宝石を選ぶとき、カラット(重さ)やカラー(色)は気にしても、「カット」についてはよく知らないという方が多いのではないでしょうか。
実は、カットは宝石の輝きを左右する最も重要な要素の一つ。同じ原石でも、カットの仕方によって美しさが大きく変わります。
この記事では、代表的なカット方法の種類と特徴を解説。ジュエリー選びがもっと楽しくなる知識をお届けします。
なぜ「カット」が重要なのか
宝石のカットとは、原石を研磨して形を整え、光の反射や屈折を最大化させる加工技術のことです。
ダイヤモンドの評価基準「4C」にもカット(Cut)が含まれており、唯一「人の技術」が関わる評価項目です。カラット・カラー・クラリティは原石の持つ特性ですが、カットは職人の腕次第で変わります。
カットで変わる3つの光

優れたカットは、3種類の光を最大限に引き出します。
カットが浅すぎたり深すぎたりすると、光が石の底から逃げてしまい、輝きが失われます。理想的な角度と比率でカットされた宝石だけが、最大限の輝きを放ちます。
ラウンドブリリアントカット——永遠の定番

最も人気があり、ダイヤモンドの代名詞とも言えるのがラウンドブリリアントカットです。
58面体が生む圧倒的な輝き
ラウンドブリリアントカットは、57または58のファセット(面)を持つ円形のカット。1919年にマルセル・トルコウスキーが数学的に理論化した、光の反射を最大限に活かすカット方法です。
100年以上経った今でも、婚約指輪の約75%がラウンドブリリアントカットと言われるほど、不動の人気を誇ります。
カットグレードの見方
GIA(米国宝石学会)では、ラウンドブリリアントカットのダイヤモンドに対して、5段階のカットグレードを設定しています。
| グレード | 評価 |
|---|---|
| Excellent | 最高品質。光を最大限に反射 |
| Very Good | 優れた品質。Excellentに近い輝き |
| Good | 良好。やや光が逃げるがコスパ良し |
| Fair | 許容範囲。輝きは控えめ |
| Poor | 品質低。光が大きく逃げる |
ファンシーカット——個性を楽しむ
ラウンドブリリアントカット以外のカットを総称して「ファンシーカット」と呼びます。それぞれに異なる魅力があり、個性的なジュエリーを求める方に人気です。
プリンセスカット——モダンな輝き
正方形または長方形のスクエア型カット。1960年代に開発された比較的新しいカットですが、ブリリアントカットに次ぐ人気を誇ります。
シャープなエッジとブリリアントカットに匹敵する輝きが特徴。原石から切り出す際のロスが少ないため、同じカラット数でもラウンドより手頃な価格になることが多いのも魅力です。
エメラルドカット——上品な透明感
長方形で角を落とした形状のステップカット。もともとエメラルドに多く用いられていたことからこの名前がつきました。
ブリリアントカットのような強い輝きよりも、透明感と上品な光が特徴。アールデコ調のヴィンテージジュエリーによく見られる、クラシックで知的な印象のカットです。
注意点として、内部のインクルージョン(内包物)が見えやすいため、高品質な石に適したカットです。
オーバルカット——指長効果
楕円形のカット。指を長く細く見せる効果があり、リングに人気です。ブリリアントカットベースなので輝きも美しく、ラウンドの変形版として選ばれることが多いです。
マーキスカット——エレガントな舟形
両端が尖った舟形のカット。フランス国王ルイ15世の愛妾、ポンパドゥール夫人の微笑みを模したと言われています。
同じカラット数でも大きく見えるのが特徴。エレガントで華やかな印象を与えます。
ペアシェイプ(ティアドロップ)カット——涙の滴
涙や雫のような形のカット。ネックレスやピアスに人気で、揺れるたびに美しく輝きます。「幸せの涙」という意味も込められることがあります。
ハートシェイプカット——愛の象徴
愛を象徴するハート型のカット。技術的に難しく、熟練の職人技が必要です。記念日やプロポーズの贈り物に選ばれることが多いです。
クッションカット——アンティークな魅力
角を丸くした正方形または長方形のカット。クッション(枕)のような形状が名前の由来です。19世紀に人気だったオールドマインカットの現代版で、アンティークな雰囲気が魅力です。
| カット名 | 形状 | 特徴 |
|---|---|---|
| プリンセス | 正方形・長方形 | モダン、コスパ良し |
| エメラルド | 長方形(角落とし) | 上品、透明感 |
| オーバル | 楕円形 | 指長効果 |
| マーキス | 舟形 | 大きく見える |
| ペアシェイプ | 涙・雫型 | ネックレス向き |
| ハート | ハート型 | 愛の象徴 |
| クッション | 角丸正方形 | アンティーク調 |
用途別おすすめカット

ジュエリーの用途や好みに合わせて、最適なカットを選びましょう。
よくある質問
Q. カットとシェイプ(形)は同じ意味?
A. 厳密には異なります。「シェイプ」は見た目の形状(丸・四角など)、「カット」はファセット(面)の配置や角度を含む総合的な加工品質を指します。ただし、日常会話では同じ意味で使われることも多いです。
Q. ファンシーカットにはカットグレードがない?
A. GIAでは、ファンシーカットに対してはカットグレードを付けていません。形状のバリエーションが多く、統一基準を設けにくいためです。ただし、対称性(シンメトリー)や研磨の品質は評価されます。
Q. 一番輝くカットはどれ?
A. 科学的にはラウンドブリリアントカットが最も光を効率的に反射すると言われています。ただし、好みは人それぞれ。エメラルドカットの落ち着いた光を好む方もいます。
まとめ
宝石のカットは、その美しさと価値を決定づける重要な要素です。
ラウンドブリリアントカットの圧倒的な輝き、プリンセスカットのモダンな魅力、エメラルドカットの上品な透明感——それぞれに異なる魅力があります。
ジュエリーを選ぶ際は、宝石そのものだけでなくカットにも注目することで、より自分らしい一品に出会えるでしょう。
