ふんわりとした光沢、優しい色合い——真珠には、他の宝石にはない「やわらかさ」があります。その魅力は、ただ美しいだけでは語り尽くせません。実は、真珠は生き物が生み出す、少し特別な存在。自然がつくる偶然の重なりと、人の手による丹念な育成が融合して、ようやくその姿を現します。
本記事では、「真珠は何色なのか?」という素朴な疑問を出発点に、真珠の色の仕組みや光沢の正体、そしてなぜひとつとして同じ色にならないのかまで、科学と感性の両面から深掘りしていきます。知れば知るほど愛おしくなる、そんな真珠の奥深い世界へご案内します。
- 真珠が生物から生まれる理由と種類
- 真珠の色のバリエーションと人気色
- 真珠の光沢の正体は何か
- 色味に影響するタンパク質と有機物
- 真珠が思い通りにいかない理由と魅力
Contents
生物が生み出す宝石 (真珠・パール)
真珠・パールは他の宝石と比較するとき、珍しい宝石といえます。ダイヤモンドやルビーなどの多くの宝石は地球の内部で生まれ、大地の中から産出します。しかし、真珠は海や湖の真珠貝の中で育ち、その真珠貝の中から産出します。
真珠は生物起源の宝石といわれています。真珠は生物である真珠貝から生まれるためにこのように呼ばれています。真珠は宝石の中で特異な種類といえます。
真珠は真珠貝から生まれます。真珠貝にはいくつかの種類があります。日本人によく知られたアコヤ真珠を生み出すアコヤ貝、大粒の真珠が採れる白蝶貝や黒蝶貝、湖水に棲息し、淡水真珠を生み出すイケ蝶貝などがあります。
真珠は生き物が生み出す希少な宝石。
真珠は何色?(パールの色)
真珠の色は真珠貝に影響されます。ここでは、日本人になじみ深いアコヤ貝から生まれるアコヤ真珠を主体に話を進めます。
アコヤ真珠の色は大きく数種類に分けられます。イエロー(黄色)系、ホワイト(白色)系、ブルー(青色)系、ピンク系に大別されます。これらの色系の中で、人気の色はピンク系です。
真珠の色は、ルビーの鮮赤色やブルー・サファイアの鮮青色などと違う独特の柔らかな淡い色をしています。真珠の柔らかな淡い色が日本人の好みに合って、根強い人気を保っていると思われます。
真珠には強烈な赤色や青色は存在しません。ルビーの鮮赤色は、クロムという元素を微量に含むことで発色しています。ブルー・サファイアの鮮青色は、鉄とチタンという元素を微量に含むことで発色しています。
| 色系 | 色の印象 | 備考 |
|---|---|---|
| ピンク系 | 柔らかく温かみがある | 日本人に特に好まれる色合い |
| ホワイト系 | 清潔感があり上品な印象 | フォーマル用途にも多く用いられる |
| イエロー系 | やや珍しく、落ち着いた印象 | 染色ではなく自然色のままで価値あり |
| ブルー系 | クールで個性的 | 光の干渉や有機物の影響で出現する |
アコヤ真珠はピンク系などが人気。
真珠(パール)の柔らかい光沢は極薄の結晶が生み出している
それでは、真珠の独特な柔らかな淡い色は、どのようにして生じるのでしょうか? 真珠には特別な発色の原因があると推測されます。
真珠の発色原因を探るには、真珠の内部構造を知る必要があります。球状の真珠を二つに割って、真珠の断面を知ることで手掛かりが得られます。
流通している多くの真珠には、中心部に核と呼ばれる貝殻の球があります。この核の周囲を真珠層が取り囲んでいます。左の図は養殖真珠の断面を表した模式図です。一番下図の斜線部は核を表しています。円周部の薄い層が真珠層です。その真珠層をさらに拡大すると、一番上図
のように極薄板が何枚も積み重なり、煉瓦積み(ブロック積み)のような構造になっています。
真珠層は一般に0.5ミリ前後の厚さです。私達が真珠を見て楽しむとき、この真珠層を見ていることになります。外側から真珠の核を見ることはできません。

真珠の柔らかな淡い色はこの真珠層に原因しています。真珠層は断面の模式図のように、極薄板で形成されています。この極薄板の厚さは0.3μm~0.5μm(μmはミクロンと読みます。1μmは0・001ミリのこと)です。
極薄板は無色透明でアラゴナイトと呼ばれる結晶です。アラゴナイトは真珠貝の貝殻と同じ組成です。アラゴナイトは海水中に含まれるカルシウム成分を真珠貝が体内に取り込んで、結晶化させたものです。
