スターを発現させる石の神秘

スター・ストーンの外観形状は、上から見るとほとんどが楕円です。ときには真円もあります。側面から見ると山形です。いわゆるカボッション・カットです。スター・ストーンを発現させるには必ずカボッション・カットにする必要があります。
スター・ストーンとしてよく知られている宝石は、スター・ルビーとスター・サファイアです。これらの宝石を上から見ると、6本の白く光る帯が見られます。夜空の星が光る状態に似ています。白く光る帯は光条(こうじょう)と呼ばれています。
スター・ストーンにはなぜ光条が発現するのでしょうか? なぜ6本の光条が発現するのでしょうか? その理由はスター・ストーンの内部のインクルージョン(内包物、異物)の形態(形の状態)に原因しています。

右の図はスターが発現する理由を説明するために描いた模式図です。最上段の左図は楕円形状の本体に水平方向にたくさんの細い針状のインクルージョンが平行に並んでいる状態を示しています。この石がカボッション・カットされると、最上段の右図に示したように垂直に白い光の帯が現れます。このような状態はキャッツ・アイに相当します。
次に第2番目の図の左図はインクルージョンが右下がりに平行に分布している状態を表しています。この石がカボッション・カットされると、第2番目の右図のように左下がりの光条が現れます。
さらに第3番目の図の左図はインクルージョンが左下がりに平行に分布している状態を表しています。この石がカボッション・カットされると、第3番目の右図のように右下がりの光条が現れます。
最後に第4番目の図の左図はインクルージョンが3方向に分布している状態を表しています。この石がカボッション・カットされると、第4番目の右図のように3方向に光条が発現します。いわゆる6本スターが発現します。

美し過ぎる合成スター・ストーン

スター・ルビーやスター・サファイアにおいて、スターを発現させるインクルージョンはルチルの結晶です。小さな細いルチルの結晶が本体の成長と共に伸長します。本体が六角柱状に規則的に成長することに合わせて、ルチルの結晶も60度の角度を保ちながら規則的に伸長して行きます。
現在、合成ルビーも合成サファイアも製造技術が確立され、比較的容易に製造できる時代です。合成スター・ルビーや合成スター・サファイアにおいても、スターが発現する原理原則が判明しているので、これらの合成石を造り出すことも比較的容易なことです。
ですから、合成スター・ルビーも合成スター・サファイアも市場で容易に廉価で入手することができます。ベルヌーイ法(合成石を造るひとつの方法、火炎溶融法とも呼ばれています)で造られた合成スター・ルビーや合成スター・サファイアは驚くほどの安い価格で販売されています。
天然スター・ルビーまたは天然スター・サファイアと合成スター・ルビーまたは合成スター・サファイアのスターの形態を比較すると、合成石のスターがより明確でシャープです。しかも本体の透明度性がより優れています。ですから、一目見る限りでは合成ルビーまたは合成サファイアは天然石よりも美しく魅力的です。

4本スターの黒い石

スター・ストーンといえば、スター・ルビーまたはスター・サファイアですが、市場では4本スターの形態を示す黒い石にしばしば出会います。しかもその4本のスターが90度に交差してなく、斜めに約107度(または83度)で交差している石が見られます。その石はスター・ダイオプサイドと呼ばれています。

右の写真はスター・ダイオプサイドです。本体は不透明な黒色です。白い光条が直角に交わっていません。
光条がはっきりしない場合はペンライトを当てると、より明確になります。
市販されているスター・ダイオプサイドの形状は上から見ると、楕円形が多いです。時に真円もあります。さらに超楕円(長軸が異常に長い)もあります。

単光源でのみ見られるスターもある

スターを観察するときは、単光源がより良いです。よりはっきり見えます。通常の部屋は多光源ですから、スター効果が少し落ちるかもしれません。この場合はペンライトを当てると、スターがはっきり見えるようになります。単光源とは光源がひとつのことです。多光源とは光源が複数個あることです。

右の写真はスター・ローズ・クォーツです。(写真出所:GemSelect)
この石のスターの形態は6本の光条が見られることです。外形はオーバル・カボッション・カットです。
ローズ・クォーツのスターは一般にぼんやりして明確でありません。ですから、単光源のペンライトを当てる必要があります。
また、ローズ・クォーツのスターは透過光でより明確になることが知られています。

この現象はダイ・アステ
リズムと呼ばれています。ほとんどのスターは上からの光ではっきり観察されます。この現象はダイ・アステリズムに対してエピ・アステリズムと呼ばれています。
スター・ストーンは宝石の中でも珍しい存在です。宝石に興味がある一部の方はキャッツ・アイ・ストーンと共にスター・ストーンも求めます。スター・ストーンに現れる6本の光条を眺めていると、大自然が創り出す不思議さを感じます。

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