宝石業界でくどいように聞く、「レアストーン」という言葉。
ただ宣伝文句のように利用される傾向こそありますが、今回は世界で数十ピースしか存在しない、真実のレアストーン「マスグラバイト」についてお話していきたいと思います。
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マスグラバイトとは?ジュエリー、宝石業界も大注目、最上級のレアストーン
宝石マニアでもそのレア度、価格がゆえに手に入らないレアストーンがあります。そう、それが今回の主人公マスグラバイト。リングやピアスに加工しようにも、そもそもあまりに数が少なすぎて宝飾品として存在し得ない、そんなレベルの宝石です。
ここではまずマスグラバイトとはどんな宝石なのかについて迫っていきたいと思います。
スピネルに似た宝石マスグラバイト!珍しさの秘密はココにあり
マスグラバイトは1967年にオーストラリアのマズグレーブ鉱山で見つかった宝石であり、世界で最も珍しい宝石の1つとして認知されています。マスグラバイトとして流通していますが、IMA(International Mineral Asociation)により新しいネーミングが付けられ、現在はMagnesiotaaffeite-6N’3S という頭がクラクラする名前になりました。ただし現在もマスグラバイトの名前が使われていますが……。
マスグラバイトの存在が確認されて約50年程ですが、未だにその数が増えない理由は産出場所が限られていることと宝石質の石が非常に少ないことに起因。現在マスグラバイトが発掘可能な場所は、前述のオーストラリアの他にグリーンランド、スリランカ、タンザニア、ミャンマーなどですが、宝石品質の石はスリランカ、タンザニアで産出されます。
マスグラバイトは(Mg,Fe2+,Zn)2Al6BeO12 で表され、ベリリウム、アルミニウムとマグネシウムを含みスピネルと似た化学組成を示し、その特徴硬度や色合いは非常に似たものとなっています。
またこのマスグラバイトは、希少性からギネスブックにも記載されたことがあるターフェタイトと呼ばれる石の中から発見されました。またそのターフェタイトは、スピネルが産出される場所から採掘されます。つまるところ、スピネルの中から少しのターフェタイトが産出し、その希少なターフェタイト数十石の中から1石のマスグラバイトが取れるという事です。(ターフェタイトの10~15%程度がマスグラバイトと言われています。)
因みにマスグラバイトとターフェタイトは密度や屈折率での鑑別は不可能で、Raman分光法やX-Rayを利用することで鑑別ができるようになりました。
1967年に発見されて以来、1993年~2005年の間ファセットカットができるジェムレベルのマスグラバイトは見つからず、その当時は世界でたった8つのマスグラバイトの標本しか見つからなかったそう……。いかにその数が少ないか、キングオブレアと形容されるその訳を分かって頂けたでしょうか!
超希少宝石マスグラバイトの特徴まとめ
ここでわかりやすくマスグラバイトの特徴について解説していきたいと思います。
まず気になるそのカラーですが、主にパープル、グレー、オリーブグリーン、ダークグリーン、ペールブラックまたはカラーレスを示す石がほとんどで、ブラックパープルの形容がピッタリ!という石が多いようです。
スピネルのように鮮やかなピジョンブラッドを彷彿とさせるレッドやコーンフラワーのような深い青色のマスグラバイトは現在のところ見つかっていません。
モース硬度も高く8~8.5ですが、結晶系がスピネルの等軸晶系と異なり、六方晶系である為、複屈折を示すことが大きな違いと言えるでしょう。
前項でも述べた通り、ジェム加工可能な原石が非常に限られているので、1カラットオーバーの石は少なく、現在流通しているルースでも0.5カラットにも及ばない石がほとんどです。
希少石でありながら石留め師に嫌われない硬度を誇りますが、実際ジュエリーとしての登場機会はほぼ皆無!
つまり宝石通の方がひっそり夜中にルースを眺め薄笑いを浮かべて楽しむ!、これがマスグラバイトという宝石なんです!
やっぱりお高いんでしょ?気になるマスクバライトルースの価格はどれくらい?
そもそも普通に生きていたら、知らずに通り過ぎてしまう宝石、それがマスグラバイト。しかしネットに転がる画像を見てみると、なかなかクールでカッコいい色合いとの声も多いのです。
さてここで気になるのがその価値について。1カラットを超えたら博物館級と言われるマスクバライト、いったどれくらいの価格で取引されるのでしょうか?
高品質、1カラット越えのマスクバライトは数百万レベルも少なくない!
まず日本で流通していると思われるマスグラバイトも、その殆どは前述の通り0.5カラット以下の重量の小さなもの。しかしその価格は一番経済的なものでも10万円を切るルースはほとんどありません。
勿論個々のカラーやカラットにもよるので、ハッキリとした経済価値を明確にすることはできませんが、20万~50万円台のルースが比較的よく見られますが、カラット数が大きくなるにつれその市場価値が高くなることは言うまでもありません。
なおマスクバライトは1カラット当たり35,000ドルの価値があると言われましたが、現在は若干その価格も落ち着きを示してきたようです。どちらにしても、35,000ドルレベルのものは少ないとしても、100万円を超える品質のマスグラバイトはしばし市場に登場し、宝石マニアたちからため息がこぼれています。
清水の舞台から飛び降りる覚悟がないとなかなかお財布も緩みませんが、マスクバライトの縁戚と言っても過言ではないスピネルも十分魅力的な宝石ですし、何よりルースもジュエリーも豊富ですので、気になる方はスピネルから愛でてみてはいかがでしょうか?
Pt900 ピンクスピネル ピアス
まとめ
実はこのマスグラバイト、某テレビ番組の中で有名な宝石商により紹介された宝石なんです。
スピネルに似た結晶構造、薄いパープル、グレー~ブラックカラーの目立たないカラーのマスグラバイトですが、現在確認されているのは世界でも30、40石とも言われる位の希少性を誇ります。
化学組成が類似しているスピネルと比べてカラーヴァラエティーが少ない宝石ですが、もしあなたがどこかの宝石ショーまたはオンラインショップで見かけた瞬間こそお迎えすべきベストタイミングになるのかもしれませんね。