ダイヤモンドは燃える炭素である

イギリスのスミッソン・テナント(Smithson Tennant、1762年~1815年、化学者、イギリス、後にケンブリッジ大学教授)は、金(ゴールド)で作られた管の中に小さなダイヤモンドを入れ、空気を送りながら、加熱させる実験を行いました。その管の先は石灰水の容器を通す工夫をしていました。
1797年、テナントは「ダイヤモンドは炭素(C)でできている」と発表しました。
ダイヤモンドを燃焼させる実験で、石灰水が白濁し、管の中にはダイヤモンドの痕跡は何もありませんでした。この結果から、炭酸ガスが発生し、その炭酸ガスの元は炭素であり、炭素の元はダイヤモンドである、と断定しました。
テナントの発表を受けて、世界中の科学者、知識人は、「ダイヤモンドは強烈な硬さを持っているが、簡単に燃えるものである」という特性を認識しました。
現在では、多くの人が思っているかもしれません。ダイヤモンドは火事に遭う(遭遇する)と燃えてしまう、と思っている人が多いかもしれません。

ダイヤモンドはどのように燃えるのか

実際にダイヤモンドが火事に遭うとどのようになるのでしょうか? 深堀してみます。
先ず、火事が起きたときの燃える温度を把握しておく必要があります。消防関係者の話では、約800度と言います。しかし、勢いよく燃える炎の個所では1000度~1200度と言います。
この情報から、例えばダイヤモンドのリングがジュエリー・ボックスに入れられて、タンスの上に置かれていた場合を想定します。この状況で火事に遭った場合、ジュエリー・ボックスが燃えても、中のダイヤモンドは高々800度くらいになると推測されます。
電気炉で実験しました、800度で30分間、加熱する実験を行いました。下図は電気炉の模式図です。0.1カラット前後のカットされたダイヤモンドを使用しました。

電気炉は耐熱煉瓦で造られています。丸印は発熱体(熱を発する耐熱素材)です。この電気炉は約1,500度まで加熱することができます。
電気を切った後、電気炉が冷えて行くまで待ちました。蓋(ふた)を開けると、なんと白い粒が残っていました。無色透明なダイヤモンドが白く濁った粒に変わったのです。

ダイヤモンドが火事に遭うと、一般に燃えてしまって、跡形も無く消えてしまうわけではありません。形が残る可能性が高いです。ただし、表面が白く変質します。
ダイヤモンドが火事の先端の炎の中に置かれると、1000度~1200度の高温になり、そして酸素が充分供給されると、ダイヤモンドは炭酸ガスとなって、空気中へ消えて行きます。(昇華現象、固体→気体)

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