ガーネットというと、深紅の輝きを放つ宝石を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?その美しい赤色は、情熱や生命力の象徴として、古代から多くの人々を魅了してきました。しかし、その「ガーネット」に、実は日本語の“和名”があることをご存じですか?
本記事では、ガーネットの和名「柘榴石(ざくろいし)」をはじめとして、さまざまな種類のガーネットを専門的な視点で丁寧に解説します。紫色のグレープ・ガーネットや、ダイヤモンドのような輝きを放つデマントイド・ガーネットなど、あなたの知らなかったガーネットの一面に出会えるはずです。
色とりどりの魅力を持つガーネットの世界へ、ぜひご一緒に足を踏み入れてみませんか?
- ガーネットの和名「柘榴石」の由来と意味
- 6種類に分類される「ガーネット・グループ」について
- 紫系の美しい「ロードライト・ガーネット」とは?
- 葡萄色に輝く「グレープ・ガーネット」の特徴
- ダイヤモンドのような輝きを放つ「デマントイド・ガーネット」について
和名:柘榴石(ざくろいし)
ガーネットという名前は多くの人が知っています。柘榴石という名前を知っている人は少ないと思います。鉱物に興味がある多くの人は柘榴石という名前を知っています。
ガーネットの和名(日本名)が柘榴石です。ガーネットの産出状態が植物の柘榴の実に似ていることから、ガーネットに柘榴石を充てたと言われています。
右上の写真は柘榴の実を示しています。赤い粒がたくさん見られます。

右下の写真はガーネットの原石です。白色系の母岩に暗赤色または紫赤色の平らな平面を持った結晶がいくつも見られます。

柘榴の実に似ていることが和名の由来と言われている
ガーネット・グループ
天然産のガーネットは6種類あります。私達がよく目にするガーネット、暗赤色のガーネットはアルマンディン・ガーネットと呼ばれている種類です。
この他にパイロープ・ガーネット、スペッサタイト・ガーネット、アンドラダイト・ガーネット、グロッシュラー・ガーネット、ウバロバイト・ガーネットがあります。
これらの6種類をガーネット・グループといいます。これらの6種類は似たような化学組成を持っています。
ガーネットは6種類ある
ロードライト・ガーネット
ガーネットといえば、流通しているほとんどは暗赤色のアルマンディン・ガーネットです。しかし、中には暗赤色ではなく、紫色を帯びた赤色またはピンク色を帯びた赤色のガーネットも見られます。
このガーネットはロードライト・ガーネットと呼ばれる種類です。ロードとはバラの花を意味します。ロードライトはバラの色を帯びた赤色のガーネットということになります。
このロードライト・ガーネットは、6種類あるガーネット・グループの中のアルマンディン・ガーネットとパイロープ・ガーネットが混じり合っている化学組成を持っています。
6種類のガーネットはお互いに化学組成が似ているために、地球の中で生成するときにお互いに混じり合う性質を持っています。
ロードライト・ガーネットの特徴
項目 | 内容 |
---|---|
色の傾向 | 紫色またはピンクを帯びた赤色 |
名前の由来 | 「ロード」=バラ、「ロードライト」=バラ色の石 |
化学構成 | アルマンディン・ガーネットとパイロープの混合 |
特徴 | 赤色系でも柔らかく華やかな色合いが特徴 |

ロードライト・ガーネットはバラ色の優美なガーネット
グレープ・ガーネット
比較的新しく発見されたガーネットです。紫色のアメシスト(紫水晶)のような色をしたガーネットです。
2016年、モザンビーク(アフリカ)で最初に発見されました。化学分析の結果、ガーネットであることが判明しています。この紫色の発色原因はマンガンと鉄によると推測されています。
当初、この濃い紫色のガーネットに対して、パープル・ガーネットやロイヤル・パープル・ガーネットなどという名前で呼ばれていましたが、現在ではグレープ・ガーネットという名前に落ち着きました。熟れた葡萄(ぶどう)の実の色に似ていることからグレープ・ガーネットと呼ばれるようになりました。
このグレープ・ガーネットは、6種類あるガーネット・グループのどこに属するかという課題が出て来ます。
この石の化学組成や屈折率、比重等の検査からロードライト・ガーネットに該当することが判りました。ロードライト・ガーネットは、アルマンディン・ガーネットとパイロープ・ガーネットが混じり合ってできた石です。

