コーネルピン、なんだか心がざわつくそのネーム。キュートな響きが自慢の宝石コーネルピン、皆さんはご存知でしょうか?

ルース沼にハマったレア石業界の方以外には、あまりに希少かもしれません。今回はそんなコーネルピンの正体について迫っていきたいと思うので

レアストーンコーネルピン!その特徴は多色性

コーネルピンという言葉にゾクゾクした方は、もう宝石通。それくらいあまり知られていない宝石であり、宝石を幅広く紹介している書籍にもその名前が登場しないほど……。

世の中には珍しい宝石が山ほどありますが、その中でもコーネルピンはアイドルといったら大げさですが、非常に人気の高いレアストーンであります。果たしてどんな宝石なのかここでは検証していきたいと思います。

産地は豊富なのになぜコーネルピンは希少なの?

コーネルピンは1884年にデンマーク人地質学者Andreas. N. Kornerupによって発見された宝石です。歴史としては浅い宝石ですが、コーネルップさんがその名前の由来という訳ですね。和名ではコルネルプ石/コルネップ石と、またキュートなネーミングのある宝石です。

比較的多くの産出場所が確認され、グリーンランド、タンザニア、南アフリカ、ベトナム、カナダ、パキスタン、スリランカなどで発見されています。つまりレアストーンとしては多くの産出量が期待できるのに、珍しいということ。それは宝石品質の石がことごとく少なく、1912年になるまで審美性の高いジェムクオリティーの石が見つからなかったことからも分かるはず。

コーネルピンはオリーブグリーン色を呈する宝石ですが、含有するイオンによってその色は幅があり青、緑、褐色、橙、黄色など様々なカラーのものが確認されています。

宝石としては美しいのですが、硬度が6~7と若干低く、また劈開性が2方向に割れやすいことから、あまりジュエリーとして加工されることはありません。勿論リングやペンダントとしても見られますが、その取扱いには慎重になる必要があります。

その価値を高まる要素は多色性と内包物の少なさ

コーネルピンの中でも珍しく特に人気が高い品質のものは、まずインクルージョンが少ないこと。つまり透明質であることが第一条件。ただしインクルージョンが多く、若干くすんでいるからこそ、より幻想的な色合いを見せることがありますが価値の面では反映されにくい要素です。

また豊富な色合いの中でも希少色とされる、エメラルドグリーンやブラックなどはその価値が高まります。

コーネルピンは結晶系が斜方晶系であり、見る角度によって異なる3つの色合いを覗かせることが特徴でそれを多色性といいます。他に多色性が強い宝石としてはタンザナイト、アイオライトなどが挙げられます。

特にブルー系統の宝石では、ハッとするようなグリーン、パープル、ブルーの涼を感じさせる多色性を持ち、それらがクッキリしている品質の石は特に高価で取引されています。

気になるコーネルピンの値段は?

ここまでお話を聞いてきたら、「ちょっと、お財布に優しくはないわよね……」と疑心暗鬼になってしまいそう。しかしコーネルピン、その価値、値段については、グランディディエライト、アウイナイトやパライバトルマリンなどの希少石と比べたらずっとコストパフォーマンスが高い宝石なんです。

勿論ピンキリではありますが、1カラット当たり1万円またはそれ以下の石も少なくありません。ただしコーネルピンの代表的カラーの若吹色ではなく、バナジウムやクロム由来の鮮やかなハッカ色、明るいグリーンのものは非常に価値が高く0.1カラットで数万円する石も少なくありません。
K18WG ロンドンブルートパーズ ティアドロップピアス
(上記はトパーズです。)

コーネルピンの親戚?プリスマティンとは一体なに?

コーネルピンを知る上で、しばしこの名前を聞くことが多くなるはずです。それが「プリズマティン」という宝石です。

コーネルピン以上の名前のかわいらしさは感じられませんが、しばしコーネルピンの別名として紹介されています。ここでは重箱の隅を楊枝で洗うようなマニアック、コーネルピンとプリズマティンの相違についても考察していきたいと思います。

別名?それとも同種の宝石?

結論から言ってしまうとプリズマティンはコーネルピンと同じ鉱物種と思われていた宝石です。その為しばしばコーネルピン(プリズマティン)と記載されることも少なくありません。

非常によく似た化学組成がゆえに同鉱物と理解されたわけですが、最近の研究では異なる結果が出ています。つまりプリズマティンとコーネルピンは別個の宝石ということです。

Ion Microprobeという検査技法により、プリズマティンの場合はよりホウ素が多く含まれていることが判明しました。ただしコーネルピンにも若干ではあるもののホウ素自体を含有している為、ある一定以上のホウ素が確認された場合のみプリズマティンという鑑別がされるわけですね。

しばしコーネルピンとプリズマティンが同じものとして販売されることがありますが、その色合いや輝きからはほぼその同定は難しく、宝石鑑定機関でのホウ素含有率を調べることでおおよその鑑別は可能になります。

プリズマティンのルースやジュエリーを見かけることはコーネルピン以上に少ないかもしれませんが、もしミネラルショーで見かけた際は、お店の店主に得意気に「ホウ素の含有率はどれくらいですか?」と質問してみたらどうでしょうか?
Pt900 ピンクスピネル ピアス
(上記はスピネルです。)

まとめ

今回はレア宝石のコーネルピンについて解説していきました。まるでアクアマリンにペリドットのような趣がある宝石ですが、非常に宝石質のものが少ないがゆえに希少石として認定されています。

プリズマティンと同様に様々なカラーの石が見られるので、定番のオリーブ色からレアカラーのブラック、エメラルドグリーンまでの色合い、そして多色性を楽しめるので、見かけることが合ったらぜひ見る角度を変えて観察してみてくださいね!

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