嵐電天神川から電車を乗り換え、阪急嵐山線の松尾大社駅で降りると、間も無く西側に大きな鳥居が見えてきます。
ここは、京都最古級の神社のひとつである松尾大社(まつのおたいしゃ)です。嵐山から少し離れた場所にある松尾大社は、静かで荘厳な雰囲気。古い歴史や逸話が伝わる、由緒ある神社です。
松尾大社は「お酒の神様」として広く知られており、全国の酒造家や日本酒愛好家たちから愛されている神社でもあります。
今回は、そんな松尾大社の歴史や見どころ、訪れる時に注目しておきたいポイントについてご紹介します。

松尾大社の特徴

松尾大社の歴史は古く、飛鳥時代に建立されており、京都でも最古クラスの神社です。

松尾大社の後ろにそびえる松尾山は、古代より山頂付近に、大山昨神(おおやまぐいのかみ)という神が降臨するという「磐座(いわくら)」と呼ばれる岩がありました。この土地に住む人々は、磐座を生活の守護神であるとして深い信仰をしていたのです。

その後、大宝元年(701年)、京都の地にやってきた秦氏が文武天皇から勅命を受け、「磐座」の神霊を現在の本殿がある場所に移し奉り、松尾大社を建立したと伝えられています。

松尾大社の現在の御祭神は、大山咋神とともに中津島姫命(なかつしまひめのみこと)。中津島姫命は、天照大神と須佐之男命(すさのおのみこと)の誓いによって生まれた女神で、秦氏が航海の安全を祈願するために祀ったといわれます。
境内の中にある「神像館」では、平安時代に作られた神像が見られますが、こちらは御祭神をイメージして作られたものだと考えられており、重要文化財彫刻となっています。

美しい境内とたくさんのパワースポット

松尾大社の春は境内を山吹が彩り、夏は手水舎に涼しげな風鈴が並び、美しさとともに涼を届けてくれます。
また、本殿から奥へ進んで行くと、延命長寿の水として知られている「亀の井」という霊泉が。秦氏の一族はお酒造りに長けた人が多かったということもあったため、「亀の井のお水でお酒を造ると腐らない」という伝説が広まり、酒造家たちは亀の井のお水を持ち帰って、お酒を醸造していたそうです。
今でも近隣の人たちは、亀の井のお水を飲料用のお水として汲みに来られているそうですが、社務所にはお水の持ち帰り用の瓶が販売されていますので、参拝に訪れた人も持ち帰ることが可能です。

この亀の井からは、パワースポットとしても話題の「霊亀の滝」が見え、非常に強いクリアな空気が感じられます。この土地には天狗が住んでいるとも言われており、観光客の写真に天狗の姿が映っていたと話題に……。運が良ければ、天狗の姿が見えるかもしれませんね。
霊亀の滝は、御神体がある磐座から流れる気が強く感じられる場所なので、しっかりエネルギチャージをしておきましょう。

家庭円満、寿命長寿の「幸運の撫で亀」、恋愛成就の「幸運の双鯉(そうり)」、恋愛成就や夫婦円満の象徴である「相生の松」など、ご利益のあるスポットがたくさんあります。

お酒の資料館

松尾大社はお酒の神様であることから、境内には日本酒と人々の関わりや歴史、そしてお酒の作り方などがわかりやすく展示されています。

古来より、お酒は神事では欠かせない大切なものでした。人々は、お米とともに、お米で作ったお酒を神様へお供えしてお祭りをし、神様に捧げた供物を頂くという習わしがありました。供物は直会(なおらい)と呼ばれ、みんなで一緒に一緒に直会をいただくことで「神人共食」となり、人々を見守っている神様の力をいただけるものだとされてきました。信仰とお酒の関係は非常に深く、日本の伝統や文化を改めて知ることが出来ますよ。

また、こちらのお酒の資料館には日本酒の菰樽もズラリと並んでおり、日本酒愛好家なら一度は訪れたい場所でもあります。

平安時代に想いを馳せる美しい庭園

松尾大社では、美しい庭園も有名な見どころです。現代の作庭家である重森三玲(しげもりみれい)の作品であり、「上古の庭」「曲水の庭」「蓬莱の庭」と3つの庭を見ることができます。

重森三玲は、日本の伝統的庭園を研究しつつ、そこにオリジナリティを加えることで、永遠のモダンを生み出すことに成功しています。
京都の庭園ではごく新しい作品ですが、古き平安の時代を表現しており、新旧のコラボレーションが感じられます。

上古の庭

「上古の庭」は、自然の形をそのまま生かした趣あふれる庭造りになっており、体的に見た庭全体の空気はとても荘厳で神秘的です。
松尾山にある磐座を模して造られており、重森三玲も「この石組みは、神々の意思によって据えられたものである」と説明しているとのことで、巨木や岩など自然を神とした「聖地」そのものです。

奥の中央あたりには二つの巨石が。こちらは御祭神である大山咋神と中津島姫命の2神を現しています。

曲水の庭

「曲水の庭」は、奈良時代、平安時代に多く造られた曲水式庭園を思わせる庭造りになっています。
王朝文化全盛の頃の平安貴族たちが雅に過ごす様子が表現されているかのようで、水の流れを眺めていると、平安の空気がすぐそこに感じられるようです。

蓬莱の庭

ちょっと離れた場所にある「蓬莱の庭」は、鎌倉時代の回遊式庭園を取り入れ、蓬莱の世界観を表現しています。
設計は重森三玲ですが遺作となり、重森三玲の息子である重森完途(しげもりかんと)によって完成しました。

お酒にちなんだ宝石|悪酔い防止のアメジスト

お酒の神様と言えば、ローマ神話ではバッカスの伝説が有名ですね。
ある時、酒に酔ったバッカスは、気まぐれで月の女神アメジストに獣をけしかけてしまいます。すかさず気づいた月の女神が、アメジストを水晶に変えてしまい、惨事にならずに済みました。ここでバッカスは我に帰り、泣きながら水晶に手持ちのワインを注いでお詫びをします。
すると、水晶は美しい紫水晶「アメジスト」へとアルケミーしたのです。
この伝説から、アメジストは「酔いを覚ます宝石」「悪酔しない宝石」と言われるようになりました。
「アメジストが悪い酔いしない」というのは、お酒だけではなく、人生にも悪酔しないということで、アメジストはお守り代わりとしても用いられるようになったのです。

パワーストーンとしても人気のアメジスト。
人生に悪酔しないように……との願いを込めて、大切な奥様にプレゼントするのもおすすめです。
K18YG アメジストネックレス

まとめ

お酒の神様として知られている松尾大社は、パワースポットが詰まったパワフルな神社でもあります。
現在は郵送での祈祷にも対応してくれていますので、興味のある方は松尾大社の公式サイトから申し込みをしてみて下さい。

また時が落ち着き、松尾大社を訪れた際は、「霊亀の滝」の澄んだ空気を感じて、日頃の疲れを浄化して下さいね。

松尾大社

京都府京都市西京区嵐山宮町3
075-871-5016
阪急電車 「松尾大社」下車

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