美術館や会社のエントランスなどで、存在感を放ち鎮座するアメジストの晶洞。勿論宝飾品としても定番、カジュアルなアクセサリーや数珠状ブレスレットとしても人気のアメジストですが、皆さんは桜色のアメジストがあるのをご存知でしょうか?

今回は高貴な紫ではなく、薄いピンク色をしたピンクアメジストの正体を皆さんと一緒に考察していきたいと思います。

ピンクアメジストって何?話題の桜色が美しいクォーツの秘密

当たり前にアメジストは紫、またはディープブルーを呈するのが常。決して珍しい石ではありませんが、その色合いには幅があり赤~青まで様々な色合いを見せてくれます。

ここ数年でジワジワと話題になってきているピンク色のアメジストの正体についてメスを入れていきましょう。

2017年頃発掘された新しいアメジスト

アメジストは二酸化ケイ素が主となり結晶化したもので、その含有する元素の違いで、様々な色合いを見せ、同じ鉱物種のクォーツにはシトリン、ロッククリスタル、タイガーアイなどです。

その中でもアメジストは世界各地で採掘されるクォーツですが、ピンクアメジストは2017年にアルゼンチンのパタゴニアのEl Choique鉱山で発見された新しい鉱物と言われてきました。

バイヤーによってはヘマタイトクォーツなど異なる商業ネームで呼ばれることもありますが、実際ピンクアメジストというものは存在しないというのが定説です。件のアルゼンチンで発見されたのはそのサーモンピンクの色合いから、ロードクロサイトと混同されてきました。

ただその結晶構造は基本的にクォーツそのものなので、ロードクロサイトではなくアメジストであること、そしてその色合いを考慮しピンクアメジストというフォールスネームが付けられたと考えられます。

このアメジストの色合いは、ペールライラック、ライラック、ピーチピンクなどで、そのトーンはかなり幅があります。比較的小さな晶洞を形成していることが多く、中にはカルサイトの結晶と共存しているものが少なくありません。

まだ発見されてから時間が経っていないことも考えられますが、ピンクアメジストは宝飾品業界ではあまり加工されない種のクォーツです。通常はヒーリングアイテムのようながま状のもの、またはカボション状にカットしたブレスレット、ファンシーカットを施した特殊ルースで楽しむ方が多いようです。

なお気になるその価値についてですが、その殆どが原石で提供されており、ジェムショーなどでも1万から数万円程度で晶洞の原石が購入可能です。

ピンクアメジストはなぜピンク色を呈するのか?

なかなかセクシーな色合いを持つピンクアメジストですが、ここで気になるのがなぜピンクなのか!ということ。

まずアメジストの紫色はケイ素の一部が鉄イオンと入れ替わり、そこに天然の放射線の影響を受けることが原因です。しかしピンク色のアメジストの場合はインクルージョンとしてヘマタイト(赤鉄鉱)を含んでいることがピンク色を呈する原因だと言われています。

それらの細かなインクルージョンがどれだけの割合で含まれているかによって、薄いピンク色であったり、または紫がかったピンクであったりと、その色合いに幅を持たせているのです。

なおアメジストは加熱または放射線処理を施すことで、緑、黄色、白などに色を変化させることが可能ですが、人為処理をしてもピンク色に変色させることはできません。

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ピンクアメジストとローズクォーツ、両者は何が異なる?

気になるのがピンクアメジストとローズクォーツの違いについてです。両者とも繊細で美しいバラ色のようなピンクを見せてくれるクォーツであることには間違いありません。

ここではそんなピンクアメジストとローズクォーツの違いについて解説していきたいと思います。

ピンクアメジストとローズクォーツは異なる宝石である!

ピンク色のクォーツは比較的産出量が少なく、ピンクアメジストもローズクォーツも珍しい部類の石英であることには変わりませんが、両者は全く別の鉱物であることを認識しなければなりません。

まず色合いとしてローズクォーツの場合はよりミルキーで濁る傾向があり、見た目の色合いはほぼペールピンク。つまりローズクォーツの場合はそこに二価、三価のチタンイオンの電荷の移動が原因で、しばしルチルが多量に含まれることでスター効果が表れるものも少なくありません。

一方ピンクアメジストの場合は、前述のように多量のヘマタイトを結晶中に含んでおり、バイオレットピンクから濃いピンクまで様々なパターンのピンク色を見せてくれます。

このように似て非なる両者は、色合いだけでなく化学的構造からも全く頃なるアプローチで桜色を私達に見せてくれているのです。

前述でピンクアメジストはあまりジュエリーには加工されないと言及しましたが、それはヘマタイトが含有したアメジストにジェムクオリティーのものが少ないからと言えます。

またピンク色のアメジストと混同される宝石として、ヴェルヌーイ法で製造されたピンク色のコランダムが挙げられます。こちらはフランスでRosa de Franciaと言うフォールスネームが付けられ、特にスペイン、フランスなどで多くのアクセサリーに加工されている人工宝石です。

また、Jacinto de Compostela (暗褐色の水晶)と呼ばれる鉄が多量に内包するクォーツも特徴的なピンクレッド、赤色を呈しますが、通常ジュエリーには加工されず玄人向きの収集アイテムとして知られています。

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まとめ

今回は最近話題になることが多いピンク色のアメジストについて解説してみました。

ヘマタイトが結晶内部に内包することが直接的な原因になるピンク色のアメジストですが、基本的にピンクアメジストという宝石は存在せず、あくまでアメジストのカラーバリエーションの一つと考えられます。

ただしロードクロサイトを思わせる淡いピンク色の可憐さがゆえに、最近は宝石愛好家にジワジワ人気が出ている宝石です。そのレア度の割には比較的低価格帯で原石を購入できるので、気になる方はぜひオンラインやジェムショーなどで手に取ってみることをおすすめいたします。

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