様々な宝石をマイペースにご紹介していますが、今回はまたまた珍しいレア宝石をご紹介したいと思います。美人は三日で飽きると言いますが、レアストーンは何度見ても決して飽きることがないロマンが詰まっているもの。

さあ今日はクリノヒューマイトというヒューマノイド……ではなく宝石をご紹介したいと思います。さあ、果たしてミステリアスなその石の正体はいかに!?

クリノヒューマイトって何?気になるその特徴から産地、価値を徹底検証

鉱物マニアでもなかなかお目にかかれない、もしくはその存在に気づいていないそんな宝石がクリノヒューマイト。
ここではクリノヒューマイトはいったいどんな宝石なのか、そんな基本情報をまとめていきたいと思います。

1980年代に発見!ギラギラオレンジに輝くその秘密とは

ケイ酸マグネシウムを主成分とするヒューマイトに属する鉱物の一つがクリノヒューマイトです。その不可思議なネーミングは、ヒューマイト族を発見したアブラハム・ヒュームに起因します。
クリノヒューマイトは19世紀からその存在自体は知られていましたが、一つの宝石としてではなく、あくまで他鉱物に含有するインクルージョンとしてでした。
発見された当初はライムストーン中にある含有物の一つであったということが分かっており、基本的に小さな細かい粒状で産出される場合がほとんど。
目視できる宝石質のクリノヒューマイトが発見されたのは1980年代。今から約30年ほど前なので、比較的発見の新しい宝石と言えるでしょう。
驚くべきそのルックスはまるで柑橘系を思わせる深いオレンジ色が特徴です。透明度が高いものはファセットカットを施すことで、目が眩むような輝きを見せるようになります。

クリノヒューマイトは限られた地域のみで産出され、マニア垂涎のコレクターアイテムとして、昔から一定数の収集家によって集められてきました。彼らの厳しい目にも叶う質のクリノヒューマイトは、タジキスタンやタンザニア産などが最上質のものです。
なおクリノヒューマイトはレアストーンばかりをかき集めたうちでも、両手の指で数えられるくらいのレア度を誇る正真正銘のレアストーンとして知られています。

クリノヒューマイトは超レア!ルース価格も非常に高騰中

クリノヒューマイトはその色合いからヘソナイトやスペサルタイトガーネットと類似し、しばし混同されます。勿論これらのガーネットグループとは比較にならない珍しさから、非常に高値で取引されるのは言うまでもありません。

価値を左右する要因として、インクルージョンはそこまで関係しませんが、何より透明度が高いこと、その強い色合いが挙げられます。勿論カラット数が大きいことも価値を底上げする要素になりますが、そもそも高カラットのクリノヒューマイトはほとんど産出されません。

そのほとんどが0.5カラットから1カラット程度のルースが多く、それでも1万~5万円程度で取引されます。それ以上の大粒カラットのクリノヒューマイトは数十万円以上の価格でジェムフェアーやオンラインで販売されています。

なおその色合いを強める加熱処理等は基本行われていないということも覚えておきましょう。

クリノヒューマイトがジュエリーとして加工されない理由とは?

レア宝石であったとしても、そのいくつかはジュエリーとしてセッティングされることも少なくありません。しかしクリノヒューマイトがジュエリーとして使われることは非常に限局的です。
モース硬度自体は約6程度で、石留め師を各段悩ますことなくセッティング可能な硬度にも関わらずクリノヒューマイトジュエリーを見かけないその訳、それはもはや一言。

宝石品質のクリノヒューマイトがレア過ぎるからです。

その為、この日の目をあまり見ることがない宝石をジュエリーとして楽しむには、輝きの強い存在感抜群の品質の宝石を購入し、カスタムメイドでジュエリーとして魂を吹き込むことが唯一の方法。
まるで太陽神アポロを想像させるようなゴールデンカラーをジュエリーとして楽しめたら素晴らしいですが、その産出量からも現段階ではコレクターアイテムの域を超えないのが現実なのです。

クリノヒューマイト、その姉妹宝石コンドロダイトってどんな石?

クリノヒューマイトを語る上で、よく同じ土俵で話題になるのがコンドロダイトという宝石です。ここでは両者の違いについて紐解いてみたいと思うので、こちらも要チェックです!

クリノヒューマイトとコンドロダイト、鉱物学的なその違いについて

コンドロダイトとクリノヒューマイトが似ていると言われる要因は、つまるところ同じヒューマイト族に属しているからです。似たような色合いでも多くの種類に分かれるガーネットを、想像して頂ければわかりやすいかもしれませんね!

なおヒューマイト族はそのマグネシウムの含有量によって、クリノヒューマイト、コンドロダイト、ノルベルジャイト、ヒューマイトに分類することができます。

コンドロダイト自体も同様にクリアなガラス質であり、赤から黄色の澄んだ色合いを見せるレア宝石です。アフガニスタンやタジキスタンなどで産出しますが、カナリアイエローの高品質のものは非常に高額でありクリノヒューマイト以上に珍しいことで知られています。

黄金色を示すことが多いヒューマイト族の中でも、特にクリノヒューマイトとコンドロダイトは見分けがつきにくく、スピネルとルビーと同様に宝石学に精通していなければ混同してしまうことも少なくありません。

まとめ

夏が過ぎ去り、秋のかほりが漂う季節に身につけたくなる、そんなビビッドなゴールデンカラーのクリノヒューマイト。あまりの珍しさにジュエリーはおろか、その存在にすら気づいていない方も少なくありません。
新しい宝石であること、レア中のレアであることから、神秘的な結びつきに言及することは難しいですが、一説によると内なるエネルギーを活性化すると信じられているそう……。

なかなか手にすることが難しいレアストーンではありますが、毎日に忙殺され気力が出ないという方には、素敵な鉱物学的ビタミン剤になってくれるかもしれませんね!

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