サンゴ(珊瑚)は、古くから世界中で愛されてきた海の宝石です。「コーラル」という呼び名も一般的になってきましたが、ここでは馴染み深い「サンゴ」という言葉で統一します。かつては地中海産のサンゴが「胡渡り(こわたり)珊瑚」として日本にもたらされていましたが、江戸時代末期から明治時代初期にかけて高知県沖でサンゴが発見され、日本産サンゴも世界的に知られるようになりました。特にその美しい赤色は多くの人々を魅了し続けています。しかし、サンゴの色は赤だけではありません。本記事では、知られているようで意外と知られていないサンゴの色の多様性、それぞれの色の特徴、さらには産地や海の深さによる分類、そしてサンゴが持つ宝石としてのユニークな側面について詳しく解説します。最後までお読みいただければ、サンゴの豊かな色彩の世界を知り、自分だけのお気に入りを見つけるヒントが得られるでしょう。
- サンゴの色の主な種類(赤、桃、白、黒)
- 赤色サンゴの細かな分類(血赤、赤、紅)とその特徴
- 桃色、白色、黒色サンゴの魅力と見分け方
- 採取地域や海の深さによるサンゴの分類
- サンゴが生物由来の宝石であること、その色の秘密
Contents
サンゴにはさまざまな色があります
サンゴ(珊瑚)は、英語で「Coral(コーラル)」と表記されます。ご年配の方には「サンゴ」という言葉の方が馴染み深いかもしれませんが、最近のウェブサイトなどでは「コーラル」という表記も増えてきました。この記事では、より多くの方に親しみのある「サンゴ」という言葉で統一して解説を進めます。
サンゴは古くからヨーロッパ、中国、そして日本で貴重品や宝物として大切に扱われてきました。当初は地中海で採取されたサンゴのみが流通しており、日本へは「胡渡り(こわたり)珊瑚」として輸入されていました。その後、江戸時代末期から明治時代初期にかけて高知県沖で良質なサンゴが採取されるようになり、日本産のサンゴも世界的に知られるようになりました。特に、その鮮やかで深みのある赤色は多くの人々を魅了し続けています。
「サンゴ」と聞くと、まず赤色を思い浮かべる方がほとんどでしょう。しかし、サンゴには赤以外にも様々な色が存在します。一般的にサンゴの色は、以下のように分類されています。
- 赤色サンゴ(または赤サンゴ)
- 血赤サンゴ
- 赤色サンゴ
- 紅色サンゴ(または紅サンゴ)
- 桃色サンゴ(または桃サンゴ)
- 白色サンゴ(または白サンゴ)
- 黒色サンゴ(または黒サンゴ)
サンゴは赤色以外にも桃色、白色、黒色など多様な色があり、赤色サンゴはさらに細かく分類される
最もポピュラーな「赤いサンゴ」の世界
赤色サンゴは、その名の通り赤色系のサンゴ全般を指します。しかし、一口に「赤」と言っても、その色合いは非常に幅広く、暗く濃い赤色から、オレンジ色や黄色味を帯びた明るい赤色まで様々です。そのため、赤色サンゴはさらに以下の3種類に細かく分類されます。
- 血赤サンゴ(ちあかさんご):まるで血のような濃く深い赤色をしたサンゴで、サンゴの中では最も高い評価を受け、価格も最高級とされています。英語圏では「オックス・ブラッド(Ox Blood)」とも呼ばれ、その名の通り雄牛の血のような力強い赤色が特徴です。
- 赤色サンゴ(あかいろさんご):一般的な「赤色」を示すサンゴで、血赤サンゴほど濃くはないものの、鮮やかで美しい赤色を持っています。幅広い宝飾品に用いられるポピュラーなタイプです。
- 紅色サンゴ(べにいろさんご):基本的な色調は赤色ですが、オレンジ色や黄色味を帯びた、やや明るめの赤色を指します。日本の伝統色である「緋色(ひいろ)」に近い色合いもこの紅色サンゴに該当します。