アラゴナイトの極薄板は、極めて薄い板のため、この板に光が入射すると、光が干渉を起こし、かすかに色がつきます。魅力的なピンク色の真珠は、この干渉色によるものと推測されています。干渉色とは、身近な例としてシャボン玉の虹色が挙げられます。シャボン玉は極薄の水の膜です。極薄の膜に光が入射すると、干渉現象が起こり、虹色が発生します。
真珠における干渉色は、シャボン玉のような鮮やかな虹色に発色しませんが、薄いピンク色に発色したり、真珠独特の柔らかい光沢を生み出しています。
真珠層は極薄板が数千枚も積層して、光の干渉現象を生み出し、真珠独特の柔らかな淡い色を生み出しています。
| 構成要素 | 説明 | 光沢への影響 |
|---|---|---|
| 核 | 貝殻でできた球体。真珠の中心部にある | 外からは見えない |
| 真珠層 | アラゴナイトの極薄板が積層されてできた層 | 光干渉で柔らかな色を生む |
| 極薄板の厚さ | 約0.3〜0.5μm(ミクロン) | 層の厚みにより色味が変化 |
| 積層枚数 | 数千枚規模で積み重なっている | 干渉光の深みを増す |
アラゴナイト層の光干渉が光沢を生む。
真珠(パール)の色味の違いはタンパク質の違い
真珠の色は、真珠層の光の干渉に原因していますが、この他に影響している要因があります。それはタンパク質です。アラゴナイトの極薄板と極薄板の間を接着する役目をタンパク質が果たしています。一般にタンパク質はかすかに黄色味を帯びています。ですから、真珠は基本的にかすかな黄色を帯びていることが普通です。
真珠の色に影響するもうひとつの要因は、真珠貝が周囲の海水または湖水から取り込む有機物です。特にブルー系の真珠の色は、真珠層が形成される初期の段階で核の周りに付着した有機物に原因していると推測されています。
真珠の色は、光の干渉色とタンパク質の色と有機物の色に影響されます。後者のふたつに起因する色は真珠の「地色」または「実体色」、「本体色」と呼ばれて、干渉色と区別されています。
日本人にはアコヤ真珠が浸透していますが、最近では大粒の黒蝶真珠や白蝶真珠もたくさん流通しています。特に黄金色をした大粒のゴールデン・パールは人気があります。
大粒の黒色の真珠を生み出す黒蝶貝は、タンパク質自体が黒色をしています。大粒の銀白色の真珠を生み出す白蝶貝は、タンパク質自体が白色をしています。
大粒の黄金色の真珠を生み出す白蝶貝は、タンパク質が濃い黄色をしています。
タンパク質や有機物が色を左右する。
思い通りにならないのが、真珠の魅力
私達が目にする美しい真珠は、多くの先人達の努力の賜物です。真珠貝は海水や湖水に生きている自然の生物です。人間の思い通りにはなかなかなりません。母貝(真珠貝)の品種改良につぐ改良、長い努力の歴史を経て、今、私達は美しい真珠を手にすることができます。
真珠の色は、母貝の種類、母貝の品種、海水や湖水の環境、養殖期間などに影響されます。そして真珠の色は、生物である母貝が作り出す煉瓦積みの整列した極薄板から生まれる干渉色に最大の特長があります。真珠独特の柔らかな淡い色は、生物が作り出した極薄板のアラゴナイトに原因しています。
自然ゆえの不確かさが美しさにつながる。
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まとめ
真珠は、私たちが一般的に思い描く「宝石」とは異なり、生き物から生まれる極めてユニークな存在です。その色や光沢は、偶然の積み重ねと自然の摂理、そして人の技術が調和した結果として現れます。特に、真珠層を形成する極薄のアラゴナイト結晶が光の干渉を起こすことで、他の宝石にはない柔らかな光を放つという性質は、科学的にもとても興味深いものです。
また、真珠の色味にはタンパク質や有機物も大きく影響し、完全にコントロールできない点こそが真珠の魅力でもあります。同じ環境・同じ母貝でも、ひとつとして同じ真珠ができない——その不確かさこそが、真珠に唯一無二の価値を与えているのです。
- 真珠は生物である真珠貝から生まれる
- アコヤ真珠はピンク系が人気で色は多様
- 柔らかい光沢はアラゴナイト層の干渉による
- タンパク質や有機物が色味に影響する
- 思い通りにならない自然の美が真珠の魅力


