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はじめに
空の色をそのまま閉じ込めたような、鮮やかなブルーが魅力のターコイズ(トルコ石)。その最も美しい色は、しばしば「ロビンの卵の青」と表現されます。しかし、なぜターコイズはこれほどまでに美しい青色をしているのでしょうか?また、時折見かける緑色がかったターコイズとは何が違うのでしょうか?
実は、ターコイズの発色の仕組みは、ルビーやサファイアといった多くの有名な宝石とは根本的に異なる、非常にユニークな特徴を持っています。
この記事では、ターコイズの色の秘密を科学的な視点から分かりやすく解き明かします。理想とされる「ロビンの卵の青」から、宝石の発色タイプ、そして色によって変わるターコイズの価値まで。これを読めば、ターコイズの奥深い色の世界をより一層楽しむことができるようになるでしょう。
- ターコイズの理想の色「ロビンの卵の青」とはどんな色か
- 宝石の発色タイプ「自色宝石」と「他色宝石」の違い
- ターコイズが青色や緑色になる科学的な理由
- 色や模様によって変わるターコイズの価値と人気の種類
理想のターコイズカラー「ロビンの卵の青」
ターコイズは、日本では古くから「トルコ石」の名前で親しまれていますが、現在では英語表記の「ターコイズ」が一般的です。その色合いは「ターコイズブルー」として知られ、澄み渡る青空を彷彿とさせます。
産地によってターコイズの色は様々で、淡い水色から濃い青、緑がかった青緑色まで幅広いバリエーションが存在します。その中でも、最も理想的で美しいとされる色のひとつが、アメリカのコマドリ(ロビン)の卵の色になぞらえた「ロビンズ・エッグ・ブルー」です。この濁りのない、均質で鮮やかな空色が、ターコイズの価値を測る上での一つの基準となっています。
左の写真はコマドリの巣の中の卵です。まるでオーバル・カボッションにカットされたターコイズのような、美しい青色をしています。この色が、世界中の人々が求めるターコイズの標準的な色とされています。(写真の出所:Steven Russell Smith)

実際に流通している高品質なターコイズの一例が左の写真です。コマドリの卵とはわずかに色合いが異なりますが、均質で美しい空の青色をしています。※色味は閲覧環境により異なります。

ターコイズの最も理想的な色は、コマドリの卵の色に例えられる「ロビンズ・エッグ・ブルー」と呼ばれる、均質で鮮やかな空色である。
色の秘密は「自色宝石」という珍しい特徴にあり
では、この美しい青色はどのようにして生まれるのでしょうか。宝石の発色原因は、大きく分けて2つのタイプがあります。
ひとつは、本来無色の結晶に、ごく微量の不純物(元素)が入り込むことで色がつく「他色(たしょ)宝石」。ルビーやサファイアなど、多くの宝石がこのタイプです。もうひとつは、宝石を構成する成分そのものが発色原因となっている「自色(じしょ)宝石」です。ターコイズは、この「自色宝石」という珍しいタイプに分類されます。
| 自色宝石(ターコイズなど) | 他色宝石(サファイアなど) | |
|---|---|---|
| 発色の原因 | 宝石を構成する主成分の元素(例:銅) | 不純物として含まれる微量な元素(例:鉄、クロム) |
| 色の種類 | 基本的に一色(成分に由来する色のみ) | 不純物の種類によって様々な色が存在する |
| 代表的な宝石 | ターコイズ、ペリドット、マラカイト | サファイア、ルビー、エメラルド、トルマリン |
上の表の通り、ターコイズの青色は、不純物ではなく宝石そのものを構成している「銅」という元素に由来します。銅によって青く発色する宝石は非常に珍しく、他に有名なものとしてはパライバ・トルマリンが挙げられる程度です。
なぜ緑色のターコイズも存在するのか?
ターコイズは自色宝石であるため、本来は銅による青色しか示さないはずです。しかし、実際には緑色がかったターコイズも多く産出します。これは、本来の成分に加えて、不純物として「鉄」が入り込むことにあります。銅と鉄の比率によって、ターコイズの色は青から緑へと変化し、鉄の割合が多くなるほど緑色が強くなります。
左下の写真は、鉄元素の影響を受けて緑色系になったターコイズです。(写真出所:GIA)
多くの人は均質な青色のターコイズを好みますが、独特の風合いを持つ緑色系のターコイズにも根強いファンがおり、好みは人や文化によって様々です。

ターコイズの色の正体 まとめ
● 青色のターコイズ → 主成分の「銅」による発色
● 緑色のターコイズ → 主成分の「銅」+ 不純物の「鉄」による発色
ターコイズの青色は、不純物ではなく本体の「銅」によるもの(自色宝石)。不純物として「鉄」が混ざると緑色を帯びる。
美しさを保つための工夫と価値が決まるポイント
ターコイズは微細な結晶の集合体で、表面には目に見えない無数の小さな孔がある「多孔質」という性質を持っています。そのため、研磨しただけの状態では汗や皮脂が染み込みやすく、変色してしまう可能性があります。この弱点を補い、美しい色とツヤを長く保つために、市場に流通しているほとんどのターコイズにはワックスや樹脂による表面の安定化処理が施されています。
主な産地としてはアメリカや中国が知られており、特にアメリカ・アリゾナ州のスリーピング・ビューティ鉱山から産出された、色が均質で美しいスカイブルーのターコイズは高い人気を誇ります。(※現在は採掘を中止)
価値の基準は、色や模様によって大きく異なります。世界的には不純物のない均質な青色が最も高価とされますが、アメリカでは黒色や褐色の網目模様が見られる「スパイダー・ウェブ・ターコイズ」が非常に人気が高いなど、その評価は多様です。
価値が高いターコイズの例
- 色:「ロビンズ・エッグ・ブルー」と呼ばれる、鮮やかで濃いスカイブルー。
- 均一性:色ムラがなく、全体が均質な色合いであること。
- 模様:模様がないものが基本だが、バランスの取れた美しい「スパイダー・ウェブ」模様は非常に高く評価される。
ターコイズは変色しやすいため、多くは表面処理が施される。価値は均一な青色が基本だが、スパイダーウェブのような美しい模様も高く評価されることがある。
まとめ
ターコイズの吸い込まれるような青色は、単なる美しさだけでなく、宝石の中でも珍しい「自色宝石」というユニークな成り立ちに由来していました。その色の基準は「ロビンの卵」に例えられ、不純物のない均質なスカイブルーに最も高い価値が置かれます。一方で、鉄が混ざることによって生まれる緑色のターコイズや、網目模様を持つものにも、それぞれ異なる魅力と価値があります。色の背景を知ることで、ターコイズ選びがさらに楽しく、奥深いものになるはずです。
- 理想の色:最も美しいターコイズの色は「ロビンの卵の青」や「スカイブルー」と表現される。
- 発色の原因:宝石自体を構成する「銅」が原因。これは「自色宝石」という珍しいタイプ。
- 色のバリエーション:不純物として「鉄」が混ざると、その割合に応じて緑色を帯びる。
- 価値の基準:一般的には色が均一で鮮やかな青色のものほど高価値だが、美しい模様も評価の対象となる。
