皆さんはジルコンという宝石をきちんと理解していますか?宝飾業界においても同じような名前の石が複数あるため、その存在感を存分に発揮できない宝石がありますが、その好例がジルコンかもしれません。

今回はジルコンにターゲットを当てながら、その宝石の美しさ、ダイヤモンドと見間違うような性質の秘密、気になるジルコンのアレコレを考察していきたいと思います。

ジルコンって何だっけ?キュービックジルコニアのこと?

えっと、ジルコンはジルコニア?つまりキュービックジルコニアのことですか??【注意】これは非常によくある凡ミス的な勘違いです。誤解が誤解を芋づる式に産んでしまうことは、その美しい宝石の価値さえ下げてしまうネガティブ要素にしかなり得ません。

ここではそんな不名誉を挽回するべく、正しい宝石としてのジルコンの魅力を読者の皆様にお伝えしていきたいと思います。

【ジルコンは列記とした「宝石」】であり【キュービックジルコニアは「人工石」】

くどいですがジルコンは天然の鉱物であり、ダイヤモンドの模造石であるキュービックジルコニア(CZ)とは異なりますジルコンがキュービックジルコニアと混同された理由は、その名前が似ている点と、ジルコン自体もダイヤモンドの代価品として珍重されてきたからに他なりません。

なおキュービックジルコニアは歯科材料としても使われているジルコニアを主成分とした立方晶ジルコニアであり、それを英語名にしたものがキュービックジルコニア通称CZなんですね。

このようにジルコンはその名前の類似性から、ダイヤモンドの安価な代価品としてのCZと同様の網でくくられてしまう傾向が高く、それが消費者を混乱させてしまう大きな要因になっているのです。

ジルコンがダイヤモンド様と言われるその訳

ジルコンは鉱物学的特徴がダイヤモンドと非常に似ていることからも、ダイヤモンド類似石としての地位を確立してきました。

モース硬度こそ6.5~7とダイヤモンドの10と比べると低いですが、それでもジュエリーに加工するのに十分な耐久力を持っています。また非常に高い屈折率と分散があるため、ダイヤモンドに匹敵する強力な輝きと、七色に輝くシンチレーションが見られるのも大きな魅力の一つです。

そんな特徴がゆえに、ジルコンは通常ラウンドブリリアントカットに研磨され、ダイヤモンドではないけれど、ダイヤモンド様のルックスを楽しめる宝石として広く認知されてきました。

なにかとダイヤモンドを基準として比較されることの多い宝石ではありますが、キュービックジルコニアと異なり天然宝石であり、その美しさに一目置いているジュエリーラバーの方は決して少なくありません。

ジルコンの石言葉と伝説

ジルコンは和名で風信子石(ヒヤシンスセキ)という雅な名前を持ちます。その宝石言葉は「安らぎ、名誉、行動力」で、旧約聖書にはモーセの兄アロンの胸当ての第3列にセットされたと言われるキリスト教とも関連の深い宝石なのです。

またジルコンは地球で一番古い宝石として認知されており、なんと40憶年以上前から産出されたとも言われています。私たちはジルコン=ダイヤモンドに似た宝石、くらいの認知度しか持っていませんが、実はダイヤモンド以上に悠久な歴史を誇る宝石だったのです。

またモーリシャス島では島の形成よりも、はるかに古い時代のジルコンが発見されており、浸食され丸みを帯びたその形は、はるか昔に失われた大陸モーリシア由来のものでは考えられているそう……。ジルコンには放射線物質が含まれており、放射線元素の半減期を利用すればある程度の年代は測定可能ということで、ジルコンと古代大陸との関連、そのロマン溢れるヒストリーに心が震えてしまいそうです。

ジルコンをもっと知ってほしい!ジルコンジュエリーのすゝめ

私個人的にもダイナミックな輝きとファイヤーを楽しめるジルコンは、もっとジュエリーとして人気が出てもいいのではないかと思っております。

ここではそんなジルコンの楽しみ方について、改めて解説していきたいので、ぜひ参考にしてみてください。

豊富なカラーヴァリエーションが憎い!

昨今ブルージルコンは加熱処理をしているにも関わらず、大変な人気を博しており、スターライトという商業ネームもあるくらい。(褐色のジルコンを加熱して、あの青い色合いを発現させているのです。)

この他にもレッド、イエロー、グリーンなど様々なカラーヴァリエーションのジルコンが見られ、鉱物コレクターはキャッツアイ効果のあるジルコンなどのレアジルコンを愛でる方も多いようです。それこそそれぞれの趣味嗜好で様々なファンシーカラーが楽しめるはずなので、本物のダイヤはちょっと手が出ないけれど、カラージルコンで大人カワイイ指先のお洒落を演出してみるのも素敵ですね。

ジルコンってどれくらいの価値がある?

市場にあるジルコンはそのほとんどが加熱処理をしたものですが、その美しさ、煌きの強さから女性に圧倒的な人気を誇っています。ダイヤモンドと比べても経済的に購入できるのも魅力的で、天然ダイヤモンドと比べても1/100~1/200程度で取引されているため、ダイヤモンドでは到底実現できない大粒カラットのジュエリーも楽しめます。

勿論それぞれの鉱物にもピンキリがあるので、ジルコンの中でも飛び切り発色がよくインクルージョンの無いものは、それこそダイヤモンド並みに取引されることは言うまでもありません。

まとめるとジルコンはダイヤモンドより、コストパフォーマンスに優れていることは否めなく、ちょっとした華やかな場ではその存在感を十二分に見せつけてくれることでしょう。

なお加熱処理されたジルコンは、直射日光に長時間当たると変色することがあるので、その点には留意してくださいね。

なんだかもう既にジルコンの虜になってしまいそうです!

まとめ

今回は天然宝石のジルコンについて解説していきました。様々な誤解が渦巻く宝石ですが、つまるところその根源にはダイヤモンド並みの美しさがあるということ。

ジルコンは比較的経済的に購入でき、なおかつファンシーカラーダイヤモンドも真っ青になるくらいの美しいカラージルコンが大粒でも楽しめてしまう、そんなワクワクする側面を持っています。

ダイヤモンドという宝石の王様と比較してしまえばもはやそれまでですが、ダイヤモンドの代用品ではなく、あくまでジルコンとしてその宝石自体を愛でていただければと切に願わずにはいられません!

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