サンゴの色別分類

多くの人にとって、サンゴの色のイメージは赤色です。確かにサンゴと言えば、赤色のイメージが強いです。しかし、サンゴの色は赤色以外もあります。一般的に外観の色によってサンゴの見分け方は次のように分類されています。
(1)血赤サンゴ:血のような濃い赤色です。
(2)赤サンゴ :一般的な赤色をさします。
(3)紅サンゴ :オレンジ色味を帯びた赤色です。
(4)桃サンゴ :ピンク色から桃色です。
(5)白サンゴ :純白でなく、黄色味を帯びた白色です。
(6)黒サンゴ :研磨すると、ツヤのある黒色を示します。
血赤サンゴから白サンゴまで本体は炭酸カルシウムで構成されています。本体は無機物です。ところが、黒サンゴの本体はタンパク質で構成されており、有機物です。ですから、黒サンゴは他のサンゴと大きく異なります。

サンゴ虫

サンゴを造り出しているのは、生物であるサンゴ虫(英語ではコーラル・ポリプ)です。サンゴ虫は直径が1ミリほどの円盤状で8本の触手を持っています。外観はイソギンチャクの超小型版といった感じです。
海底に生息し、海中のプランクトンなどを栄養源にしています。そして海中のカルシウムイオンと重炭酸イオンを摂り込んで、炭酸カルシウムを造り出します。この炭酸カルシウムが長い年月を経て積層され、樹木状のサンゴの原木となります。
また赤サンゴを造り出すサンゴ虫は、海水中からカロテノイド(カンタキサンチン)摂り込んで赤色に発色させます。
黒サンゴを造り出すサンゴ虫は、直径が数百ミクロンの円盤状で6本の触手を持っています。黒サンゴの黒色の発色はメラミン色素と推測されています。

サンゴの成長速度

サンゴの成長は極めてゆっくりです。ある研究によると、伸長方向の直角断面において、半径の成長速度は1年間に0.15ミリと報告されています。
太さが直径1.5センチほどの原木について、この大きさになるまでには約50年かかると推測されます。私達が宝石として使用しているサンゴは、海底で長い年月を要して生育したものです。非常に貴重なものです。
多くの人に知られているサンゴ礁のサンゴは、より成長速度が速いです。1年間に10ミリほどと言われています。黒サンゴは1年間に数ミリ程度の成長速度と推測されています。

サンゴの白色平行線

サンゴのルースの形は、一般にオーバル・カボッションが多いです。ルーペ(10倍)でルースの表面を観察すると、長手方向に平行に白い線がたくさん見られます。
白色平行線と呼ばれるこの線は、サンゴに見られる特徴的なものです。本物のサンゴと偽物の模造品を識別するとき、この線を検出することで判定できます。
例えば赤サンゴについて、市場にプラスチックやガラスの模造品がたくさん出回っています。外観が本物のサンゴにそっくりです。
本物と偽物を識別する簡易方法として、裏面を観察することが挙げられます。本物のサンゴではしばしば裏面に白い個所(フ)や窪み(虫食い)が見られます。
原木からルースにカットするとき、目立つ白い個所や窪みは裏面に隠れるように処理されます。サンゴの裏面から、本物と偽物を識別するための情報が得られます。
本物と偽物を決定的に識別するには、本物だけに見られる白色平行線を検出することです。この線はルーペでサンゴの表面を観察すれば、簡単に検出できるわけではありません。少し工夫が必要で、サンゴを前後左右に少し傾けて観察する必要があります。
例えば、赤サンゴの場合、白色平行線は赤色の中に埋没して目立ちません。注意深く観察する必要があります。

バイオミネラリゼーション

生物による鉱物形成作用はバイオミネラリゼーションと呼ばれています。宝石の代表的な例は真珠とサンゴです。真珠は真珠貝(アコヤ貝、白蝶貝など)から生まれます。
養殖真珠の場合、中心部の核(球状の貝殻)の表面にアラゴナイト(炭酸カルシウム、鉱物)が形成されます。この結晶の1枚1枚は極めて薄く、光が当たると干渉色(ピンク色など)が発生し、美しい真珠光沢となります。
極薄のアラゴナイト結晶の積層体は、生物でしか造ることができないものです。同じくサンゴはサンゴ虫と呼ばれる生物がカルサイト(炭酸カルシウム、鉱物)の骨片(数十ミクロン程度の大きさ)を造り、長い年月を経て積層され、樹木状の原木となったものです。真珠もサンゴも生物(バイオ)が造り出した鉱物(ミネラル)です。

胡渡り珊瑚

日本で初めてサンゴが採取されたのは、江戸末期から明治初期の高知県沖でした。この時期以前では、地中海で採取されたサンゴが使われていました。
地中海サンゴは「胡の国」を経由して輸入されていました。胡の国とはペルシャ(現在のイラン)のことです。それゆえ、古くからサンゴは胡渡り珊瑚(こわたりさんご)と呼ばれていました。
サンゴの採取海域の特定は、サンゴに含まれている微量成分を分析すれば可能であるとされています。サンゴ中のMg/CaとBa/Caの比を横軸と縦軸にプロット(分布)させると、海域毎に分かれ、地中海サンゴであることが推測可能です。

エンジェル・スキン

サンゴの色について、血赤が最も高い評価を受けていますが、欧米ではエンジェル・スキンとよばれている白色基調のピンク色のサンゴに人気があります。
エンジェル・スキンを直訳すると、天使の肌という意味になり、天使のような美しい肌色をしたピンク色のサンゴが欧米では好まれるようです。

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