タンザナイトの魅力は、見え隠れする紫色
タンザナイトは今、世界で、そして日本で最も人気のある宝石のひとつです。鮮やかな深い青色は魅力的です。
タンザナイトの外観特長として、鮮やかな青色のボディ(本体)の中にチラチラと紫色が見え隠れすることです。
タンザナイトを傾けたり、方向を変えると紫色がチラチラと見られます。ブルー・サファイアには見られない現象です。タンザナイトの魅力のひとつはこの紫色の出現にあります。
人気のヒミツは、コストパフォーマンスの良さ?!
タンザナイトの人気は魅力的な青色にありますが、他に産地が世界で1ヵ国だけに限られるという特異性も人気に拍車をかけています。
Hills)と呼ばれています。右の地図の矢印はタンザニアを示しています。黒丸印はメレラニ・ヒルズを示しています。
このメレラニ・ヒルズはケニヤとの国境近くにあるキリマンジャロ山の裾野に位置しています。幅2km、長さ8kmの広さです。深さは1kmまで掘り進んでいます。
タンザナイトをビジネスにしている人達はいつも顧客に希少性を説明します。「タンザナイトは世界の中でタンザニアしか採れません。そして埋蔵量は20年ほどで枯渇します。今が買い時です。」と宝石商や小売の販売員が説明します。
確かにタンザナイトは鮮やかな青色と希少性を備えた宝石といえます。比較対象されるブルー・サファイアとタンザナイトとの価格を比べると、タンザナイトの価格はかなり安価で取り引きされています。タンザナイトは美しさと希少性と比較的安価という理由で多くの消費者を惹き付けています。
加熱処理により生まれる青い輝き
タンザナイトは比較的新しい宝石です。最初に発見されたのは1967年です。マサイ族のある男が草原の中に青い光を放つ石を見つけたことが始まりです。今まで褐色や暗緑色の石コロは見慣れていたが、青く光る石に初めて出会いました。
突然に青く光る石が出現した理由は、数日前に落雷があり、草原に火事が発生したからと言われています。この火事によって、褐色や暗緑色の石コロが加熱され、青色に変わったからです。タンザナイトの発見の経緯は、作り話のような側面もありますが、真実を示している側面もあります。
現在、市場に出回っているタンザナイトのほぼすべては、加熱処理によって美しい青色が得られています。加熱処理前のタンザナイトの原石は、褐色や暗緑色で宝石としての魅力はありません。
現状において、タンザナイトの原石は電気炉で加熱処理されています。加熱温度は370度~400度、加熱時間は30分間です。そして電気炉の温度を急激に上げることや下げることは避ける必要があります。原石が破損するからです。
カットで魅せるタンザナイトの紫
加熱処理されたタンザナイトの原石は、方向によって青色と紫色に変わります。下の写真(写真出所:mindat)は加熱処理された原石です。
原石をカット(切断、研磨)する場合、テーブル面に青色が来るようにします。発見された当初は、テーブル面に紫色が出て来ないように工夫してカットされていました。外観を出来る限りブルー・サファイアに近付ける工夫をしていました。
しかし、最近ではタンザナイトだけが持つ特長を引き出すようにカットされています。単にブルー・サファイアに似せるだけでなく、タンザナイトの良さを前面に出すカットに重点を置いています。すなわち、テーブル面に青色と共に紫色がチラチラと見えるように工夫されています。
タンザナイトの生命線は、鮮やかな青色の中に紫色がチラチラと見えることです。ブルー・サファイアでは出せない良さを引き出すことです。
カッター(研磨工)は、原石からルース(裸石)に仕上げる過程で、最高価格で取引できるように全力を傾けます。そのために最高の色を引き出し、出来る限りカラット数を上げ、インクルージョン(内包物、異物)を避けて透明度を落とさない工夫を凝らします。
タンザナイトの色について、方向を変えて観察すると色が変わります。この現象は多色性と呼ばれています。多色性は二色性と三色性に分かれます。タンザナイトは三色性に属します。加熱処理されたタンザナイトの三色は濃青色と淡青色と紫色です。しかし、加熱処理によって三色性が失われて、二色性(濃青色と紫色)になる、との報告もあります。
加熱処理されたタンザナイトの色は安定しています。日常で受ける室内の電灯や室外の日光などで褪色することはありません。
タンザナイトの発色は、微量に含まれるバナジウム元素に原因しています。もし、バナジウムが無ければ、タンザナイトは無色透明になってしまいます。地球に含まれるバナジウムはごく微量です。タンザナイトの本体が微量のバナジウムを取り込む機会は極めて希なことです。現在、タンザナイトが採れる場所は地球上でタンザニアのみです。