和名:柘榴石(ざくろいし)
ガーネットという名前は多くの人が知っています。柘榴石という名前を知っている人は少ないと思います。鉱物に興味がある多くの人は柘榴石という名前を知っています。
右上の写真は柘榴の実を示しています。赤い粒がたくさん見られます。
ガーネット・グループ
天然産のガーネットは6種類あります。私達がよく目にするガーネット、暗赤色のガーネットはアルマンディン・ガーネットと呼ばれている種類です。
この他にパイロープ・ガーネット、スペッサタイト・ガーネット、アンドラダイト・ガーネット、グロッシュラー・ガーネット、ウバロバイト・ガーネットがあります。
これらの6種類をガーネット・グループといいます。これらの6種類は似たような化学組成を持っています。
ロードライト・ガーネット
ガーネットといえば、流通しているほとんどは暗赤色のアルマンディン・ガーネットです。しかし、中には暗赤色ではなく、紫色を帯びた赤色またはピンク色を帯びた赤色のガーネットも見られます。
このガーネットはロードライト・ガーネットと呼ばれる種類です。ロードとはバラの花を意味します。ロードライトはバラの色を帯びた赤色のガーネットということになります。
6種類のガーネットはお互いに化学組成が似ているために、地球の中で生成するときにお互いに混じり合う性質を持っています。
グレープ・ガーネット
比較的新しく発見されたガーネットです。紫色のアメシスト(紫水晶)のような色をしたガーネットです。
2016年、モザンビーク(アフリカ)で最初に発見されました。化学分析の結果、ガーネットであることが判明しています。この紫色の発色原因はマンガンと鉄によると推測されています。
当初、この濃い紫色のガーネットに対して、パープル・ガーネットやロイヤル・パープル・ガーネットなどという名前で呼ばれていましたが、現在ではグレープ・ガーネットという名前に落ち着きました。熟れた葡萄(ぶどう)の実の色に似ていることからグレープ・ガーネットと呼ばれるようになりました。
この石の化学組成や屈折率、比重等の検査からロードライト・ガーネットに該当することが判りました。ロードライト・ガーネットは、アルマンディン・ガーネットとパイロープ・ガーネットが混じり合ってできた石です。
一見すると、このグレープ・ガーネットはアメシストに似ています。肉眼と10倍のルーペでグレープ・ガーネットとアメシストを識別するには、色ムラを観察することで可能です。比較的濃い色のアメシストでは、しばしば直線状の色ムラ(濃い色と薄い色が直線で接して、色が不均質になっている状態)が見られます。グレープ・ガーネットには色ムラがありません。
デマントイド・ガーネット
ガーネットの色と言えば、暗赤色をイメージする人が多いと思います。しかし、ガーネットの中には緑色を示すものもあります。
デマントイド・ガーネットは強い輝きを示す美しい石です。デマントイドとはダイヤモンドのようなという意味です。
最初にデマントイド・ガーネットが発見されたのは、ロシアのウラル山脈近くでした。
このロシア産デマントイド・ガーネットは石の中に不思議な形をしたインクルージョン(内包物、異物)を持っています。そのインクルージョンは馬の尻尾(ホース・テール)の形をしているのです。この馬の尻尾の正体は、スイスの宝石学者が、1993年、クリソタイルと呼ばれる鉱物であることを確かめました。
このナミビア産のデマントイド・ガーネットをルーペで観察すると、馬の尻尾が見つかりません。
ロシア産とナミビア産は、同じデマントイド・ガーネットですが、地球の中で生成するときの条件が違うと考えられます。ロシア産ではクリソタイルという鉱物が入り込み、ナミビア産ではこの鉱物が見られないのです。
宝石市場では、馬の尻尾のインクルージョンが見られるデマントイド・ガーネットの方がより高価格です。
一般にガーネットのイメージは暗赤色で比較的値頃な石といった感じです。ところが、デマントイド・ガーネットは希少で比較的高価です。さらにロシア産はより高いです。