何度も言います、ジルコンはキュービック・ジルコニアとは別物です

ジルコンは少々誤解を受けている宝石です。ジルコンはキュービック・ジルコニアの別名である、と誤解をされている人もかなり多いです。ジルコンは天然産の宝石です。一方、キュービック・ジルコニアは人が造り出した人造石です。
人造石とは、自然界に存在しない石で、人が新たに造り出したものです。キュービック・ジルコニアはダイヤモンドの模造石として広く知られています。
ジルコンは古くから宝石として扱われて来ました。しかし、最近ではキュービック・ジルコニアの登場によって、ジルコンという名前は片隅に追いやられた感じです。
市場に流通しているジルコンの色は主に2種類です。ひとつは青色のブルー・ジルコンであり、他のひとつは無色のカラーレス・ジルコンです。
ジルコンの最大の特長は輝きにあります。ジルコンは以前から、外観がダイヤモンドに似ている、と言われて来ました。
確かにラウンド・ブリリアント・カットのブルー・ジルコンやカラーレス・ジルコンを上から見ると、光り輝く度合いは強いです。

強い輝きとダブリングの存在がジルコンを特定する

ジルコンを鑑別する場合、この輝きの強さはひとつの判断材料です。この輝きの他にジルコンには鑑別を決定付ける特性があります。それはダブリングです。
ダブリングとは、10倍のルーペでルース(裸石)のテーブル(正面の平らな広い研磨面のこと)から裏側のファセット(平らな研磨面)の線を観察したとき、線が二重に見える現象をいいます。
ジルコンのダブリングは、その他の宝石と比較してかなり強い(大きい)です。ですから、少し宝石の観察に慣れてくると、10倍のルーペでジルコンのダブリングを比較的簡単に見い出すことができます。
強い輝きと強いダブリングの確認によって、今、手に取っている宝石はほとんどジルコンと判定してもよいと思われます。
ダブリングを確認する場合、少し工夫も要ります。ジルコンをテーブルから観察するとき、左手でつかんでいるジルコンを少し傾けると、ダブリングが容易に見えることもあります。

右図はブリリアント・カットされたジルコンのダブリングを観察したとき、ダブリングの状態を模式的に表示したものです。
テーブルから観察して、裏側のファセットに見られるダブリングを示しています。すべての線が同時に二重に見えるわけではなく、部分的に二重に見えます。

ダブリングは、小粒の石よりも大粒の石の方が容易に観察できます。ジルコンはダブリングを観察し易い代表的な宝石です。ですから、ダブリングを観察してジルコンと他の宝石、模造石との識別ができます。
ジルコン以外の他の宝石や模造石のダブリングについて、ダブリングが弱い(小さい)からダブリングがないものまで多様です。下の表は青色と無色について、外観がジルコンと似ている宝石や模造石のダブリングの強弱の数値を示したものです。

ブルー・ジルコンとカラーレス・ジルコンを他の石と見分ける

ダブリングの強弱は、正式には表に示されているように複屈折量と呼ばれています。
この複屈折量の数値が大きいほどダブリングが強いです。例えば、ブルー・ジルコンの数値は0.059です。他の宝石、ブルー・トパーズやアクアマリンと比較すると、かなり大きい数値です。
小数点第2位あるいは第3位の数値の違いですが、この違いがダブリングの強弱に大きな違いを生じさせるのです。
ブルー・ジルコンに外観が似ているブルー・トパーズについて、複屈折量は0.008です。この数値になると、ダブリングを検知することは容易でありません。見えないわけではありませんが、相当な熟練の眼が必要です。
その他のアクアマリン、ブルー・サファイアも同様です。

ブルー・ガラスの複屈折量の数値はゼロです。ダブリングは存在しないということになります。ですから、ダブリングがまったくない場合はガラスの疑いが濃いです。

次に無色について、カラーレス・ジルコンもブルー・ジルコンと同じく複屈折量は0.059です。ダブリングの存在は明瞭です。ですから、カラーレス・ジルコンと無色の他の宝石、模造石と鑑別は比較的簡単にできます。
例えば、ダイヤモンドの複屈折量はゼロです。ダブリングは見られません。同じくキュービック・ジルコニアの複屈折量もゼロです。同様にダブリングは存在しません。
カラーレス・クォーツ(無色透明水晶)の複屈折量は0.009です。注意深く観察すると、ダブリングを見つけることができます。石の方向を変えて、根気強く観察することが大切です。
カラーレス・ガラスの複屈折量はゼロです。ですから、ダブリングは存在しません。ガラスであることを看破するには、ダブリングの他に泡(気泡)や脈理を観察すると判定の手助けとなります。脈理とは、コップの中の水に蜂蜜を流し入れて、かき混ぜるとモヤモヤとした状態になります。このような状態をガラスの脈理といいます。
流通しているジルコンの色の多くは、ブルー(青色)とカラーレス(無色)です。しかし、ブラウン(褐色)なども見られます。ブラウン・ジルコンと他の類似石との鑑別もダブリングを検出することで可能です。

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