ルビーと聞くと、誰もが鮮やかな赤色を思い浮かべるでしょう。その美しさから、多くのジュエリーに用いられ、古くから愛されてきた宝石です。しかし、現在市場に出回っているルビーの中には、人工的に作られた「合成ルビー」も多く存在します。外見は天然ルビーとほとんど変わらず、一般の人が識別するのは容易ではありません。
では、天然ルビーと合成ルビーの違いとは何でしょうか? そして、ルビーに関する専門的な用語である「ピジョン・ブラッド」「二色性」「モース硬度9」などは、どのような意味を持つのでしょうか?
この記事では、ルビーの基礎知識から専門的な特徴までを徹底解説し、あなたが本物のルビーを見極めるための知識を深められるようにします。ジュエリー選びで後悔しないためにも、ルビーにまつわる奥深い世界を一緒に探っていきましょう。
- 合成ルビーとは何か? その特徴や見分け方
- 最高級ルビー「ピジョン・ブラッド」の定義と価値
- ルビーが持つ「二色性」とは?
- ルビーの硬さを示す「モース硬度9」の意味
- ルビーの不思議な現象「アステリズム」とは?
合成ルビーとは?
合成石とは、天然石と同じ組成(ある石を形造っている元素の成分割合)を持ち、人の手によって造られたものを意味します。ですから、外観の特徴は全く同じに見えます。
色も輝きも同じように見えます。さらに硬さも同じです。宝石を専門的に習ってない人にとっては、天然ルビーと合成ルビーを識別することは難しいです。
現在、ほとんどの合成ルビーはベルヌーイ法と呼ばれる方法で製造されています。この方法は、1903年、フランスの科学者・ベルヌーイによって開発されました。
この方法によって合成ルビーは比較的簡単に安価なコストで製造できます。中国や世界の数ヶ国で大量に製造されています。
合成ルビーの最大の特長は、透明度が高く、色が鮮明で美しいです。そして大きなサイズをそろえることが可能なことです。
合成ルビーの透明度が高いことは、その石の内部にインクルージョン(内包物、異物)がない、または極めて少ないことが挙げられます。天然ルビーはほとんどインクルージョンを持っています。
ですから、合成ルビーと天然ルビーを識別する場合、インクルージョンを10倍のルーペで観察することでほぼ判ります。インクルージョンが見られない場合は合成ルビーの可能性が高いです。逆にインクルージョンが比較的たくさん見られた場合は天然ルビーの可能性が極めて高いです。
項目 | 天然ルビー | 合成ルビー |
---|---|---|
生成方法 | 自然界で長い時間をかけて形成 | 人工的に短時間で生成 |
組成 | コランダム(酸化アルミニウム) | 天然と同じコランダム |
透明度 | インクルージョン(内包物)が多い | 透明度が高い |
見分け方 | ルーペでインクルージョンを確認 | ルーペで内包物の有無を確認 |
コスト | 高価 | 比較的安価 |
製造方法 | 自然の力による結晶化 | ベルヌーイ法などの人工技術 |
人工的に作られたルビーで、見分けが難しい
ピジョン・ブラッドとは?
ルビーの色について話すとき、ルビーの最高の色はピジョン・ブラッドです、という会話が交わされます。古くから宝石に関係する多くの人に受け継がれてきた用語です。
ピジョンは鳩です。ブラッドは血です。ですからピジョン・ブラッドは鳩の血ということになります。鳩の鮮血の色がルビーの最高の色と言われて来ました。
鳩は日常的に身近で見られる鳥です。身近な鳥ですが、鳩の血をじっくり観察した人などほとんどいないと思います。鳩の血の色は想像するしかありません。
ピジョン・ブラットを示す天然ルビーとしてミャンマー産が広く知られています。特にミャンマーのモゴク(またはモゴック、Mogok)鉱山から産出する天然ルビーにピジョン・ブラッドが多く見られると言われています。
ピジョン・ブラッドの色は、オレンジ色やピンク色、黒色味を帯びてなく、鮮やかな濃い赤色を言います。
最高級のルビーの色で、ミャンマー産が特に有名
二色性とは?