赤色サンゴは濃さや色味によって血赤・赤・紅に分類され、特に血赤サンゴは最高級品として扱われる
赤だけじゃない!桃色・白色・黒色のサンゴたち
赤いサンゴが有名ですが、他にも魅力的な色のサンゴが存在します。ここでは、桃色サンゴ、白色サンゴ、黒色サンゴについてご紹介します。
桃色サンゴ
桃色サンゴは、白色を基調としながら、ほんのりと赤色味、オレンジ色味、あるいはピンク色味を帯びた優しい色合いのサンゴです。特に、淡いピンク色のものは英語圏で「エンジェル・スキン(Angel Skin)」と呼ばれ、その名の通り天使の肌のような繊細な美しさから高い評価を受けています。写真の桃色サンゴは、白色をベースにオレンジ色やピンク色が混ざり合った柔らかな色調が特徴です。

白色サンゴ
白色サンゴというと純白をイメージするかもしれませんが、実際には純粋な白色のものはかなり少なく、多くは淡い褐黄色やアイボリー(象牙色)に近い色合いをしています。その落ち着いた色味は、上品で清楚な印象を与えます。写真の白色サンゴも、真っ白というよりは温かみのある白さが特徴です。

黒色サンゴ
黒色サンゴの原木は、研磨することでしっとりとした光沢のある美しい黒色に仕上がります。そのシックでモダンな雰囲気は、他の色のサンゴとはまた違った魅力があり、男女問わず人気があります。写真の黒色サンゴは、深みのある黒と艶やかな質感が特徴的です。

桃色サンゴは優しい色合い、白色サンゴは上品な印象、黒色サンゴはシックな魅力を持つ
色だけじゃない!採取地域や海の深さによる分類
サンゴは一般的に色で分類されますが、それ以外にも採取された地域名や海の深さで呼ばれることがあります。例えば、「地中海サンゴ」という言葉は広く知られており、歴史的にも価値の高いサンゴとして有名です。
採取地域による分類では、地中海サンゴの他に、日本近海サンゴ、東シナ海サンゴ、南シナ海サンゴ、ミッドウェイ海域サンゴなどが挙げられます。これらの産地によって、サンゴの色合いや品質に特徴が見られることもあります。
また、サンゴが採取される海の深さによっても分類されることがあります。「深海サンゴ」という言葉も使われ、これは文字通り深い海で採れるサンゴを指します。一般的に水深200メートルよりも深い場所で採取されるものを深海サンゴと呼ぶことが多いようです。これに対して、水深50メートルから200メートル程度で採取されるサンゴは「浅海サンゴ」と呼ぶこともできますが、この言葉はあまり一般的には使われていません。
分類方法 | 具体例 |
---|---|
色による分類 | 赤色サンゴ(血赤、赤、紅)、桃色サンゴ、白色サンゴ、黒色サンゴ |
採取地域による分類 | 地中海サンゴ、日本近海サンゴ、東シナ海サンゴ、南シナ海サンゴ、ミッドウェイ海域サンゴなど |
海の深さによる分類 | 深海サンゴ(水深200m以深など)、浅海サンゴ(あまり使われない) |
サンゴは色だけでなく、採れる場所(地中海、日本近海など)や海の深さ(深海サンゴなど)でも分類される
自然のまま育つ、唯一無二の生物由来宝石
サンゴは、真珠と同じく海から採取される宝石です。しかし、その成り立ちには大きな違いがあります。真珠は、母貝(真珠貝)に人工的に核(異物)を挿入し、その後、人の手によって管理された海で養殖され、採取されます。つまり、真珠の生成には人の手が大きく関わっています。
一方、サンゴは海底で自然のままに成長し、人の手が加えられることなく採取されます。サンゴ虫という小さな生物が、気の遠くなるような長い年月をかけて少しずつ骨格を形成し、それが私たちが目にするサンゴの原木となるのです。この点で、サンゴは完全に自然の力によって育まれる、非常に貴重な生物由来の宝石と言えます。
