ガーネットと聞くと、多くの人が思い浮かべるのは、深みのある赤い宝石。ですが、実はその色合いや種類は想像以上に多彩で、緑やオレンジ、紫にまで広がっています。色の違いは見た目の美しさだけでなく、ガーネットの成分や産地、その成り立ちの物語まで映し出しているのです。

赤の中にも微妙な違いがあり、緑にもさまざまな魅力が隠されています。そして、種類が混ざり合うことで生まれる、唯一無二の美しさもあります。

この記事では、そんなガーネットの世界を色合いごとに分かりやすく解説していきます。ぜひ最後まで読んで参考にしてください。

この記事で分かること
  • ガーネットの代表的な色「暗赤色」の魅力
  • 赤色系ガーネットの種類と特徴
  • 緑色系ガーネットの希少性と価値
  • 色の混ざり合いによって生まれる多彩な表情
  • 変色性を持つ特別なガーネットの存在

暗赤色のガーネット

ガーネットという名前を聞くと、多くの人は黒色味を帯びた赤色の石を思い浮かべると思います。それほどこの色のガーネットが広く流通しています。今では宝飾品の他にアクセサリー商品にまでこの色のガーネットが使われています。この色の石は比較的安い価格ですので、広く普及して多くの人の目に触れています。
ガーネットにはこの暗赤色の他に緑色やオレンジ色もあります。最近では紫色も発見されています。

この章のポイント
 最も一般的で広く親しまれる暗赤色のガーネット

赤色系のガーネット

ガーネットを組成(化学組成)からながめると、6種類に分けられます。その6種類は右図(六角連環図)のような名称で呼ばれています。
図中の左側(1~3)は概ね赤色から黄色、オレンジ色です。右側は概ね緑色が主力です。
図中の1番目はアルマンディン・ガーネットと呼ばれ、私達がもっとも接する機会の多いガーネットです。色は暗い赤色です。通常、ガーネットと言えば、このアルマンディン・ガーネットのことです。この色は鉄に原因しています。アルマンディン・ガーネットは世界の多くの国で産出します。特にインド産がたくさん出回っています。

2番目はパイロープ・ガーネットと呼ばれ、色は血赤色、紫赤色です。この色は主にクロムという元素によるものです。この他に鉄にも影響されています。
1番目と2番目のガーネットはお互いに混じり合う性質があり、中間の組成を持つロードライト・ガーネットが生まれます。ロードとはバラという意味で、ピンク色から紫色を帯びた石の呼び名に使われます。
このロードライト・ガーネットの一種ですが、2016年、今まで見られなかった強い紫色を示すガーネットがモザンビーク(アフリカ)で発見されました。
この新種のガーネットは一般にグレープ・ガーネットと呼ばれています。熟れたブドウの紫色に似ていることから、このように呼ばれています。
3番目はスペサルティン・ガーネットと呼ばれる種類です。市場に流通しているこの種類のガーネットには、オレンジ色をしたマンダリン・ガーネット(黄橙色)とタンジェリン・ガーネット(赤橙色)があります。

種類色味主な発色要因特徴や産地など
アルマンディン暗い赤色最も流通量が多く、インド産が豊富
パイロープ血赤色・紫赤色クロム+鉄鉄との混合でロードライトが生まれる
ロードライト(混合種)ピンク~紫色クロム+鉄「バラのような色」、中間的な組成
グレープ・ガーネット強い紫色詳細不明(クロム系)モザンビークで2016年に発見された新種
スペサルティンオレンジ色系マンガンマンダリン(黄橙)やタンジェリン(赤橙)あり
この章のポイント
鉄やクロムなど成分で変わる赤系の彩り

