私たちの心を惹きつけてやまない宝石、真珠。その奥深い魅力を言葉で説明するのは難しいかもしれません。けれど、なぜ真珠が特別なのか、どのようにして「本物」と「模造」が見分けられるのかを知ることができたら、その美しさはさらに輝きを増すはずです。
本記事では、真珠の定義から構造、見た目では分からない内部の秘密、そして品質評価のポイントまで、専門的な視点でやさしく紐解いていきます。
高価な真珠を選ぶとき、自信を持って選べるようになるために。あるいは、大切な人への贈り物として「本物」を見極めたいときに。本記事が、あなたの知識と感性を磨く一助となるでしょう。
- 真珠とは何か?定義と基本構造
- 真珠層が生み出す独特の輝きとは
- 模造と本真珠を見分ける具体的な方法
- 真珠の品質評価に用いられる6つの項目
真珠の定義
「生きた貝の体内で形成される生産物で、外観の構成物質が貝殻と等質であるもの」
と定義されています。これは日本真珠振興会の定義を基にしています。
それでは貝殻を球状に削って仕上げたものは真珠でしょうか?
球状の貝殻の表面に真珠光沢の塗料を吹き付けたものは真珠でしょうか?
貝殻を削ったものは、真珠の定義の体内で形成されたものに該当しませんので、真珠ではありません。貝殻の表面に塗装したものは、体内で形成されたものではないこと、そして塗装部分について、外観の構成物質が貝殻と等質でないことの2点から真珠に該当しません。
百貨店の宝飾フロアや街中の宝石専門店で、美しいピンク色をした「コンク・パール」を見かけることがあります。
コンク・パールはコンク貝から採取される珍しい真珠です。しかし、このコンク・パールは表面に真珠層を持っていません。ですから、真珠層がないものは真珠でない、と
指摘する専門家もいます。
このコンク・パールについて、真珠の定義に照らし合わせると、どうなるでしょうか?
コンク・パールはコンク貝の体内で形成されます。そしてコンク・パールの外観の構成物質は貝殻と等質です。ですから、真珠の定義に合致します。
コンク・パールは真珠の定義に合致しますので、真珠に分類されます。
| 項目 | 本真珠(例:アコヤ真珠、コンク・パール) | 模造品(例:塗装貝殻など) |
|---|---|---|
| 形成場所 | 生きた貝の体内 | 人工的に加工された外部 |
| 外観の構成物質 | 貝殻と等質 | 塗装など異質な素材 |
| 真珠層の有無 | 原則あり(例外:コンク・パール) | なし |
| 定義への適合 | 真珠の定義に合致 | 定義に合致しない |
貝の体内で形成される等質な生成物
真珠層
コンク・パールを除いて、すべての真珠は真珠層を持っています。真珠の柔らかい独特な光沢はこの真珠層によって生まれます。真珠の種類は、アコヤ真珠や白蝶真珠、黒蝶真珠などがあります。ここでは養殖されたアコヤ真珠を取り上げて話を進めます。
養殖真珠を切断して、内部の構造を観察すると、右下の模式図のようになります。養殖真珠の大部分を占めているのは核です。右図の斜線部が核を示しています。核は一般に貝殻で造られています。貝殻を球状に加工したものです。
核の周囲を取り囲んでいるのが真珠層です。右図の同心円部です。真珠層の厚さは一般に0.5ミリほどです。
この真珠層を高倍率の顕微鏡(例えば、電子顕微鏡など)で詳しく観察すると、極薄の板状の結晶で構成されていることが判ります。極薄板の厚さは0.5ミクロン(μm)ほどです。1ミクロンは0.001ミリです。ですから、真珠層は極薄板が1000枚ほど積層している計算になります。

この極薄板について、成分は炭酸カルシウムで、アラゴナイトと呼ばれている特殊な結晶です。極薄板は透明です。
柔らかい真珠光沢は、この極薄板の多積層によって生まれます。極薄板で起こる光の干渉効果によって、真珠光沢が生まれ、淡いピンク色の干渉色が生まれます。真珠層はまさに真珠の根幹を成す部分といえます。
極薄板の結晶が光沢を生み出す
表面模様
真珠の表面を肉眼でながめても、柔らかな真珠光沢しか見えません。しかし10倍のルーペや高倍率の顕微鏡で観察すると、不思議な模様が見られます。
先ず高倍率(200倍)の顕微鏡で表面を観察すると、右の写真のような等高線模様が見られます。
地図で見られる等高線のようです。真珠層が階段状に成長している痕跡と推測されます。
宝石業界において日常で使うルーペの倍率は10倍です。

