フェルスパーとは?

フェルスパーは日本語で「長石」と呼ばれています。フェルスパーはクォーツ(石英)と共に大地を構成する重要な鉱物です。大地の大半を占めていることから、私達が大地を歩くと、フェルスパーを踏んでいることになります。
ここで、フェルスパーとは何かを少し深堀してみます。フェルスパーは次の化学組成で示される鉱物を言います。XAlSi3O8またはYAl2Si2O8という組成を持つとフェルスパーになります。
ここでXはカリウム(K)やナトリウム(Na)などです。Yはカルシウム(Ca)などです。宝石に深く関係するフェルスパーは3種類です。オーソクレース(正長石、カリウム長石)とアルバイト(曹長石、ナトリウム長石)とアノーサイト(灰長石、カルシウム長石)です。それぞれの化学組成はKAlSi3O8とNaAlSi3O8とCaAl2Si2O8です。

ラメラ構造

ムーンストーンやラブラドライトに見られる光の干渉による独特な美しさは、ラメラ構造に原因しています。ラメラとは層状という意味です。
両石(ムーンストーンとラブラドライト)の本体はフェルスパー(長石)で構成されています。ムーンストーンはオーソクレースとアルバイトと呼ばれている2つのフェルスパーで構成されています。ラブラドライトはアノーサイトとアルバイトと呼ばれている2つのフェルスパーで構成されています。
両石とも2種類の薄いフェルスパーが交互に積層しています。ですから、両石はラメラ構造をしています。異質の薄層が接している状態(ラメラ構造)のものに光が当たると、光の干渉現象が起こります。干渉現象が起こると、独特な白色、淡青色、さらに虹色が生じます。
ムーンストーンやラブラドライトはラメラ構造を持っていることで、光の干渉現象が起こり、独特な光の効果を示す宝石となっています。

固溶体

類似の化学組成を持つ物質同士は高温で溶け合い、均質な固体となります。このような固体は固溶体と呼ばれています。ムーンストーンやラブラドライトなどを構成しているオーソクレースやアルバイト、アノーサイトは類似の化学組成を持っています。ですから、高温でお互いに溶け合い、固溶体を形成します。
高温で溶け合っていた各フェルスパー(オーソクレース、アルバイト、アノーサイト)は、所定の条件の冷却過程(ゆっくりした冷却など)で離溶(分離)して、薄い層を形成します。ラメラ構造を形成します。

アデュラレッセンス

ムーンストーンに見られる柔らかな独特の光の現象を言います。単純に光が表面で反射されているわけではありません。確かに反射されているのですが、干渉と呼ばれている特殊な反射が起こっています。
ムーンストーンの本体はフェルスパー(長石)で構成されています。さらにそのフェルスパーはオーソクレースとアルバイトと呼ばれている2種類のフェルスパーで構成されています。
この2種類のフェルスパーは高温からの冷却過程で薄層を形成します。2種類の薄層が接していると、光の干渉現象が起こります。薄層の厚さによって干渉色は変わります。
比較的厚い層の場合は白色の干渉色となります。比較的薄いと青色に発色します。

ラブラドレッセンス

ラブラドライトに見られる青緑色、緑青色、灰青色、灰緑色などの閃光色(ある方向で、一瞬に見られる光の色)を発する現象を言います。
ラブラドライトの本体はフェルスパーで構成されています。さらにそのフェルスパーはアノーサイトとアルバイトと呼ばれている2種類のフェルスパーで構成されています。
これらの2種類のフェルスパーは交互に薄層となって積層しています。薄層が接していると、光の干渉現象が起こります。そして干渉によって発色します。
ラブラドライトの美しい色の発色は、干渉色だけの原因ではない、と推測されています。極薄い小さな結晶、磁鉄鉱、赤鉄鉱などの結晶が層になって存在していることで、光が反射して閃光色を発していると考えられています。

状態図

ムーンストーンはオーソクレース(正長石)とアルバイト(曹長石)と呼ばれているフェルスパー(長石)で構成されています。ラブラドライトはアノーサ
イト(灰長石)とアルバイトと呼ばれているフェルスパーで構成されています。
しかし、実際にはムーンストーンにもわずかにアノーサイトの成分が入り込んでいます。
同じようにラブラドライトにもわずかにオ-ソクレースの成分が入り込んでいます。
3つのフェルスパーが相互に入り込んでいる状態を表したものが右の状態図です。3成分がどのように混合しているかを正確に知るには状態図を利用する必要があります。ムーンストーンの成分は状態図の中のサニディンに該当します。ラブラドライトの成分は図中のラブラドライトに該当します。

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