステップ・カットの形にたどり着きます。
赤色のルビーの色を美しく見せるには、ステップ・カットの形が最も適合すると思われます。多くのカッター(研磨職人)の努力によって、この形に落ち着いたものと推測されます。
次に赤色のルビーをダイヤモンドのような形にカットしたら、どのように見えるのでしょうか? 美しく見えるのでしょうか? ルビーの特長である鮮烈な赤色をうまく引き出せるのでしょうか?
そこで、赤色のガラスでダイヤモンドに一般的に見られるラウンド・ブリリアント・カットの形を作成しました。結果はパビリオン部(ガードルから下の部分)に施されたファセット(平らな研磨面)からの反射光が赤色の美しさを低減させてしまいました。
やはりルビーの赤色を美しく見せるには、ステップ・カットの形が最適です。

スター効果を生み出す「カボッション・カット」

赤色のルビーに対しては、一般にステップ・カットが適用されます。しかし、特別な場合、ステップ・カットではなく、カボッション・カットと呼ばれる別なカットを適用する必要があります。

その特別な場合というのはスター効果(星彩効果)のことです。スター効果とは、上から宝石を見たとき、星のような6本の白い線が現れる現象のことです。スター効果を引き出すには、カボッション・カットが必要です。カボッションとは丸い山の形です。この山形によってルビーの表面に6本の白いスターが表出します。右図はスター・ルビーの模式図です。
カボッション・カットを施すと、すべてのルビーにスター効果が表れるわけではありません。特別な場合だけです。ルビーの中に細くて長い針状の結晶が平行に分布している場合にのみ、カボッション・カットを施せば、スター効果が現れます。
スター効果が現れるには、ルビーの中に細くて長い針状結晶が存在している必要があります。この針状結晶はルチルと呼ばれる鉱物です。スター効果は、髪の毛に現れる「天使の輪」とまったく同じ現象です。
真っ直ぐに整えられた髪の毛をよく見ると、髪の毛の直角方向に1本の白い光の帯が現れています。これが天使の輪です。
ルビーに見られるスター効果は、髪の毛の天使の輪と同じような現象です。
右図の縦の細い線はルチルの結晶を表しています。カボッション・カットにすると、その線に直角に1本の光の帯が現れます。この光の帯を光条(こうじょう)と言います。丸い山形にカーブしていると光条が現れます。
この図の例では、1本の光条ですからキャッツ・アイ効果です。スター効果は合計3方向に光条が見られる場合を言います。ルチルの結晶が3方向に分布していると、3方向に光条が現れます。6本スター効果です。

ルビーの原石は「六角柱」

百貨店や宝石店のショー・ケースに飾られて鮮やかな赤色を放つルビーは、どのような形の原石から切断、研磨されて造られているのでしょうか?

ルビーの原石の基本的な形は六角柱です。断面の形状は六角形で、その六角形が柱のように伸びています。伸びてはいますが、一般に短いです。右図はルビー原石の模式図です。
断面が六角形をしている宝石はルビーの他にサファイア、エメラルド、水晶などがあります。断面は同じ六角形でも、上下の端面の形は宝石の種類によって異なります。ルビーの場合は図のように平らな面ですが、水晶では六角錐のようにとがっています。
ルビーの原石は球体で産出することはありません。平らな面を持って産出します。断面は六角形をして柱状で産出します。なぜ六角形になるかは判りません。多分、ルビーを構成する酸化アルミニウムの配列が、六角形のときにもっとも安定するのだろう、と推測するぐらいしかできません。
地球は人類に鮮烈な赤色のルビーを提供して、私達の目を楽しませてくれています。さらにルビーの原石をながめると、地球が造ったその形に多くの人は驚き、不思議さを感じます。