見る方向を変えると、色が変わる

多色性とは、石(宝石)を回して方向を変えて見ると、色が変わる現象を言います。この現象は色石にだけ見られます。無色透明石では見られません。またガラスもこの現象は見られません。また、ある特定の宝石(例えば、ガーネット・グループ)にも多色性はありません。

多色性を見れば、宝石が見分けられる

この多色性を利用してルビーと赤色ガラスを識別できます。前者には多色性があります。後者にはありません。
さらに赤色系宝石の識別にも役立ちます。例えば、ルビーとルベライト(レッド・トルマリン)では多色性の色相が違います。前者では紫赤色と橙赤色が見られます。後者では赤色と淡赤色が見られます。
多色性の強弱を表現するとき、次の三段階に分けます。強、明瞭、弱です。肉眼とルーペで多色性を観察する場合、強、明瞭までしか認識できません。
多色性を観察する専用器具として「二色鏡(ダイクロスコープ)」があります。この二色鏡を使いますと、弱い多色性の石も鑑別できます。しかし、天然と合成の区別はできません。
一般的にこの器具を保有していませんので、少し工夫して肉眼とルーペだけで多色性を観察します。

多色性の強弱を示す石の事例を下に示します。
  強 :ルビー、ブルー・サファイア、トルマリンなど。
  明瞭:エメラルド、アクアマリンなど。
  弱 :シトリン、アメシスト、イエロー・サファイアなど。

多色性を観察する

実際に肉眼とルーペで多色性を観察してみましょう。赤色系紫~青色系紫の合成サファイアです。多色性は「強」です。多色性の観察は、テーブルからでなく、ガードルから見ます。
クラウンやパビリオンの一部のファセット(研磨面)に現れる色相を観察します。色の濃淡だけでは不十分です。例えば、赤色と薄い赤色、ピンク色では誤認の恐れがあります。同じ色の系統だけでは即断できません。全く違った色相、例えば赤色と青色が見えた場合は多色性と判断できます。

ガードルを指ではさみ、前後に動かしたり、左右に動かしてファセットに現れる色相を観察して下さい。
同じ石(宝石)の種類であっても見えやすい場合と見えにくい場合があります。
前述しましたようにガラスには多色性はありません。
この他、宝石でも多色性を示さないものがあります。
ガーネットです。赤色のガーネットも緑色のガーネットも多色性を示しません。
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