半貴石のトルマリン
少し宝石に興味を持っている人達の間では、トルマリンという名前はよく知られています。日本語の名称は電気石です。トルマリンをダイヤモンドやルビー、エメラルドと比較すると、トルマリンは宝石に属するのですか? という疑問を抱く人もいます。
時に宝石を貴石と半貴石に分けることもあります。貴石はダイヤモンド、ルビー、エメラルドなどです。半貴石はアメシスト(紫水晶)、シトリン(黄水晶)、アゲート(めのう)などです。トルマリンはこの半貴石に分類されています。
バラエティ豊かな色
多様な色を持つトルマリンの一般名称と特別名称につて、右表にまとめました。
ネオンブルーのパライバ・トルマリン
この表の中ほどに特筆される名称があります。多くの人に知られるようになった石です。
いろいろな色のトルマリンの中で最も高価な石です。その石はパライバ・トルマリンと呼ばれています。1987年、ブラジルのパライバ州で初めて発見されました。その発見場所の州の名前をとってパライバ・トルマリンと呼ばれています。その石は美しさと希少性から半貴石ではなく、貴石に分類されるべきである、との意見があります。確かにパライバ・トルマリンは美しいです。ネオン・ブルーに例えられる鮮やかな青色をしています。夜の空港の滑走路に見られる鮮烈な青色に似ています。
パライバ・トルマリンは美しさと希少性のため高価です。比較的小粒のパライバ・トルマリンでも高額で取引されています。
パライバ・トルマリンの美しい色は何に原因しているのでしょうか? それは微量に含まれている銅(Cu)とマンガン(Mn)によって発色しています。
銅によって青色に発色し、マンガンによって蛍光色が強調されて、美しいネオン・ブルーになると考えられています。
パライバ・トルマリンはブラジルのパライバ州のみで産出すると思われていましたが、その後、アフリカ大陸でも発見されました。ここで、アフリカで産出した鮮やかな青色のトルマリンもパライバ・トルマリンと呼ぶのか、という議論が起こりました。
パライバとはブラジルのひとつの州の名前です。アフリカ産のトルマリンにパライバを付けることに異論が出ました。
鮮やかな青色のトルマリンについて、ブラジル産でもアフリカ産でも基本的な成分は同じです。発色の微量成分である銅とマンガンは同様に含まれています。そこで、国際的に次のように定義付けました。「パライバ・トルマリンとは、青色から緑青色のトルマリンで銅とマンガンを微量に含むこと」としました。この定義に基づくと、産出国は問わないということになります。
市場には少し色が薄いパライバ・トルマリンも多く出ています。パライバ・トルマリンの美しさを耳にしていた消費者の方は、この薄いパライバ・トルマリンを見て、がっかりするかもしれません。確かに強烈な美しさはないかもしれません。
しかし、市場には強烈な美しさを放つパライバ・トルマリンもあります。百貨店の宝石コーナーや宝石店に陳列されている高価格のパライバ・トルマリンを見ていただくと、その美しさに魅せられることと思います。
パライバ・トルマリンはいろいろな色を持つトルマリン中で最も人気があり、高価です。
多様な色彩を楽しめるトルマリン
その次に魅力がある色は赤色です。レッド・トルマリンです。レッド・トルマリンは市場ではルベライトと呼ばれています。
比較的良質のルベライトは、一見するとルビーに似ています。しかし、良質のルビーと比較すると、色相が違います。ルビーは鮮烈な赤色です。ルベライトの色は多少黒色味を帯びた赤色という感じです。
少し質の劣るルビーでは、外観がルベライトに似ており、ルビーとルベライトを識別することが難しくなります。
緑色のグリーン・トルマリンも市場でよく出会う石です。エメラルドのような鮮烈な緑色ではありません。少し黒色味を帯びた緑色です。
市場では、茶色のブラウン・トルマリンもよく見られます。この色自体はそんなに魅力はありませんが、他の色のトルマリンと組み合わせて、色の多様性を楽しむ場合に使われます。
黒色のブラック・トルマリンも市場でよく見かける石のひとつです。ブラック・スピネルと同じようにアクセサリー店にネックレス等として並んでいます。
トルマリンはしばしば二色が接している状態で産出ことがあります。このような石はバイ・カラー・トルマリンと呼ばれています。バイは「二」という意味です。同時に二色が見られる石をいいます。最も魅力的な二色の配色は赤色またはピンク色と緑色が接している場合です。
バイ・カラー・トルマリンの中で、特にウォーター・メロン(スイカ)と呼ばれるトルマリンは宝石のコレクターや鉱物のコレクターにとって魅力的です。
そのウォーター・メロンは、中心部が赤色またはピンク色で、中心部の外側が緑色で取り囲まれています。スイカを切ったときの断面に似ています。
初めてウォーター・メロン・トルマリンを見られた方は、地球が創り出した造形美に驚かれ、しばらく自然の不思議さに想いを馳せることと思います。