ジュエリーの素材として、貴金属や宝石のみでなく、エナメルという色鮮やかな自由度がきく素材があります。
エナメルは、ガラス質の釉薬と言われる液体を金属の上に乗せて、高温で焼きつけます。
その色は、黒や赤、黄色など色鮮やかなもので、エナメルはハイジュエリーからファッションジュエリーまで幅広く取り入れられています。
エナメルの歴史は古く、日本でも古くから使われてきました。
宝石だけでなく、エナメルという素材も知って、いろいろなジュエリーを楽しみましょう。
エナメルとは?
エナメルと言うと、塗料や靴の素材などを思い浮かべる人も多いでしょう。
ジュエリーに使われるエナメルも光沢や発色は、エナメル加工した靴のように色鮮やかで、光沢があります。
ジュエリーのエナメルは、ガラス質のものを金属に乗せ、800度~900度の高温で焼きつける方法で付けます。
リングの腕の部分に色鮮やかな色を乗せたり、ネックレスの昆虫や花(テントウムシなど)チャームの赤を表現するために使ったり、好きなところに色を付けることができるのです。
エナメルは、劣化しにくく、長い間鮮やかな発色を保つことができます。
エナメルは細かいガラス質を液体状に加工して塗布したから、熱を加えて定着させるのですが、その加工の段階の施設環境にも気を付けなければいけません。
特にホコリなどがエナメル塗布中にくっついてしまうと、綺麗な仕上がりのエナメルができなくなってしまうからです。
簡単に塗って、焼けばいいというわけではなく、細心の注意を払いながら作業する必要があります。
ガラス質のものだからと言っても、決して安価なものではなく、何度も焼き付けを行うなど手間もかかる場合もあります。
色鮮やかな色を使えるので、高級ジュエラーなどのデザインでも良く使われています。
エナメルと七宝とは違う?
日本にも、ガラス質の液体を金属に塗布して焼いて仕上げる七宝という技術があります。
七宝もエナメルと同等と思っていても良いでしょう。
日本に七宝が中国から伝わったのは、6~7世紀ごろと言われていて、奈良の正倉院に日本最古の七宝が用いられた品が保管されていると言われています。
また、日本の七宝は、伝統工芸の面が強く、刀の装飾や帯留めなど、生活の中で使われる装身具として17世紀ごろ(江戸時代ごろ)から頻繁に作られるようになりました。
七宝と呼ばれる由来は、仏教の七つの宝物である、「金・銀・瑠璃(るり)・蝦蛄(しゃこ)・瑪瑙(めのう)・真珠・玖瑰(まいえ・まいかい)」の七宝に匹敵するほど美しいからと言う説があります。
特に日本の七宝は、いろいろな色を重ねて焼き付けるので、色彩豊かな表現のものが多いです。
七宝は現代の日本では、個人でも作って楽しめるものとして広まってもいます。
アンティークジュエリーにもエナメルを使っているものがある
エナメルの歴史は古く、古代エジプトの時代までさかのぼります。
19世紀後半には、ヨーロッパのジュエラーであるジュリアーノ一族が着目し、エナメルの重ね付けのジュエリーを手掛けるなど、脚光を浴びました。
また19世紀末のアールヌーボー時代には、エナメルを用いたジュエリーが大流行したのでした。
そのため、現在に残っているアンティークジュエリーの中にも、エナメルで装飾されたジュエリーが数多く残っています。
エナメルジュエリーで気を付けること
エナメルはガラス質なので、強度は高いのですが、それでも永久的に使える物ではありません。
特に指輪などに使われている場合は、ぶつけることが多かったり、水がかかる頻度が多かったり、摩耗などの心配があります。
物によっては、エナメル部分が剥げてしまったり、むけてしまったり、変色してしまったりすることがあります。
エナメルジュエリーは、使ったら柔らかい布などで、汚れを落とすようにしておきましょう。
クリーナーや研磨剤の入ったシートなどで磨いてしまうと、エナメル部分にキズが付いてしまう恐れがあります。
ジュエリーによっては、はがれてしまったエナメルを塗り直してもらえるところもありますが、一緒に付いている宝石などが熱に弱いなどがあると、修理してもらうことができない場合があります。
どのジュエリーを使っても、しまう際には汗や汚れを、柔らかい布で落とす習慣をつけておくと良いでしょう。
まとめ
宝石とは違い、エナメルを使ったジュエリーは、色鮮やかな発色を楽しむことができます。
エナメルはガラス質のため、強度が高く、複雑なデザインにも対応することができるので、鮮やかなファッションアイテムにもなります。
エナメルの技術は、日本には七宝という技術で昔から親しまれてきました。
七宝も様々な色を重ね付けして、シックな雰囲気の装身具であることが多く、趣味で作る人もいます。
春や夏には、花や昆虫などのモチーフのジュエリーに色鮮やかなエナメルを使用していることもあるので、ぜひ手に取って楽しんでくださいね。