緑色系のガーネット

4番目はアンドラダイト・ガーネットです。市場に流通しているこの種類の宝石としてデマントイド・ガーネットがあります。ガーネットの中で最も高価な石です。
デマントイドとはダイヤモンドのようなという意味です。確かに緑色をした光輝く石です。特にロシア産の「ホース・テール」(馬の尻尾)と呼ばれるインクルージョン(内包物、異物)を持つデマントイド・ガーネットは高額です。本当に馬の尻尾と思われるようなインクルージョンもあります。あるいは尻尾の一部だけのインクルージョンもあります。馬の尻尾は幸運を呼ぶと信じられ、ヨーロッパでは古くから人気がある石です。
この馬の尻尾はクリソタイルと呼ばれる鉱物で、ロシア産のデマントイド・ガーネットのみに見られます。ナミビア(アフリカ)でもデマントイドは産出しますが、馬の尻尾は見られません。デマントイドの結晶が成長するときの周囲の環境が違うからです。
5番目はグロッシュラー・ガーネットです。この種類に属するガーネットが市場にいくつか流通しています。ツァボライトやハイドロ・グロッシュラー、ヘッソナイトなどの石が挙げられます。
ツァボライトは緑色の石です。この石はケニヤのツァボ公園周辺で産出することからこの名前が付けられました。ハイドロ・グロッシュラーは緑色の地色に黒色の粒のインクルージョンが見られる石です。ヘッソナイトは褐赤色から黄橙色の石です。
6番目はウバロバイト・ガーネットです。これに属する宝石質のガーネットは産出していません。小さくて不透明のため宝石に適しません。この種類のガーネットはクロムを含むため、緑色に発色します。

種類色味特徴・産地など
デマントイド鮮やかな緑ロシア産は馬の尻尾インクルージョンで高額
ツァボライト濃い緑ケニア・ツァボ国立公園周辺で産出
ハイドロ・グロッシュラー緑+黒粒入り緑地に黒のインクルージョンが見られる
ヘッソナイト褐赤~黄橙色グロッシュラー系だが色は緑ではない
ウバロバイト鮮やかな緑宝石質は産出せず、小さく不透明で非宝石向き
この章のポイント
希少性が高く輝きも美しい緑系ガーネット

混ざりあって生み出される美しい色合い

ガーネットは六角連環図に示したように6種類あります。そしてこの6種類がお互いに混じり合うことが知られています。
特に1番目のアルマンディンと2番目のパイロープ、3番目のスペサルティンは容易に混じり合います。
1番目のアルマンディンは自身の組成が鉄で構成されています。発色は鉄に支配されて暗赤色になります。通常、宝石は鉄を不純物として含むが、このアルマンディンでは鉄が主組成となっています。2番目のパイロープの血赤色は微量に含まれるクロムに原因しています。3番目のスペサルティンは自身の組成がマンガンで構成されています。マンガンはピンク色に発色します。
1番目と2番目、3番目はお互いに混じり合って、複雑な組成になりますが、色については鉄とマンガンに支配され、暗赤色から橙色、紫色になります。
さらにこの3種類が混じり合って、不純物としてバナジウム、クロムが加わり、アレキサンドライトのような変色性を示すガーネットも発見されています。
変色性とは、光源の種類が変わると色も変わる現象で、蛍光灯や太陽光の下では青色から緑色を示し、豆球ペンライトの下では赤色になるガーネットもあります。
アルマンディン・ガーネットは濃い暗赤色で産出することが多く、カボッション・カット(山形の形状)された石は、より透明感を上げるために内側をくり抜くことも行われています。この石はカーバンクルと呼ばれています。
私達が目にする多くのガーネットはアルマンディン・ガーネットです。ステップ・カット(階段状の平らな面で囲まれた形状)されたこの石は、上から見ると暗赤色です。しかし、側面(ガードル側)から見ると、茶色に見える特徴があります。この茶色はアルマンディン・ガーネットと判断するときのひとつ目安になります。

この章のポイント
成分の融合が色の深みを生む

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まとめ

ガーネットは、その見た目の印象以上に奥深い宝石です。赤や緑といった代表的な色の背景には、鉄やクロム、マンガンなど、成分ごとの発色要因があります。特にアルマンディン・ガーネットは最も流通しており、深い赤が多くの人に親しまれています。一方で、クロムによる血赤色のパイロープや、マンガンを含むオレンジ系のスペサルティンなど、赤色系だけでも実に豊かなバリエーションがあります。

緑色系のデマントイドやツァボライトは、稀少性が高くコレクターにも人気です。そして、複数のガーネットが混ざり合うことで、唯一無二の色彩が生まれ、時には変色性を持つ神秘的な個体も発見されています。色だけでなく、構成や産地によっても魅力が変わるガーネットは、知れば知るほど奥が深い宝石です。

この記事のまとめ
  • 暗赤色のガーネットは最も一般的な色
  • 赤色系は鉄・クロム・マンガンにより多彩に発色
  • 緑色系ガーネットは希少性が高く、高価な種類も存在
  • 混ざり合ったガーネットは複雑な色と個性を持つ
  • 変色性を示すガーネットもあり、奥深い魅力を放つ
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