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青紫系の宝石と比較されるアイオライト
アイオライトは多くの人にあまり知られていない宝石ですが、ブルー・サファイアやタンザナイトに外観が似ていることから、そして手頃な価格であることから少しずつ注目されています。
（写真出所：ＧＩＡ）
また紫色が優位なアイオライトはアメシストにも似ています。
ブルー・サファイアとは多色性で見分ける
先ず、アイオライトとブルー・サファイアの鑑別について、外観の色を比較すると青色の鮮やかさに違いが見られます。やはりブルー・サファイアは鮮青色が最大の魅力です。
一方、アイオライトの青色は少し黒色味を帯びています。鮮やかさに欠けます。アイオライトの青色発色の原因は鉄元素です。鉄元素が単独では黒色味の青色になります。
しかし、アイオライトは鉄元素の他にチタン元素を含むこともあります。この場合のアイオライトは青色がより鮮やかになり、ブルー・サファイアの青色に近くなります。
アイオライトとブルー・サファイアをより明確に識別するには、多色性を観察する必要があります。多色性とは、宝石の方向を変えて観察すると、異なる色が見られる現象のことです。宝石の種類によって多色性の色は異なります。また、宝石の種類によって多色性の強弱が異なります。
多色性は二色性と三色性に分けられます。アイオライトは三色性です。方向を変えて観察すると、三色が見られます。紫青色と青色と淡黄色です。ブルー・サファイアは二色性です。方向を変えて観察すると、二色が見られます。青色と黄青色（または緑青色）です。
肉眼または１０倍のルーペで多色性を調べるには、宝石の側面、ガードルから観察します。ファセット（平らな研磨面）に現れる色を注意深く観察します。その後、方向を変えてファセツトに現れる色を観察します。
多色性には強弱があります。多色性の強弱とは、異なる色の発現がはっきりしているか、余りはっきりしていなかをいいます。強弱は３段階に分けられます。「強」と「明瞭」と「弱」です。アイオライトもブルー・サファイアも「強」に分類されています。
ですから、両石の多色性は比較的容易に検出できます。特にアイオライトを側面から観察すると、容易に淡黄色が見られます。淡黄色が見られたら、アイオライトと判定できます。
アイオライトとブルー・サファイアを鑑別する場合、両石の多色性の差異で鑑別が可能です。石の側面から観察したとき、アイオライトでは淡黄色が見られ、ブルー・サファイアでは黄青色または緑青色が見られます。このように両石は異なる多色性を示しますので、比較的簡単に両石を識別できます。
二色鏡の使い方
直径は約１５ミリ、長さ約５０ミリの丸い筒型です。宝石にこの二色鏡を近付けて、片側の窓から中をのぞくと、二つの正方形の窓が見えます。多色性の宝石ではこの二つの窓の色が異なります。
例えば、アイオライトを二色鏡で観察すると、二つの窓の色は紫青色と淡黄色が見られます。そこで、この宝石はアイオライトであると判定できます。ブルー・サファイアを二色鏡で観察すると、青色と黄青色（または緑青色）が見られます。
二色鏡は携帯可能な便利な鑑別機器です。ガラスの鑑別にも有効です。ガラスの場合、二色鏡で観察すると、二つの窓の色は同じに見えます。例えば、青色ガラスを二色鏡で観察すると、二つの窓は同じ青色に見えます。
タンザナイトとはペンライトで見分ける
次にアイオライトとタンザナイトの鑑別について、最初はペンライト（豆球、白熱）を使うと便利です。アイオライトとタンザナイトを白い紙の上に置いて、上からペンライトを当てると、アイオライトは本体の色（ボディ・カラー）のままで変化はありません。
一方、タンザナイトは紫色が強く出てきます。ボディ・カラーの中に紫色が出てきます。タンザナイトの発色原因であるバナジウム（Ｖ）が、赤色側が優勢なペンライトに反応していると思われます。
次に１０倍のルーペまたは肉眼で側面（ガードル側）から色を観察します。アイオライトは特徴的な淡黄色（または無色）が見られます。
一方、タンザナイトを側面から観察すると、淡青色または青紫色が見られます。タンザナイトには淡黄色が見られません。この淡黄色の有無で両石を識別できます。
そして二色鏡を使うと、あえて側面から観察しないでも、テーブル面（正面）からでも識別できます。アイオライトのテーブル面を二色鏡で観察すると、淡黄色と青色が見られます。淡黄色が見られることでアイオライトと判定できます。一方、タンザナイトのテーブル面を二色鏡で観察すると、紫色と青色が見られます。タンザナイトでは紫色が特徴です。
アイオライトは多色性の違いでさまざま石と見分ける事が可能
次に紫色が強く現れたアイオライトとアメシストの鑑別について、アイオライトの強い多色性を利用することで両石を識別できます。アイオライトを側面から観察すると、淡黄色が見られます。アメシストには淡黄色は見られません。また、アメシスト自身の多色性は「弱」ですから、肉眼や１０倍ルーペで多色性（アメシストは二色性）を検出することは困難です。二色鏡を使うと、アメシストの二色性を検出できます。
外観が青色のガラス製イミテーション（模造石）が流通しています。ガラスには多色性がありません。ですから方向を変えて色を観察しても、色は変化しません。青色のガラスに淡黄色が現れることはありません。二色鏡を使って青色ガラスを観察しても、二色鏡の二つの窓に現れる色は同じ青色です。
アイオライトの鑑別には多色性の観察が有効です。アイオライトを側面から観察すると、淡黄色が見られます。この淡黄色を検出することが、アイオライトを鑑別する場合のポイントになります。