リングやペンダント・トップのルビーを観察しても、一色の赤色しか見えません。しかし、ルビーを側面(ガードル部:カットされたルビーの最大径の個所)から観察すると、紫赤色と橙赤色の二色が見られます。これをルビーの二色性と言います。
二色性とは、宝石を違った方向から観察したとき、違った色が見られる現象を言います。カット(切断、研磨)された宝石の二色性を実際に観察には、その石の側面部(ガードル部)から観察すると、うまく二色を見ることができます。
ルビーの場合、クラウン部(ガードルから上の個所)またはパビリオン部(ガードルから下の個所)に紫赤色と橙赤色の二色を観察することができます。
赤色系の他の石、例えばルベライト(レッド・トルマリン)やレッド・スピネル、アルマンディン・ガーネットなどでは、紫赤色と橙赤色の二色を示すことはありません。
紫赤色と橙赤色の二色性を示した場合、観察しているその石はルビーです。ただし、二色性だけの情報では、天然ルビーと合成ルビーの識別はできません。
角度によって紫赤色と橙赤色が見える特性
モース硬度9とは?
宝石の硬さを表す尺度のひとつにモース硬度があります。これはドイツの鉱物学者・モースが提唱したもので、宝石業界で広く使われています。宝石を購入される消費者の方が、店頭で宝石の硬さを意識することはほぼありません。
しかし、宝石を日常使いして、長く美しさを楽しむ場合は宝石の硬さが重要な役割を果たします。硬さは耐久性に直結しています。一般に充分な耐久性があると考えられている宝石はモース硬度7以上です。ルビーのモース硬度は9です。ですから、ルビーは長期にわたる使用にも耐える宝石といえます。
モースは標準となる10種類の石を挙げました。そしてこれらの10種類の石を順位付けました。最も軟らかい石としてタルクを挙げ、この石を硬度1としました。また最も硬い石としてダイヤモンドを挙げ、硬度10としました。その他、硬度2から硬度9まで右表のような石をあてました。右表の硬度9にコランダムがあります。コランダムとはルビーとサファイアの両方を意味しています。赤色のコランダムをルビーと言います。赤色以外のコランダムをサファイアと言います。

ルビーの耐久性を示し、長期使用に適している
アステリズムとは?
宝石の専門用語です。日本語では星彩効果と呼ばれています。一部のルビーに見られるスター効果のことです。多くの人にとってはスター効果という用語の方が通じます。
アステリズムは、ルビーをカボッション・カット(丸く山形のような形状にしたカット)にしたときに現れる6本の光条(白く光る線または帯)を言います。星のきらめきに似ていることからこのように呼ばれています。
一部のルビーはなぜアステリズムを示すのでしょうか? それはルチルという細い針状の結晶が3方向に平行に多数分布しているからです。ルチルがこのような分布をしているルビーをカボッション・カットにすると、6本の光条が現れます。ルビーが示す不思議な現象のひとつです。
項目 | 内容 |
---|---|
現象名 | アステリズム(星彩効果、スター効果) |
見え方 | 6本の白い光条(スター)が現れる |
カットの影響 | カボッション・カット(丸いドーム型)でのみ発現 |
原因 | ルチル(針状の結晶)が3方向に規則的に分布 |
発生頻度 | 一部のルビーにのみ見られる |
価値 | アステリズムが強く現れるルビーは希少価値が高い |
ルビーに現れる星のような光の効果
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まとめ
ルビーは、その美しい赤色と硬さによって、長年にわたって愛され続けている宝石です。しかし、合成ルビーが市場に出回ることで、本物と見分ける知識が求められるようになりました。合成ルビーは天然と同じ組成を持ちますが、インクルージョンの有無や製造方法に違いがあります。
また、ルビーの中でも「ピジョン・ブラッド」は最高級とされ、特にミャンマー産のものが高く評価されています。その色合いは、オレンジや黒みを帯びていない、鮮やかな赤色であることが特徴です。
さらに、ルビーは「二色性」を持ち、観察する角度によって色が変わります。これは他の赤色の宝石には見られない性質です。そして、モース硬度9という高い硬度を誇るため、日常使いのジュエリーとしても適しています。
ルビーを選ぶ際には、これらの知識を活かし、本物の魅力を見極めることが重要です。天然ルビーならではの個性を楽しみながら、大切なジュエリーを選んでください。
- 合成ルビーは天然と組成が同じだが、インクルージョンの有無で識別可能。
- ピジョン・ブラッド は最高級のルビーの色で、特にミャンマー産が有名。
- 二色性 により、ルビーは異なる角度から見ると色が変化する。
- モース硬度9 により、ルビーは傷つきにくく耐久性が高い。
- アステリズム はルビーに見られる星のような光の効果。