サンゴや真珠、象牙、べっ甲、ジェットといった生物が生み出す宝石は「生物起源宝石(または生物由来宝石)」と呼ばれます。これらは、ルビーやサファイアといった鉱物起源の宝石(非生物起源)と比較すると、一般的に硬度が低く、耐久性の面では劣ります。しかし、日常的に使用する上で過度に神経質になる必要はありません。頻繁な使用や、強い衝撃、過度な日光への長時間の照射、洗剤を使った水洗いなどを避ければ、その美しさを長く保つことができます。
サンゴは人の手を介さず自然に成長する生物由来の宝石で、他の鉱物宝石に比べ硬度は低いが日常使いは可能
サンゴの美しい色はタンパク質由来
さて、赤色系のサンゴの美しい色は、一体何に由来しているのでしょうか?多くの宝石は、その結晶構造の中に微量の不純物元素が含まれることで特定の色を発します。例えば、ルビーの鮮やかな赤色は微量のクロム元素、ブルー・サファイアの深い青色は微量の鉄元素とチタン元素が原因です。
しかし、サンゴの発色メカニズムはこれらとは異なります。サンゴの本体は主に炭酸カルシウムという無機物でできていますが、その赤色の発色には、サンゴの組織内にわずかに含まれるタンパク質(有機物)が関与しています。このタンパク質は「カロテノイド」と呼ばれる天然色素の一群で、具体的にはアスタキサンチンやカンタキサンチンなどが赤色の原因物質と考えられています。サンゴ虫は、海水から炭酸カルシウムと共に、これらの発色原因となるタンパク質を体内に取り込んでいるのです。
一方で、黒色サンゴは他の色のサンゴとは少し組成が異なります。赤色や桃色、白色サンゴの本体が炭酸カルシウム(無機物)であるのに対し、黒色サンゴの本体は主にコンキオリンというタンパク質(有機物)で構成されています。このタンパク質自体が黒色を帯びているため、黒い色になると考えられています。このように、サンゴの色は、その種類によって異なるメカニズムで生み出されているのです。
赤色系サンゴの色はカロテノイドというタンパク質(有機物)に由来し、黒色サンゴはコンキオリンというタンパク質でできている
まとめ
サンゴの色は、一般的に知られる赤色だけでなく、桃色、白色、そして黒色と、実に多様性に富んでいます。特に赤色サンゴは、その濃淡や色味によって「血赤サンゴ」「赤色サンゴ」「紅色サンゴ」と細かく分類され、それぞれに異なる魅力と価値があります。また、優しい色合いの桃色サンゴ(エンジェル・スキン)、上品な白色サンゴ、シックな黒色サンゴも、独自の美しさで人々を惹きつけています。
サンゴは色だけでなく、採取される地域(地中海、日本近海など)や海の深さ(深海サンゴなど)によっても分類されることがあります。そして何よりも、サンゴは人の手を介さずに自然の力だけで成長する貴重な生物由来の宝石であるという点が大きな特徴です。その美しい色は、ルビーやサファイアのような鉱物宝石とは異なり、カロテノイドやコンキオリンといったタンパク質(有機物)に由来しています。
このように、サンゴはその成り立ちから色の種類、発色のメカニズムに至るまで、他の宝石にはないユニークな魅力に満ちています。それぞれのサンゴが持つ個性豊かな色彩と、それが育まれた海の神秘に思いを馳せながら、あなたにとって特別なサンゴを見つけてみてはいかがでしょうか。
- サンゴの色は赤、桃、白、黒など多様で、赤サンゴは血赤、赤、紅に細分化される。
- 桃色サンゴ(エンジェル・スキン)、白色サンゴ、黒色サンゴもそれぞれ独自の魅力を持つ。
- サンゴは採取地域(地中海、日本近海など)や海の深さ(深海サンゴ)でも分類される。
- サンゴは人の手を介さず自然に成長する生物由来の宝石である。
- サンゴの赤色や黒色は、カロテノイドやコンキオリンといったタンパク質(有機物)に由来する。