工業用素材として研究開発されていた

ダイヤモンドの類似石としてキュービック・ジルコニアが市場に大量に出回っています。シルバー(銀)製品やアクセサリー製品にもたくさん使われています。
その理由は、比較的安価で、外観がダイヤモンドに極めて似ているからです。ロシアで初めてキュービック・ジルコニアの生産に成功してから、世界の多くの国(スイス、アメリカ、中国など)で生産されるようになりました。
キュービック・ジルコニアの前に付いているキュービックとは、何を意味しているのでしょうか? また、ジルコニアとは何でしょうか?
元々、キュービック・ジルコニアは、ダイヤモンドの類似石として開発されたものでなく、工業用として耐高温性、高強度、高靭性の特性が期待されたからです。

しかし、大きな問題を抱えていました。純粋のジルコニアは常温では単斜晶系で、高温では立方晶系に転移し、常温と高温が繰り返されると、破損してしまいます。工業用として使用できませんでした。
単斜晶系
立方晶系

そこで、ジルコニアを製造するときにカルシウム(Ca)またはイットリウム(Y)を添加しました。すると、常温でも立方晶系になり、転移が起こらなくなり、破損もしなくなりました。
立方晶系は英語で、キュービック・システムと言います。
本来のジルコニアと違う新しいジルコニアという意味でキュ-ビックを頭に付けることにしました。
このような経過でキュービック・ジルコニアは工業用素材として、刃物(包丁など)、耐火物、酸素センサー、インプラントなどに利用されるようになりました。

後にダイヤモンドの類似石として市場に流通

一方、キュービック・ジルコニアは優れた光学的特性(高屈折率)を持つことから、ダイヤモンドの類似石として宝石市場に出回ることになりました。
結晶系について少し解説します。約4,000種類ほどある鉱物を結晶系という考えで分類しますと、7種類に分けられます。
結晶系は次の7種類があります。(1)立方晶系、(2)正方晶系、(3)六方晶系、(4)三方晶系、(5)単斜晶系、(6)直方晶系、(7)三斜晶系 です。
ダイヤモンドは立方晶系に属します。ルビーとサファイアは三方晶系です。エメラルドは六方晶系です。
ジルコニアとは、二酸化ジルコニウム(ZrO2)のことです。天然石はバッデライト(単斜晶系)と言います。しかし、キュービック・ジルコニアは天然で産出しません。
人の手によって造り出されるのみです。ですから、人工石と言えます。

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