キュービック・ジルコニアを合成する

現在、外観がダイヤモンドにもっとも似ている石はキュービック・ジルコニア(以下、CZと表示)です。遠くから見ても、近くで見てもダイヤモンドとの識別は難しいです。
外観がダイヤモンドに近似していることから、CZは宝石業界で大量に使用されています。
かなり以前からCZを合成する試みはありました。しかし、CZの基本成分であるジルコニア(ZrO2)の溶融点が極めて高温、2,750℃(度)であるため、このジルコニアを溶かすルツボ(筒状の耐火物)が世の中に存在しない、という壁に当たっていました、暗礁に乗り上げていました。
ところが、1970年頃、ロシアの科学者達はこの壁を優れたアイデア(着想)で乗り越え、解決しました。そのアイデアは、ジルコニアと同じ組成の粉末でルツボを作るというものでした。さらに、粉末の外周を冷却するという新しい方法でした。

スカル・メルティング法とは

右図に示したように銅管を円周に配列し、その銅管の中に冷却水を流します。その銅管で作られた筒の中にジルコニアの粉末原料を入れます。そして、外部から加熱(高周波誘電加熱)します。約3,000℃に達します。すると、粉末のジルコニアは溶融し、液体状になります。
その後、ゆっくりと冷却し、CZを結晶化させます。
銅管に接触していた粉末のジルコニアは、溶けないで固化(焼結)したままです。右図の斜線部は溶けないで固化したジルコニアを表しています。結晶化したジルコニアは、右図のCZと表示した個所です。
右図に示したように空洞状の中にCZが形成されます。
このことから、この方法はスカル・メルティング(頭蓋骨型溶融)法と呼ばれています。銅管を並べた筒の直径は成人の胴部と同じ大きさ程度です。
粉末ジルコニアの中に通常はカルシウム(Ca)やイットリウム(Y)を混ぜます。約10%程度添加します。CZの結晶を得るには、安定剤としてカルシウムやイットリウムを加える必要があります。

天然石としてモノクリニック(単斜)・ジルコニアは存在します。極めて稀にジルコンのインクルージョンとしてキュービック(等軸)・ジルコニアもあります。
CZを造るとき、安定剤としてカルシウムやイットリウムを添加しないと、モノクリニック・ジルコニアになり、キュービック・ジルコニア(CZ)が得られません。

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