合成宝石を作り出す人の力

宝石業界において合成の意味は、天然石と同じ組成(成分、石を形造っている元素の割合)のものを人の手によって造り出すことです。
主要宝石及びその他の宝石もすべて、人の手によって造り出すことは可能です。ビジネス視点から見ると、流通している合成石は限られます。メーカー(製造企業)は利益を生むことが必須ですので、採算がとれない合成石を造ることはありません。
1905年前後、フランスのベルヌーイは合成ルビーの製造に成功しました。以後、このベルヌーイ法で大量の合成石が造られるようになりました。現在、上海(中国)地域では数万人が従事して合成石を大量に生産していると言われています。
また、エメラルドはフラックス法、水晶は熱水法、ダイヤモンドは高温高圧法またはCVD法で造られています。日本製のルビー等は結晶引き上げ法で造られています。
地球上にない石が人の手によって造られた場合、その石は人工石と呼ばれています。キュービック・ジルコニアはその例です。(テトラゴナル・ジルコニアまたはロームビック・ジルコニアは天然にあります。)

魔法のような錬金術

一方、貴金属(金、白金等)を造り出すことも昔から、多くの人達の夢でした。非貴金属(卑金属、鉄や鉛など)を化学的に金や白金に変える試みが古くから行われて来ました。この試みは「錬金術」と呼ばれています。10世紀、アラビアで盛んに行われていました。しかし、現在に至るまで錬金術はことごとく成功していません。
2017年10月、欧米及び日本の科学者達は、中性子星(ちゅうせいしせい)の衝突によって金や白金が生まれることを発表しました。

私達、そしてすべての動物は分子からできており、分子は元素、元素は原子、原子は原子核と電子でできています。この原子核は陽子と中性子でできています。中性子星は中性子のみでできている星です。中性子星は超新星爆発で生まれると言われています。
中性子星は想像を絶する重さを持っています。恐ろしい重さです。1辺が1cm(センチ)長さのサイコロ形状の重さが、109トン/cm3です。もし、このサイコロを家の前の道路に置いたら、たちまち道路に穴を掘り、地球を突き抜けて飛んで行きます。
金の重さは19g/cm3です。白金の重さは21g/cm3です。中性子星の単位体積当たりの重さは109トン/cm3です。桁違いです。
金や白金は、錬金術などでは生まれません。貴金属を地球上で合成することはほぼ不可能です。やはり、金や白金は貴重ということになります。
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