タンザナイトの魅力を引き出すカッターの実力

タンザナイトの魅力は、外観において鮮やかな青色の中にチラチラと紫色が見え隠れするところにあります。ビジネス視点において、世界の中でタンザニアの一国しか採れない点、ブルー・サファイアと比較して安価である点などの特長が挙げられます。
原石からカット(切断、研磨)してタンザナイトの魅力を最大限に引き出すには、カッター(研磨工)の技量が問われます。ブルー・サファイアのように青色のみを前面に出すこともできます。あるいは青色の中にチラチラと紫色を出すこともできます。さらに紫色を強調することも可能です。カッターの工夫次第でタンザナイトの市場価格を最大限に上げることが可能です。

カッターは市場で高い評価を受ける色を引き出す必要があります。タンザナイトの発見当時は、青色を前面に出す傾向にありました。右図は理想的に成長したタンザナイトの原石の形状を示しています。さらに加熱処理された後に見られる色を表示しています。原石形状の方向によって色が変化します。
タンザナイトの発見当初は、ブルー・サファイアの外観の色に似せることに主眼がおかれていました。そこで、テーブル面(カットされた平らな広い正面)が右図の濃青色と表示された方向と一致するようにカットされていました。
その後、タンザナイトの特性を出す色、鮮やかな青色の中にチラチラと紫色が見え隠れするようなテーブル面が好まれるようになりました。そこで、テーブル面を右図の濃青色が現れる面と一致させないで、少し傾けて紫色がより現れるようにカットします。

オーバル形で価格評価を上げる

市場での価格評価を上げるには、色だけでなく、大きさも重要です。タンザナイトの原石は右上図のように柱状です。ですから、より大きく、よりカラット数を上げるにはオーバル(楕円形)形状やレクタンギュラー(長方形)形状が有利です。
市場の価格評価は色や大きさ、さらに透明度にも影響されます。テーブル面の真ん中に目立つインクルージョン(内包物、異物)があれば、評価は大きく低下します。ですから、タンザナイトの原石を手に取ったカッターは、入念に原石の内部を観察します。テーブル面から観察したとき、極力、インクルージョンが目立たないように配慮します。

さらにカット形状にも気を配らなければなりません。市場ではどのようなニーズがあるのか、顧客の今の好みはどのような形状なのか、マーケット・リサーチ(市場調査)も必要です。
市場で見られるカットされたタンザナイトの形状はいろいろです。最も多用されるカット・スタイルはオーバル・カットです。上から見たとき楕円形です。原石形状から判断して、オーバル形状はよりカラット数を上げることができると言えます。右の写真(写真出所:AJS-Gems)はオーバル形状のタンザナイトです。
市場で見られるタンザナイトの形状は、オーバル形状の他にラウンド(丸形)形状、レクタンギュラー(長方形)形状、トリリアント(三角形)形状などいろいろあります。

ジュエリーとしては扱いが難しい

タンザナイトのルース(裸石、貴金属にセッティングされる前の切断、研磨された石)は、オーバル形状などいろいろな形状にすることが可能です。
しかし、ルースを貴金属にセッティングして宝飾品に仕上げるには、特別な留意点があります。
その留意点は、タンザナイトが持っている特性の「比較的低い硬度」と「顕著な劈開(へきかい)」です。

タンザナイトの硬度は、モース硬度で表示すると6.5です。この6.5という数値は耐久性の視点から低いといえます。望ましい硬度は7以上です。数値の上では0.5小さいのですが、スリ傷がつきやすいのです。長期の使用でファセット面(平らな面)にスリ傷が発生したり、ファセット・ライン(ファセットとファセットが接する線)に小さな欠けが発生することがあります。
もうひとつの特性である「顕著な劈開」をタンザナイトは持っています。劈開とはある一定の力を加えると、特定の方向で割れ易い性質のことです。タンザナイトはこの劈開が顕著です。ですから、超音波洗浄機でタンザナイトを洗浄しないでください、と宝石販売店は注意を添えています。
タンザナイトは顕著な劈開を持っています。タンザナイトの原石は柱状に伸びた形状をしています。劈開が起こる方向はこの柱状に平行です。

扱いにくさを、デザイン力でカバー

タンザナイトは鮮やかな青色と潜んでいる紫色が魅力です。しかし、タンザナイトにはネガティブ(マイナス)特性もあります。欧米ではタンザナイトの魅力と共にタンザナイトのネガティブ特性も顧客に説明しています。今の時代は顧客に真実を伝えることが求められています。

タンザナイトは「比較的低い硬度」と「顕著な劈開」を持っています。ですから、タンザナイトの宝飾品メーカーは、オーナーや企画部門、デザイナー、彫金工も含めてデザイン処理でタンザナイトを保護する必要があります。
右の写真(写真出所:TJD)はトリリアント形状のリング(指輪)です。タンザナイトは充分に保護されています。貴金属やダイヤモンドで囲まれて保護されています。劈開を生じさせない配慮がされています。爪も比較的高くして、スリ傷が発生しにくい工夫がなされています。

欧米のある宝石学者は述べています。タンザナイトはドレスアップ用の宝石です、日常で使用する宝石ではありません、と言っています。この理由は、タンザナイトが持っている「比較的低い硬度」と「顕著な劈開」という特性に基づいています。
ひとつの考えですが、タンザナイトはリングよりもペンダント・トップやイアリングに適していると思われます。リングは大きな衝撃を受ける頻度が格段に高いと推測されます。ペンダント・トップやイアリングは大きな衝撃を受ける機会はほとんどないと思われます。
顧客にタンザナイトの取り扱いは注意してください、とお願いすることも大切です。しかし、その前にタンザナイトのリングを作る宝飾品メーカーは、タンザナイトの特性を熟知して、タンザナイトを衝撃から保護するデザイン処理に留意すべきです。