猫の目のような光の帯をもつ宝石
宝石に興味がある人にとって、「キャッツ・アイ」という言葉は聞き慣れているかもしれません。キャッツは猫、アイは目の意味です。ですからキャッツ・アイは猫の目です。
キャッツ・アイ・ストーンは猫の目を示す石のことです。宝石に実際に見られるキャッツ・アイは白色の光の帯です。この光の帯は宝石用語で「光条(こうじょう)」と呼ばれています。
キャッツ・アイを示す石の種類はいくつもあります。例えば、クリソベリル、クォーツ、アパタイト、ネフライト、トルマリン、アクアマリンなどは時にキャッツ・アイを示します。
宝石業界においてキャッツ・アイと言えば、一般にクリソベリル・キャッツ・アイを意味しています。市場の中でクリソベリル・キャッツ・アイが最も高い評価を受けています。クリソベリル自体はベリリウム元素(Be)を含む比較的希少性のある石です。さらにキャッツ・アイを示すことは一層希少性が増します。
す。(写真出所:GIA)
一本の白い細い光の線が現れています。本体の色は暗色味、黒色味を帯びていますが、光条ははっきり出現しています。
本体の色は蜂蜜の色が最高と評価されています。蜂蜜の黄色が最高と言われています。この他の色としては緑黄色、緑褐色、黄褐色、褐色などが産出します。
キャッツ・アイの出現条件
ある石がキャッツ・アイを示すには、次のような条件が必要です。
1.石の内部に直線状の細長いインクルージョン(内包物、異物)がひとつの方向にたくさん存在していること。
2.カボッション・カット(山形形状のカット)であること。
第1の条件について、より小さく細いインクルージョンがより密に分布しているほど、キャッツ・アイはよりシャープでより明瞭に現れます。キャッツ・アイはムーン・ストーンに見られるようなぼんやりした光条よりも、シャープで明瞭さが好まれます。
第2の条件について、ファセット(平らな研磨面)を持つステップ・カット(階段状のファセット・カット)にしてもキャッツ・アイは現れません。山形状のカットにしたときにのみキャッツ・アイが出現します。
希少性の高いキャッツ・アイ
クリソベリル・キャッツ・アイについて、キャッツ・アイを示すこと自体が希ですが、さらに希に変色性を示す石も産出します。変色性とは、光源が変わると、石の色が変わる現象のことです。カラー・チェンジ(チェンジ・オブ・カラー)とも言います。代表的な石の例はアレキサンドライトです。
アレキサンドライトは太陽光のもとでは緑色を示します。しかし、ペンライト(豆球)を当てると、赤紫色に変化します。このように光源を変える(太陽光→ペンライト)と色が変わります。
右の写真の左側は太陽光(または蛍光灯)の下では緑色系に発色します。ペンライトの下では紫色系に発色します。
宝石業界ではキャッツ・アイと言えば、クリソベリル・キャッツ・アイを指します。しかし、他の石でもキャッツ・アイは見られます。キャッツ・アイが見られる石をリストアップすると以下の通りです・
(1)クォーツ・キャッツ・アイ
(2)アパタイト・キャッツ・アイ
(3)ネフライト・キャッツ・アイ
(4)トルマリン・キャッツ・アイ
(5)アクアマリン・キャッツ・アイ
(6)タイガー・アイ などです。
右下の写真はアパタイト・キャッツ・アイです。本体の色は黄褐色です。光条はシャープですが、この石では下部で少し乱れています。アパタイト・キャッツ・アイの色はこの他に青色、緑色もあります。
ネフライト・キャッツ・アイの色はほとんど暗緑色です。トルマリン・キャッツ・アイはピンク色・赤色などです。アクアマリン・キャッツ・アイはほとんど淡青色です。
タイガー・アイ(またはタイガーズ・アイ)について、キャッツ・アイに分類されますが、この石には特別な名前が付けられています。日本名は「虎目石」です。この石の本体は黄色と褐色、濃褐色の縞模様が見られます。光条はぼんやりしています。
キャッツ・アイが現れには、石の内部に特殊な条件が必要です。その条件は細い直線状のインクルージョン(内包物、異物)がひとつの方向にたくさん分布していることです。
細い直線がより細く密に集合していると、光条(白い光の帯)がよりシャープに明瞭になります。このような石の種類は限られます。またキャッツ・アイを示す石でも常にキャッツ・アイを示すとは限りません。キャッツ・アイは大自然が私達に贈ってくれた珍しい宝石のひとつと言えます。