日常的に仏像を拝観する機会がありますか?心静かに仏像と向き合ったときに見えてくる感情にハマる人も多く近年仏ガールなどといった言葉まで生まれ拝観を楽しんでいる人も多いようですね。奈良では数多くの仏像をあちこちの寺社仏閣で拝観することができます。有名なものは東大寺の盧舎那仏や薬師寺の薬師三尊像といったところでしょうか。
そのほかにも本当にたくさんの仏像があるのですが、その中で一二を争うポピュラーな仏像として知られるのが興福寺の「阿修羅像」です。憂いと翳りを感じる美少年のような顔立ちから日本全国にファンも多く、奈良に来る機会があるならそのお姿をひと目見ようと計画される人も多い人気の仏像です。

阿修羅像ってどこにいるの?

阿修羅像は奈良公園内にある興福寺東金堂のすぐ横の建物、国宝館で拝観することができます。興福寺は奈良時代に建立されたお寺。度重なる火災で焼失した中金堂がつい最近再建されるなど話題となったお寺です。
奈良公園内ということで周囲には神の遣いである鹿がたくさんいます。興福寺の五重塔を背景に鹿の写真が撮れるなどとあって年中問わず観光客にとっても人気スポットとなっています。
興福寺国宝館へのアクセスは近鉄奈良駅から徒歩5分ほど。阿修羅像は基本的には国宝館でいつでも拝観することができます。仏像と言えば公開時期を限定する秘仏も多いもの。また山奥の辺境にひっそりとおられる仏像もたくさんある中で、阿修羅像は比較的簡単に拝観することができる仏像のひとつです。
ただし人気ある仏像ということで、ごくたまにですが日本各地にお出掛けされたりすることもあるので、阿修羅像目的で奈良を訪れる場合は念のため確認してくださいね。

阿修羅像とは?

阿修羅像はもともと八部衆の一体。八部衆とは仏様を守る8体の神のことです。阿修羅像はその8体のひとつでほかに7人のお仲間がいるのですが、その人気からいまや阿修羅像だけ別格扱い。天平文化を代表する仏像として文化面からも評価されています。美しいものは古今東西みんな惹かれるエネルギーがあるというのがよくわかります。
三面六臂と呼ばれる3つのお顔と6本の腕を持つ阿修羅像。お顔は小顔でスタイルはスリムです。そのバランスはまるで少年のようにも感じられます。
阿修羅像がなぜこれほどまでに人気となったのか。それはやっぱり「美しい」からではないでしょうか。繊細な目元と整ったお顔立ち。そして特筆すべきがその表情です。

阿修羅像の表情から見えてくるもの

阿修羅像のお顔を一度見てみてください。眉間にきゅっとシワを寄せた憂いのある表情が特徴的です。3つのお顔はそれぞれに哀愁や繊細さ、そしてどこか切なくなるような表情のほか悔しさや悩んでいる様子が映し出されています。一体何を表しているのでしょう。
実は起源となるインド神話では阿修羅は戦いの神様として知られています。勢いのある激しい怒りの表情が阿修羅のイメージとなっていますが、興福寺の阿修羅像からはその激しさはあまり感じられません。どちらかというと激しい怒りの一歩先に立った奥行のあるような表情に感じます。
数々の戦を勝ち抜いてきた戦いの神様が敗れたことをきっかけに戦うことの虚しさを感じ後悔の念を抱く……。自分の心と対峙し今までに犯してきた自分の罪を懺悔する姿を現しているという説が一般的なようです。そこには静かだけれども芯のある強さを感じます。

阿修羅像の胸飾り

よく見ると興福寺の阿修羅像は胸元に飾りを付けています。もともと八部衆は仏様を守る役割を担っているとあって他の7人は鎧をまとっていますが、なぜか阿修羅像だけは上半身が裸。その上半身にさりげなく胸飾りを付けているのです。その胸飾りには阿修羅像が静かに願う希望が込められているとされ、それがまた阿修羅像の雰囲気を作り上げているように感じられます。光り輝くものが少なかった遠く天平時代にはいかに宝飾物が人々にとって特別なものであったかという様子が見て取れます。後悔し罪と向き合ったその先に希望の光を見出したというストーリーを含め人々の心に響いてきたのではないでしょうか。

仏像とジュエリー

仏像は仏師と呼ばれる人が心を込めて丹念に仕上げたもの。その一体一体には魂が宿っています。その魂は時代という大きな時間の流れを経ても褪せることなく、今なお私たちが感じることができるすばらしいものです。そんな仏像の強さや美しさはこれまでの長いあいだ多くの人々の心を掴み救ってきました。
それはジュエリーの輝きと通じるところがあります。ジュエリーも長い間人々を魅了し続け自然が造り上げたそのきらめきには同じくエネルギーが詰まっています。
人の心を魅了する何か。そのパワーが仏像にもジュエリーにも宿っています。時代を超えて、世界中で愛され大切にされ守られてきたジュエリーの美しさを今改めて感じたいものですね。

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