一見すると、このグレープ・ガーネットはアメシストに似ています。肉眼と10倍のルーペでグレープ・ガーネットとアメシストを識別するには、色ムラを観察することで可能です。比較的濃い色のアメシストでは、しばしば直線状の色ムラ(濃い色と薄い色が直線で接して、色が不均質になっている状態)が見られます。グレープ・ガーネットには色ムラがありません。
グレープ・ガーネットは葡萄色に輝く新種の石
デマントイド・ガーネット
ガーネットの色と言えば、暗赤色をイメージする人が多いと思います。しかし、ガーネットの中には緑色を示すものもあります。
一般にガーネットは比較的入手しやすい価格帯です。その中にあって、デマントイド・ガーネットは最も高価です。
デマントイド・ガーネットは強い輝きを示す美しい石です。デマントイドとはダイヤモンドのようなという意味です。

最初にデマントイド・ガーネットが発見されたのは、ロシアのウラル山脈近くでした。
このロシア産デマントイド・ガーネットは石の中に不思議な形をしたインクルージョン(内包物、異物)を持っています。そのインクルージョンは馬の尻尾(ホース・テール)の形をしているのです。この馬の尻尾の正体は、スイスの宝石学者が、1993年、クリソタイルと呼ばれる鉱物であることを確かめました。
デマントイド・ガーネットはロシアだけで産出すると思われていましたが、アフリカでも発見されました。ナミビア(右地図)で見つかったのです。
このナミビア産のデマントイド・ガーネットをルーペで観察すると、馬の尻尾が見つかりません。

ロシア産とナミビア産は、同じデマントイド・ガーネットですが、地球の中で生成するときの条件が違うと考えられます。ロシア産ではクリソタイルという鉱物が入り込み、ナミビア産ではこの鉱物が見られないのです。
宝石市場では、馬の尻尾のインクルージョンが見られるデマントイド・ガーネットの方がより高価格です。
一般にガーネットのイメージは暗赤色で比較的値頃な石といった感じです。ところが、デマントイド・ガーネットは希少で比較的高価です。さらにロシア産はより高いです。
ロシア産とナミビア産 デマントイド・ガーネットの比較
比較項目 | ロシア産 | ナミビア産 |
---|---|---|
発見場所 | ウラル山脈付近 | ナミビア |
インクルージョン | 馬の尻尾(ホース・テール)あり | 馬の尻尾は見られない |
含まれる鉱物 | クリソタイル(1993年に同定) | 含まれない |
市場での評価 | 高い(特に馬の尾が見られる個体) | やや低め(希少性はある) |
デマントイド・ガーネットは希少で輝く緑の宝石
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まとめ
ガーネットと一口に言っても、その種類や色合いは実にさまざまです。深紅の宝石として知られるガーネットには、「柘榴石(ざくろいし)」という美しい和名があり、まるで柘榴の実のような鮮やかな見た目がその由来となっています。
また、ガーネット・グループには6種類の鉱物が存在し、それらは化学組成が似ていることから、自然の中で混ざり合いながら生まれることも珍しくありません。その結果として誕生するのが、ロードライトやグレープ・ガーネットといった個性豊かなバリエーションです。
中でも特に注目されるのが、希少性の高いデマントイド・ガーネット。そのダイヤモンドのような輝きや、ロシア産のみに見られる馬の尻尾型インクルージョンなど、魅力は尽きません。ガーネットの奥深さに、改めて心惹かれる人も多いことでしょう。
- ガーネットの和名は「柘榴石」で、ざくろの実に似ていることに由来する
- ガーネットは6種類の鉱物から構成される「グループ鉱物」
- ロードライト・ガーネットはバラ色の美しいガーネットで、化学的に混合型
- グレープ・ガーネットは2016年に発見された紫系の新しいガーネット
- デマントイド・ガーネットは希少で高価、特にロシア産は市場価値が高い