10倍のルーペでこの等高線模様を観察すると、どのように見えるでしょうか? 10倍のルーペで等高線模様を観察することはかなり難しいですが、特異な模様として確認することができます。その模様は、写真では判別しにくいので、描画で示します。右図の通りです。
10倍のルーペで観察した場合、指紋模様のように見えます。線と線の間隔はかなり接近しています。
本真珠(養殖真珠と天然真珠)の表面には必ず指紋模様が存在しています。アコヤ真珠でも白蝶真珠でも黒蝶真珠でも淡水真珠でも指紋模様が見られます。
模造真珠には指紋模様はありません。ですから、指紋模様の存在を確認することで、模造真珠と本真珠を識別することが可能です。

真珠のことにかなり詳しい消費者の方の中には、真珠同士を擦(す)り合わせれば判りますよ、と言われる方がいます。これは「擦り合わせ法」と呼ばれる方法で、本真珠同士を擦り合わせると、「ザラザラ」感があります。強く擦る必要はありません。軽く擦るだけで充分です。
模造真珠同士を擦り合わせると、「ツルツル」感があります。「ザラザラ」感と「ツルツル」感はかなり違いがあります。一度、体験しておくと、次回から本真珠と模造真珠を「擦り合わせ法」で識別できます。
さらに「歯上こすり法」があります。これは、自分の前歯の上に本真珠または模造真珠を軽く当てて、擦ります。歯でかむのではありません。歯の上で軽く擦るだけです。
本真珠では「ザラザラ」感があります。模造真珠では「ツルツル」感があります。
指紋模様が本真珠の証となる
真珠の品質
良質な真珠と低質な真珠、あるいは高価な真珠と廉価な真珠の間には、どのような点に違いがあるのでしょうか? どのような点、どのような項目に着目すればよいのでしょうか? 真珠の品質を評価する項目として、通常、次の6項目が挙げられます。
(1)色
アコヤ真珠の例では、わずかに黄色味を帯びた真珠よりも白色、さらにピンク色が好まれます。ピンク色系の真珠は産出が少なく、そして需要がありますので、価格が高くなります。
(2)テリ
真珠表面の輝きです。ひとつの真珠だけでは判りにくい場合は、複数個を並べて比較すると、テリの程度が判別できます。
(3)巻き
真珠層の厚さです。厚さは色やテリにも影響を与えます。巻きが厚いと、耐久性もよくなります。真珠層の厚さは、超音波測定器などで測ることができます。アコヤ真珠の真珠層は一般に0.5ミリ前後です。
(4)キズ
真珠は生き物の真珠貝から生まれます。ですから、常に一定の品質が得られるわけではありません。真珠の表面に窪み(エクボ)や盛り上がり(静脈瘤の外観)などが見られます。
(5)真円度(形)
球に近いほど高い評価を受けます。バロック(異形)を好む人も多いですが、通常は球に近いほど価格が高くなります。
(6)大きさ(サイズ)
大きさという項目は厳密には品質に含まれません。しかし、真珠の品質においてはこの項目を含めます。大きいほど高い評価を受けます。真珠の大きさは、真珠貝の種類、真珠貝自体の大きさに影響されます。大きな核を入れたら、大きな真珠が得られるというわけではありません。アコヤ真珠貝では、白蝶真珠貝や黒蝶真珠貝から採れる大粒の真珠は得られません。
| 評価項目 | 内容 | 傾向と評価基準 |
|---|---|---|
| 色 | 白・ピンクが好まれる | ピンク系は希少で高価 |
| テリ | 表面の輝き | 複数で比較しやすい |
| 巻き | 真珠層の厚さ | 厚いほど耐久性・輝き良 |
| キズ | 表面のエクボ等 | 少ない方が高評価 |
| 真円度 | 球形の度合い | 真球に近いほど価値高 |
| 大きさ | 直径サイズ | 大きいほど高評価だが貝の種類に依存 |
6項目で評価され、価格に反映される
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まとめ
真珠は、ただの「丸い白い宝石」ではありません。その定義や構造を知ると、真珠がいかに繊細な自然の産物であるかに驚かされます。とくに真珠層に見られる極薄板の積層構造は、真珠独特の光沢や色味を生み出す核心であり、それがテリや巻きといった品質評価にも直結しています。また、模造真珠と本物の見分け方として、ルーペで確認できる指紋模様や、手触り・歯触りといった「感覚的な識別法」も紹介され、実用的な知識として役立つでしょう。
真珠の魅力を深く理解することは、美しさを選ぶ眼を養うことでもあります。本記事が、あなたのジュエリー選びの視野を広げる一助となれば幸いです。
- 真珠は「貝の体内で形成される等質物」と定義される
- 真珠層の極薄板構造が光沢の鍵
- 表面の指紋模様で本物と模造を見分けられる
- 品質評価は色・テリ・巻き・キズ・形・大きさの6項目


