色は様々でも形は同じ

宝石に興味を持たれている人達の間では、トルマリンはよく知られた石です。特にパライバ・トルマリンという名前は、美しいネオン・ブルーの色を持つトルマリンとして有名です。このパライバ・トルマリンは1987年にブラジルで発見されました。
トルマリンはいろいろな色で産出することが知られています。赤色、ピンク色、黄色、緑色、青色、藍色、紫色と多彩です。宝石として人気の高いトルマリンの色は、鮮青色のパライバ・トルマリンが筆頭です。次は赤色、ピンク色です。
トルマリンは多彩な色で産出しますが、原石の形は共通しています。不思議な形で産出します。宝石が好きな方でも、宝石の原石を見る機会は比較的少ないと思われます。
トルマリンは自然の中で柱状に長く伸びます。真っ直ぐ長く成長します。

断面が三角形の柱状原石

柱状に長く伸びたトルマリンの原石について、その原石の断面を見ると、興味深い形をしています。右の写真は母岩(宝石の原石を囲む鉱物、岩石)と共に産出したパライバ・トルマリンの原石を示しています。柱状に長く伸びた鮮やかな青色をした原石です。周囲の白色部は母岩です。
このパライバ・トルマリンの断面を見ますと、多角形をしています。六角形をしています。そして長く柱状に伸びています。
トルマリンの原石の断面は基本的に三角形です。
この他に六角状三角形、曲線状三角形をして産出します。これらの断面形状を右下図に図形化しています。
トルマリンの原石は三角形が基本ですから、原石の判定は容易です。三角形をした原石はトルマリンです。

トルマリンの美しさ

トルマリンの原石をカット(切断、研磨)して宝石に仕上げる場合、重さ(カラット)に重点におくと、一般にエメラルドに見られるようなエメラルド・カット(別名、ステップ・カット)が施されます。同時にエメラルド・カットは色の美しさを最大に引き出します。
トルマリンの原石はなぜ三角形を示すのか、その理由は明確でありません。トルマリンを構成するいくつかの元素が、成長する際に三角形になると最も安定するからと推測されます。
基本形である三角形から六角状三角形、そして曲線状三角形に変化するのは、成長する時の環境(温度、圧力、融液濃度、時間)に影響されるものと思われます。
トルマリンの原石は、三角形の断面を保ちながら、長く長く伸びます。時に1メートル近くまで伸びます。

トルマライズド・クォーツ

トルマリンはしばしばクォーツ(石英)と共存して産出します。クォーツの中に三角形の断面をした細長い針状のトルマリンが多数見られます。右の写真は針状の黒色のトルマリンをたくさん内包したクォーツです。
この石はトルマライズド・クォーツまたはトルマリン・クォーツと呼ばれています。
このカットされた石を10倍のルーペで表面を観察すると、ある個所で小さな黒い三角形を見つけることができます。トルマリンの特徴ある三角形が見られます。トルマライズド・クォーツの中に見られるトルマリンの数、方向、大きさは、個々の石によって異なります。同じものはありません。

宝石や鉱物のコレクター(蒐集家)にとって、自身が持っているトルマライズド・クォーツは世界で唯一のもの、世界で同じものは無い、ということで大変貴重です。世界でひとつしかないという考えで、ダイヤモンドよりも価値があると思っておられる方もいます。
宝石の三条件として、美しさ、硬さ、希少性が挙げられます。コレクターにとっては美しさよりも希少性に価値を見い出す方が多いかもしれません。

不思議な魅力「ウォーター・メロン」

トルマリンは時に不思議な形と色を伴って産出します。中心部が赤色で、周囲が緑色で産出します。
このトルマリンはウォーター・メロンと呼ばれています。日本語ではスイカです。右の画像はこのウォーター・メロンを模式的に表したものです。
このウォーター・メロンの原石を薄板状に切り出し、両面のみを研磨してペンダント・トップやイアリングにされる方もいます。産出した自然のままを活かした使い方です。
中心部の赤色の発色は、マンガン元素に原因しています。周囲の6色の右発色は、クロム元素に原因しています。ウォーター・メロンが地球の内部で成長する過程をたどると、成長する周りの環境が大きく変化したことが推測されます。
当初、マンガン元素を含む環境から、数千年あるいは数万年を経て、クロム元素を含む環境に変化したことが想像されます。

地球が創り上げた三角形のトルマリン

トルマリンの原石の断面は基本的に三角形です。特徴的な形をしているので識別が容易です。例えば、赤色のトルマリンであるルベライト、赤色のルビー、赤色のスピネルなどの原石が混在している場合、断面が三角形の原石を取り上げれば、その原石はトルマリンです。ルビーの原石の断面は六角形です。スピネルの原石は八面体(ピラミッドを二つ合わせた形)です。
多くの宝石の原石は特徴ある形をしています。特にトルマリンの原石の断面は三角形という珍しい形です。数十億年の年齢を持つ私達の地球は、千年あるいは万年という長い時間をかけて、三角形の形状をしたトルマリンを創り上げてきました。