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アクセサリーとして使いたいフローライト
フローライトは多彩な色(紫色やオレンジ色、黄色など)を持つポジティブ特性が魅力ですが、低硬度や低耐衝撃性というネガティブ特性も併せ持っています。このネガティブ特性と希少性(希少性に劣る)の視点からフローライトはジュエリーとして使用されるよりもアクセサリーとして多用されています。
フローライトをアクセサリーとして使用する場合、プロデューサー(企画者、推進者)やデザイナーは事前にフローライトの特性、本質を把握しておく必要があります。ユーザー(顧客)に取り扱いの注意をお願いするよりも、製造者側が充分に検討して使用時の破損を避ける工夫、対策を行っておくべきだと思われます。
フローライトの三層特性図
そこで、フローライトを深堀し本質を探ってみます。本質を探るときは、三層特性図を利用すると判り易いです。
右図は三層特性図を示しています。三層特性図は本質特性、 固有特性、表面特性の三層で構成されています。まず、本質特性の中の項目を見ると、組成はCaF2という単純な元素記号で表示されます。Caはカルシウム、Fはフッ素です。もうひとつの項目は結晶系と表示されています。この結晶系について、すべての宝石は結晶系という考えで7つに分類されます。

結晶系について詳しく
結晶系は原石の形や結晶を構成している原子の配列から考えられた概念です。宝石はオパールなどを除いてほとんどが結晶です。
宝石を結晶系で分類すると、次のような7種類となります。①立方晶系、②正方晶系、③直方晶系、④六方晶系、⑤三方晶系、⑥斜方晶系、⑦三斜晶系です。 すべての宝石はこれらの7晶系のいずれかに属します。すべての宝石について研究が行われ、7晶系のどれに属するか、ということが既に判明しています。 私達は宝石がどの晶系に属するかを知ることで、その宝石のおよその特性を把握することができます。
立方晶系ゆえの特徴
フローライトは立方晶系に属します。そこで、固有特性の中の項目を見ると、低面数結晶という言葉があります。これは結晶の面が少ないということです。フローライトの原石の形を観察すると、立方体や八面体の形であることが判ります。立方体は6面で、八面体は8面を持っています。フローライトの産出状況は、八面体よりも立方体で産出することが多いと言われています。
立方体や八面体をしたフローライトの原石をカットしないで、このまま利用するデザイナーの方もいます。原石の魅力をユーザーに訴求するデザイナーの方もいます。確かに原石に魅力を感じるユーザーの方は一定数居られるますので、ビジネスとして成立するものと推測されます。
多彩な発色は不純物を含むことと結晶の欠損による
固有特性の中をさらに見ると、不純物含有とカラー・センターという項目があります。この二つの項目は発色原因に関することです。フローライトが多彩な色を持つ原因はこの2項目と考えられています。不純物を含むことで宝石が発色して例は多いです。例えば、ルビーの本体はコランダムと呼ばれている鉱物で、不純物が無い場合は無色透明です。ところが、微量のクロム元素(Cr)を含有すると、赤色に発色します。コランダムが微量の鉄元素(Fe)とチタン元素(Ti)を含有すると、青色に発色し、ブルー・サファイアとなります。 フローライトの場合、不純物はマンガン元素(Mn)やイットリウム元素(Y)、ジルコニウム元素(Zr)などです。これらを微量に含みますと、それぞれ黄色と紫色、赤色などに発色します。
カラー・センターは結晶格子の一部の欠損です。欠損すると、光が吸収されて発色することになります。
劈開が強く硬度が低め
固有特性の中に劈開と低硬度という項目があります。この2項目はフローライトのネガティブ特性に結び付いています。フローライトの劈開は強い、完全と表現されます。この劈開という特性によって、フローライトは外部から一定以上の衝撃を受けると、比較的容易に破損に至ることになります。フローライトの硬度(モース硬度)は4です。この硬度では、日常使用を続けると、石の表面にスリ傷が発生しやすいと言えます。宝石が日常使用に耐えるには、硬度が7以上必要と推測されています。
宝石にスリ傷が発生したり、破損に至る要因は硬度や劈開だけではありません。どのような種類、状態に仕上げられているかに大きく影響されます。
フローライトの特性を活かすデザイナーの技
フローライトがリング(指輪)に仕上げられていると、日常使用で比較的大きな衝撃を受ける機会が高いといえます。ペンダント・トップやイアリングに加工されたフローライトは衝撃を受けにくいといえます。リングとペンダント・トップ、イアリングについて、日常使用で受ける衝撃の程度を比較したデータはありませんが、大きな差があるもと推測されます。
フローライトをどうしてもリングとして使用したい場合、金属素材(貴金属、その他の金属)で保護する工夫が必要です。保護する工夫とユーザーに好まれる形状に仕上げることがデザイナーに求められます。
フローライトは多彩色というポジティブ特性と低硬度、強劈開というネガティブ特性を併せ持つ石です。フローライトの特性を把握して、商品開発をすべき石といえます。