宝石の取り扱いに欠かせないピンセット

ピンセット(pincetteはフランス語、英語はtweezers、ツイーザー)は宝石を取り扱う場合に必要な器具です。宝石取扱四用具(ルーペ、ペンライト、セーム革、ピンセット)のひとつです。
ピンセットは小さい頃から、見慣れた、聞き慣れた器具です。片方の端部は折り返しになってバネの働きをします。親指と人差し指、中指に力を加えて宝石をはさむ簡単な構造です。

宝石用のピンセットは、他の用途のピンセットと大きく異なる点はありません。少しだけ工夫された個所はあります。つまむ個所に横溝を刻んでいるものもあります。さらにストッパーで保持、固定するタイプもあります。
あるいはつまむ個所にお椀のような半球を付けたものもあります。真珠やビーズの取り扱いに便利です。

ピンセットの材質はほとんどステンレス製です。その他にプラスチック製、竹製もあります。中にはつまむ個所にゴム素材で被覆したものもあります。

なぜピンセットを使わなければいけないのか

宝石業界でピンセットを使う場面は、比較的小さな宝石を取り扱うときが多いです。鑑別を行うとき、貴金属にセッティング(取り付け)するときなどです。比較的大きなサイズのダイヤモンドを検査するときもピンセットで操作します。ダイヤモンドを直接に指で触ると、指紋が付き易いからです。
ダイヤモンドは油脂分になじむ性質(親油性)があります。指の皮脂が付着しやすい性質を持っています。ですから、ダイヤモンドのルース(裸石、貴金属に取り付けられる前のカットされた宝石のこと)の商談ではピンセットで操作します。

慣れたプロでも必ずトレイの上で扱う

ピンセットで宝石をつかむ場合、ルースを裏側(フェイス・ダウン)にして、ガードル(最大径部)をつかみます。軽く落ちない程度に力を加えます。ゆるくはさむと落ちます。固くはさむと飛んで行きます。少々、慣れ(経験)が必要です。
宝石をピンセットで取り扱う場合、ひとつの鉄則があります。絶対に守るべき約束事です。それは、必ず「接客トレイ」(または柔らかい布)の直上で行うことです。
どんなに慣れたプロの宝石商でも、たまたま、希にピンセットから宝石を落とすことがあるからです。椅子に座らないで、立ってピンセットを操作すると、高いところから床(固い床)に落下します。すると、ダイヤモンドさえも希に破損することがあるからです。特にエメラルド、タンザナイト、クンツァイトなどは落下させると、破損に至る可能性が高いからです。

本稿は無断転載禁止です。ヴィサージュジャパン 株式会社